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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第六章 Lost Grimoire

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82 あのね、好きだよ

 ― 魔法少女の成れの果て ―


 誰も触れようとしないのが、魔法少女のその後だ。

 メイリアが書いているロストグリモワールには、はっきりと記載があった。


 魔法少女戦争に参加した魔法少女の中でも、戦いを避けて生き残る者もいる。


 でも、敗者はどうあがいても"魔女"になる運命にある。


 人間として生きることはできない。

 魔法少女にも戻れない。


 "魔女"になれば、自分の肉体を持つことができなかった。

 穢れをまとい、忌み嫌われる存在となる。


 人間に寄生するか、魂だけで漂うか、精神崩壊し朽ち果てるか、何らかの呪いを受けるか・・・。

 禊を果たし、神からの救済を待つしかない。


 魔法少女が何か悪いことをしたわけではなかった。

 よくある願いの重さや清らかさは、関係ない。


 全員、同じ運命をたどる。


 どの選択肢をとっても悲惨なものだ。


 マリアはどの時代でも、魔法少女の解放を求めて戦ってきたのだという。

 おそらく、花音も同じことを考えているのだろう。


「・・・私も魔女と話したのは久しぶり。前回の魔法少女戦争では・・・・なんて、思い出したくもないことね」

「七陣魔導団ゲヘナでは話題に出すなよ」

「もちろん、絶対に話したくない。魔法少女の最期なんて・・・」

 ファナが周りに誰もいないのを確認して、廊下の壁に寄りかかりながら言う。


 "魔女"の話はタブーだ。

 ほとんどの魔法少女は、知らないまま死んでいく。


 七陣魔導団ゲヘナの魔法少女たちは、誰がどこまで知っているか、わからなかった。

 ヴァーシル家のルナリアーナは知っているだろうけどな。


「ちゃんと浄化しておけよ。自分ではできないだろ?」

「・・・わかってる。ノアはずっとこれを抱えてたってこと・・・?」

「だろうな」

 ノアは医務室で眠っていた。


「あんなに明るいのに・・・ずっと無理してたのね」

 魔法少女にとって、穢れは神から遠ざかるため、魔力の低下に繋がる。

 ノアに穢れが無かったのは、奇跡に近い。


 人工的に創られた神と契約したことが関係あるのだろうか。


「・・・・他の魔法少女が誰も気づかなかったのが不幸中の幸いね。リリスが上手く隠してたのかしら」

「・・・・・・・・」

 爪が食い込むほど、手を握り締める。


 リリスがいなければ、俺は・・・。


「リリスは強い。前回、私が勝てたのは運が良かっただけなんだなってつくづく実感する。悔しいけどね。じゃ、理由をつけてアクアに浄化を頼んでくるから、ノアのことよろしくね」

 ファナが髪を後ろにやって、指令室のほうへ歩いていった。




 トントン



「入るぞ」

「・・・はい」

 医務室の扉を開ける。

 ノアはベッドから体を起こして窓の外を見つめていた。


「・・・カイト」

「調子はどうだ?」

「ごめん・・・あまり記憶がなくて、気づいたらここに居たから」

 布団を握り締めて俯く。


「リリスが封じてくれたんだよね・・・ごめんなさい。リリスだって穢れは恐ろしいはずなのに・・・」

「もう謝るなって。ノアは何も悪くないだろ」


「ううん。ちゃんと、全部話してなかったから・・・・本当にみんなを巻き込んで死んじゃったらどうしようって思って・・・・怖くて」

 消え入りそうな声で呟く。


「話せる範囲でいい。魔法少女研究機関について話してくれ」

 ノアが頷く。


「魔法少女研究機関は"魔女"を使って、国の権力者が人工的に創った神と魔法少女を生み出す機関なの。今から20年前に始まった組織。私の両親は魔法に心酔した研究員だった」

