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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第六章 Lost Grimoire

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83 タツキとサクラ

「おにい」

「っと、美憂か」

 椅子を回す。

 研究室で魔法少女やプレイヤーの様子を映していると、美憂が入って来た。


「えっ!? 魔法少女を盗撮してるの?」


「誤解を生むような表現をするなよ。配信ランキング上位になった子を見てただけだ。フィオーレとルナリアーナ、ティナも入ってるな」

 『ロストグリモワール』を巡って、ネット上が盛り上がっていた。


 まぁ、すぐに飽きるんだろうけどな。



「おにい」

「なんだよ、その目」

「ねぇ、これって、魔法少女の着替えとかも、見ることができちゃうとかないよね? おにいにそんな趣味あると、妹としてかなり複雑なんだけど」

 美憂が背もたれに肘をのせて、モニターを見つめる。


「するわけないだろ? 盗撮なんか、俺に何のメリットがあるんだよ」

「だって・・・・」

「当然、魔法少女のプライバシーは考慮されてる。俺が確認できるのは、魔力を使用しているとき、主に戦闘か移動のときだ」

 ハーブティーに口をつける。


「なるほど。よかったー」

「マジで疑うなよ」


「最近、おにいモテてきてるから、調子に乗ってるんじゃないかって妹としては心配で心配で。おにいに、そうゆう話はまだ早いよね」


「・・・・・・」

 美憂がからかうように言って、隣に座った。



 ピコンッ


 音が響く。


「あれ? 葛城さんから連絡?」 

 美憂が会議のリクエストのポップアップを見ながら聞いてきた。


「そうそう、俺の配信は『ロストグリモワール』の中の人が切り取りをSNSに流して、バズったらしいからな。俺の顔を確認しに連絡して来たんだろ」

「な、なるほど」


 魔法少女たちが必死に配信しているらしく、配信ランキングを底上げしていた。

 ゲームか現実がかわからないと突っ込むものもいる。

 

 『ロストグリモワール』の配信を見ている人間が、画面推しに熱狂しているのが伝わって来た。


「美憂、ちょっと葛城さんと話すから何か言われても、適当に流しててくれよ」

「はーい」

 指を動かして葛城さんのリクエストを許可した。

 モニターに葛城さんが映る。



 ジジジ ジジ


「ご無沙汰してま・・・」

『如月カイト、あの動画見たんだ。あれってお前だろ!?』

 いきなり前のめりになって聞いてくる。


『え・・・そこにいるのは、お前の妹じゃ・・・』

「はい。如月美憂です」

 美憂が髪を耳にかける。


「俺たちは今、ゲームの中にいるんですよ」


『な・・・・? まさか、俺をからかってるんじゃないだろうな。ゲームの中にいるって・・・お前が言ってた『ロストグリモワール』っゲームか? 『RAID6』から移行したという・・・』


「そうです。だから、しばらくそっちには戻れないんです。残作業は無いので、特に引き継ぎもありません」


『・・・・・・・』

 葛城さんが頭を搔いて、煙草を一本取りだした。


『・・・・魔法とか、薬草とか、そうゆうファンタジーは信じない主義だし、悪ふざけと思いたいが、んなことしてカイトに何かメリットがあるとも思えないしな。最近のSNSといい、配信者といい、ネットやSNSがどこかおかしい気がしてるよ』

 煙草に火をつけた。


『AIが生成したゲームに探りを入れてきていたのは、このことだったのか』


「そうですね。おかげさまで、うまくいきましたよ」

『やるねぇ・・・俺も上手く転がされていたってことか。さすが・・・・つか、高校生のガキのできることじゃねぇだろ』

 笑い交じりに言う。


 美憂が緊張していた。

 落ち着かせるよう手を二回突く。


「でも、葛城さん、魔法少女戦争に関わっていますよね?」

『・・・・・・』

「誰か探してたんですか? それとも、誰かと組んでるんですか?」

 睨みつけた。


 葛城さんの表情が変わる。


「色々ハッキングさせてもらいました。『RAID6』から『ロストグリモワール』を作ったときの電子データから、葛城さんの事務所からのアクセスログを検出しました。暗号化されてましたが、キーは生成できたので」

