表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第一章 魔法少女戦争のはじまり
4/24

2 登校

「はい、おにい、お弁当」

 美憂が珍しく弁当を差し出してきた。


「別にいいのに。コンビニ寄っていくから」

「自分で食べたいもの作って余ったからおにいの分なの!」

「はいはい。ありがとう」

 美憂は地元の中学に通っていたため、俺よりも少し遅れて登校していた。


「わぁ、いい匂いだね。ハンバーグかな?」

 リリスが近づいて声をかけていた。


「・・・・・・」

「おにい、どうしたの?」

「何でもない。いってくるよ」

「いってらっしゃい」

 美憂が両手を振って見送った後、リビングに戻っていった。

 鍵をかける。


「学校にもついていくの?」

「もちろん。魔法少女と契約した主は、いつ命を狙われてもおかしくないから」

「実感がないな。普通に学校に行くだけで、戦闘が始まるとか言われても」

「私が電子世界から出てきて、カイトの前に現れたことが何よりの証拠」


 リリスから魔法少女戦争の話は聞いていた。

 よくあるゲームのような話だ。


 でも、リリスの説明にはひとつ抜けている部分がある。

 知らないとは思えないな。


 あえて言わないようにしているのか・・・。

 

「えっ、あいつ、今一人で話してなかった?」

「キモいな」

「ゲームのやりすぎで頭おかしくなったんじゃね?」

「不気味だから振り返るなって」


 中学時代の奴らが前を歩きながら、後ろを振り返って、こそこそ話していた。

 とことん暇な奴らだ。


 中学の頃から、3年間いじめられていた。

 主犯格となる生徒、加茂に目をつけられてからどんどん広まっていった。

 いまだに理由はわからない。


 他の学年の奴らまで、俺を見ると罵倒してくるようになった。

 SNSを使って、あることないこと書かれて、拡散したらしい。


 妹の美憂に被害がいかなかったのは不幸中の幸いだった。

 美憂と外出しないように、徹底していたからな。


 リリスが何もないところから杖を出す。


「カイト、あいつら殺す?」


「え?」

「主の敵は私の敵だから、いいんだよ」

 リリスの表情は冗談を言っているようには見えなかった。


「直接殺すのが嫌なら、病を引き起こすという手もある。私には300種類以上のウイルスを誘発させる魔法があるし、遠回しに死に至らしめることも・・・」

「いいって!」

 リリスの手首を押さえた。

 魔力が収まっていく。

 

「元々雑魚には関わらない主義だ。学校に行くんだろ? あと10分後の電車に乗れば間に合う。急ぐぞ」

「わわ、はーい」

 リリスが杖を消す。

 横断歩道を渡って、駆け足でリリスを引っ張っていった。

 




 校門に入る。

 ちょうど生徒たちで混みあう時間帯だった。


「へぇ、綺麗な高校だね」

 リリスは黒い服を着て杖を持っていたから明らかに浮いていた。

 他の人が見えないならいいんだけどな。


「学校って行ったことないから楽しみだなぁ」

「あまり目立つ行動するなよ」

「なるべくね。でも、この学校にも魔法少女と契約している子がいるみたい」

 リリスがふわっと飛んで、後を振り返った。


「!!」

 リリスと似たような杖を持った、ピンクの衣装を身に纏った少女が、違うクラスの男子高生と歩いていた。

 眼鏡をかけた、あまり目立たない生徒だ。


「魔法少女がいるね」

 リリスが小声で話す。


「あ・・・・」

 目が合ったが、声をかけることすらなく、通り過ぎていった。

 

「珍しい。魔法少女戦争は始まってるし、いつ戦闘を仕掛けてくるかわからないのに。あんなふうに、魔法少女を外に出していることも危険なんだよ」

「リリスはいいのかよ」

「私は強いから」

 涼しげに言う。


 リリスが強いのはわかっていた。

 あの本にリリスの名前があったからな。


「この服、地味かな? 魔法少女って、みんな服が華やかなのよね」

「魔法少女というよりは魔女って感じだな」

「うーん、これが一番機能的なの」

 リリスが自分の黒いローブを見ながらぶつぶつ言っていた。


 魔法少女は人間ではない。

 パソコンや、スマートフォン等、主の持つ電子機器の中に入ることも可能なのだという。

 魔法少女は技術の進歩に追いついていると、自慢げに話していた。


 リリスを見ていると、普通の女の子に見えるんだけどな。

 想像していた子と全然違う。

 まだ、寝ぼけているような感覚だ。


「それに、せっかく外に出られたんだから学校に行ってみたいし。図書館とかもあるんだよね? 本、読みたいな」

 蒼い瞳をキラキラさせていた。

 

「授業ってどんなことやってるの?」

「見ればわかるって。あと、教室では会話できないからな」

「筆談ならいいよね? 私、15か国語読み書きできるの。もちろん、魔法でね」

 学校に着いてから、リリスのテンションが妙に高くなった。


 周囲に永遠と独り言話してると思われたら、病院送りになりそうだ。


「一応会話は必要最低限、な」

「了解。放課後図書室寄っていい?」

「あぁ、いいよ。俺も返す本があるから」

 人差し指の指輪を見つめる。

 何かの紋章と、読めない言葉が刻まれていた。


 魔法少女との契約、ロンの槍、これから行われる戦闘について、

 あの本に書かれてあった通りに事が運んでいる。


「カイトはどんな本が好きなの?」

「あれば何でも読む。これといった本は無い」

「ふうん、私と似てるかも。魔導書とか読んだことある?」


「魔法のないこの世界で、魔導書なんて存在するわけないだろ」

「あ、そっか」


 俺はあの本・・・。

 ロストグリモワールの内容を、誰にも話したことがない。


 目を通してすぐ、青い炎に包まれて消えていった本のことを・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