 ぽつりぽつりと話し始めた。


「ノアはね、本当は私の名前じゃないんだ。魔法少女研究機関にいた魔女の名前。朽ちた"魔女"のこと。本当の名前はNO1129だった。ノアって名前、憧れてたの」


「俺らにとって、ノアはノアだよ。あいつは、ずっとノアの体にいたのか?」


「・・・・そう。私の中にいて、静かにしていたんだけど、『RAID6』になった頃から、代わるように言われるようになった。頭に声が響くの」

 頭を押さえながら言う。


「カイト、ありがとう。私のために戦ってくれて」

「・・・・いや、俺は何も役に立てなかった。今ノアがここに居るのはリリスのおかげだよ」


「そ、そんなことないよ! リリスはもちろんだけど、カイトのおかげでもあるから! 絶対に!」

 ノアが必死に話していた。


「カイトが声をかけてくれたから・・・私、また戻ってこようと思えたの」

 ノアの額にはまだうっすら痣が残っている。

 魔女が体にいる状態がどんなに苦しいことか、想像もつかなかった。


「?」

 目が合うと、すっと逸らされた。


「・・・・"魔女"と接触して、リリスもファナも大丈夫だった?」

「あいつらは強いから心配するな」


「でも・・・穢れは怖かったと思う。迷惑かけちゃった・・・」


「ノアが悲しい顔してると、七陣魔導団ゲヘナのみんなが騒ぐぞ。そっちのほうが一大事だ」

「・・・うん」


「抜けるなんて間違えても言うなよ。ノアがまた、あの"魔女"と代わるようなことがあったら俺たちで鎮めてやる」


「カイト・・・あ、ありがとう・・・」

「・・・・って言っても、助けたのはリリスだけどな・・・俺もまだまだだ。精進するよ」


 奥歯を噛んだ。

 俺があの時ノアの魂を無理やり引き剥がしたら、命の保証はなかった。


 ノアと中に寄生している"魔女"は運命共同体のようなもの。


 リリスの選択が冷静で、正解だった。


「ねぇ、カイト」

「ん? どうした?」

 ノアがぼうっとしながら口を開く。


「あのね、好きだよ」


「は?」

 拍子抜けして力が抜ける。


「か・・・カイトがリリスのことが好きなのはわかってる。でも、私もカイトのことが好き。えっと、そう、好き。好きだから・・・」

 わたわたしていた。


「その・・・私、普通の女の子じゃないけど、好きって気持ちはあって・・・よろしく」

 歯切れ悪く言い切った。

 ノアが布団をかぶって、反対側を向く。


「え、えっと、私、寝るから。まだ、ちょっとくらくらするから」

「わかったよ。ゆっくりしてろ」

 立ち上がって、ドアノブに手をかける。


 ふと、ノアのほうを振り返った。


「ありがとな」


「っ・・・・・」

 ノアが布団の中で頷いていた。




「カマエル・・・」

「カイト」

 医務室を出ると、カマエルが待っていた。


「どこにいたんだよ。ファナから何か聞いたのか? ノアのことは今更・・・」


「エリンちゃんが目を覚まさなかったんだ」


「え・・・・?」

 血の気が引いていく。


「目を覚まさないって・・・つか、お前、その背中・・・・」

 カマエルの翼が消えていた。

 魔力も少し、変化したように思える。


「見ての通り、俺はカイトと同じ人間になったよ。まぁ、魔神としての力も使えるから、カイトと同じ半分人間って感じかな」

 カマエルが自分の腕を見つめていた。


「どうゆうことだ? 今までの魔法少女戦争は、主の契約切れには3日程度の猶予があったはずだ」


「眠ったままどうやって契約できるんだよ。ダンジョンで眠っていた魔法少女の契約は、完全に切られてた。プレイヤー無しでは、最初から目覚めさせるつもりなんか無かったんだ」

 早口で言う。

 こめかみに血管が浮き出ていた。


「不戦敗させるつもりだったってことか・・・・」

「そうだよ。リリスもね」

 深呼吸をして怒りを鎮める。

 

「んなことあり得るのかよ。クソだな」


「あぁ・・・だから、エリンちゃんが息を引き取る間際に、俺が人間として契約した。今、俺はエリンちゃんの主だ」

「カマエル・・・」


「・・・・・・・」


 会話が途切れる。


 遠くから魔法少女たちの騒ぐ声が聞こえた。

 特に混乱も無い。

 お菓子を焼いているのか、ほんのりと甘い匂いがしてきた。


「こうするしかなった。俺、戦争の神なんだけどね。エリンちゃんの死ぬ姿だけは絶対に見たくなかったんだ。どんなに時が経っても、人間になっても、エリンちゃんはエリンちゃんだった」

 軽い口調で話していたが、目は真剣だった。

 

「なぁ・・・俺、間違ってないだろ? サマエル」


「神が間違うわけないだろ」

「だよな」

 カマエルの肩を軽く叩いて、指令室のほうへ歩いていった。

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