 腕を組んで、画面越しに葛城さんの目を見る。


「葛城さんが魔法少女戦争に興味を持つのは意外でしたが。現実主義なので、魔法なんか信じないでしょう」

『俺が現実主義なのは、非現実を否定したいからだ』

 口角を上げて、煙草を置いた。


『俺がまだ小学生だった頃、魔法を使える少女に会ったことがある』


「ま、魔法少女!?」


「美優、落ち着け。それはあり得ませんよ。前回の魔法少女戦争が終わったのは70年以上前の話ですから。魔法少女戦争が終わると、魔法少女はいなくなります」

 冷たく言う。


『いや、確かに会った。魔法少女ではないらしいけどな。お前らの母親、サクラだよ』


「は・・・?」

「え・・・・?」

 俺と美憂が同時に声を出した。


『サクラは呪いのかかった魔法少女だと話していた。神から呪いと祝福を受けたと。タツキとサクラはなぜか歳を取らなかったんだ。俺が小学生だったときから、16歳くらいだった。サクラが死んでから、タツキはゆっくりと年相応に老けてきたけどな』

「なんで・・・・・」


『俺はサクラに一目ぼれしたんだ。初恋だったな・・・よく似てるよ、お前ら二人とも。特に目が、サクラにそっくりだ』


「・・・・!?」


『お前のずる賢さは、父親譲りかもしれないけどな』

 葛城さんの予想外の言葉に、固まってしまった。


「お、お母さんは・・・」

 美憂が声を絞り出す。


「何か魔法を使ったんですか? お母さんはどんな人だったんですか?」

『サクラは戦闘向きの魔法は習得していなかったと聞いている。魔法戦争にはほとんど参加せず、傷ついた戦士たちを癒していたらしい』

 深いため息をつきながら言う。


「どうして・・・」

『俺が小学1年生の時、トラックに突き飛ばされたところを、助けてくれた。治癒魔法と衝撃を吸収する魔法を使ったらしい。あまり覚えていないが、魔法が温かかった記憶だけはある』 

 袖をまくって、腕の傷を見つめていた。

 

『最初サクラを見たときは、天使か女神が来てくれたんじゃないかって思った』

「・・・・・・・」


『でも、話してみると天使でも女神でもなかったな。ほわほわしてて危なっかしいし、魔法を隠さないし、誰彼構わず助けようとするし、如月タツキが駆け回って火消しをしていたよ。子供心に、ありゃ、大変だと思って見てたな』

 笑いながら言う。

 頬杖をついて、長い瞬きをしていた。


『まさか、そのガキが、魔法少女戦争に関わるとは。カイトの想定通り、俺はお前らを探っていた。まさかって思いながらね。魔法少女戦争なんか存在しないと思いたかった』


「お母さん・・・・お母さんは私にそんな話してくれなかった」

 美憂が頬を赤くしていた。


『魔法になんか興味を持ってほしくなかったんだろ。詳しくは聞いてないが、サクラもタツキも呪いと祝福を受けたと言っていた』


「私も聞きたかったなぁ・・・お母さんとお父さんから・・・」

 瞬きすると、大きな瞳から涙が溢れていた。


「・・・・如月タツキのこと知ってるんですか?」


『昔のことは知ってるよ。今は知らない・・・会ってないしな』

 葛城さんが言葉を濁していた。


「そうですか。わかりました。では・・・・」


「おにい、私お母さんのこと、まだ聞きたいよ。お父さんのことも!」

「美憂・・・」

「まだちょっとだけ。お願い!」

 美憂が必死に止めてきた。


『はは、またいつでも話してやる。今、仕事の連絡が入った。悪いが、また今度な』

 葛城さんがモニターを消そうとして、ふと止まる。


『カイト、如月タツキは悪い奴じゃない。ただ・・・』


「いいですよ、あんなの父親だと思ってないんで。では、また連絡しますね。しばらく、仕事手伝えなくて済みません。じゃ」


 ブツンッ


「あ・・・・」

 美憂の声を無視して、一方的に接続を切った。


「おにい・・・」

「美憂、あまり両親について重く考えるな。親が何者であろうと、俺はお前の兄であることには変わりない」

「うん」

 美憂が寂しそうに頷いて、椅子に座り直していた。

 膝を抱えて、頭を下げる。


「おにい、私が泣いたこと絶対言わないで」

「はいはい」

 モニターを切り替える。

 魔法少女とプレイヤーが接触している姿が映っていた。

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