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魔法少女戦争 ~ロストグリモワールを俺は知っている~  作者: ゆき
第六章 Lost Grimoire

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78 メイリア

 この電子世界が切り替わって、丸1日が経っていた。

 今のところ、大きな歪は見られない。


 リリスはセレーヌ城に戻った。

 動揺する七陣魔導団ゲヘナの者たちを、ティナが宥めていた。


 大地の神カプリニクスの木に沿って、飛んでいく。


「今のカプリニクスは、木の上のほうが好きなのか。先代のカプリニクスは根にいたんだけどな」

『あ』

 木の枝を避けて、中に入っていく。


『その声はサマエルであってるかい?』

「今は如月カイトだけどな」

『なるほど。人間になったって噂で聞いてたよ』

 大地の神カプリニクスは12歳くらいの少年のような容姿をしている。

 裁きにより消滅し、冥界で禊を果たし、生まれ変わったのが今のカプリニクスだ。


『俺がここに居ることには驚かなかった?』

「まぁ、驚いたよ。電子世界に大地の神がいるなんてな」


『ハハハ、他の神々だって入ってるんだから、俺だって入るよ。さっきの揺れと、この世界の変化はクリフォトの樹の魔神だったんだ。大地にも大きな変化があったみたいだね』

 木の上のほうで、足をぶらぶらさせながら座っていた。


「昔の大陸とよく似てるだろ?」

『・・・悪いけど、僕は君のことを覚えていないよ。先代のカプリニクスが残した記録によると、君とは仲が良かったんだろ?』

「腐れ縁かもな。いきなりで悪いんだが頼み事だ」


『何? 君が書き換えた世界のことなら、まだ把握しきれてないよ』

 カプリニクスが冗談っぽく笑いながら言う。


 どこか、先代のカプリニクスを思い出すな。

 元気だったころのカプリニクスは、よく冗談を言って相手の反応を楽しんでいた。


「クロノスの家、時空に浮かぶ小屋に俺を転移させてもらえるか?」

『あー、クロノスが鍵をかけてるのか。俺とヘカテーしか鍵となる魔法陣を持ってないもんね』

「クロノスも、時空の管理に厳しくなったからな」


『うんうん』

 カプリニクスが顎に手を当てて頷いていた。


『ん? まぁ、俺はできるけど、三賢者の魔法少女だってできるんじゃない? ほら、リリスって魔法少女なら、わかるよね?』


「リリスに頼みたくないんだよ」

 力なく笑う。

 

『・・・・・なるほど? 先代のカプリニクスはそのあたりの記録は残していないんだよな』

 カプリニクスが少し文句を言いながら、指を動かす。

 転移魔方陣を展開する。


『いいよ、この中に飛び込めば時空に浮かぶ小屋に行くことができる』

「さんきゅ」

『ねぇ、俺からひとつ質問していい?』

 カプリニクスが無邪気に言う。


「なんだ?」

『先代のカプリニクスってどんな罪を犯したの?』

「それを聞くのは禁止になってただろ?」

『サマエルなら口を滑らせないかな? って思ったんだけど、駄目か』

 足を伸ばして、木に座り直していた。


『いってらっしゃい。俺は君のことをあまり知らないけど、仲良くしてもらえると嬉しいよ。俺、友達いないから』

「今度、甘いもの持ってきてやるよ」

『わーい、やったぁ』

 先代のカプリニクスが手作りのお菓子が好きだったことを思い出していた。

 背を向けて、魔法陣に飛び込む。


 シュンッ



 時空に浮かぶ小屋は、静まり返っていた。


 ランプに火を灯す。

 部屋は埃一つなく整頓されていて、机には魔導書が積み上げられていた。

 俺がここに来たときより後に、リリスが来ている形跡があった。


「メイリア」

 石化したメイリアの周りに、リリスの魔力を感じる。

 今もまだ、石化を解く方法がないか模索していた。


「リリスじゃなくて残念だったな。俺がわかるか?」


 岩に張られた結界に触れる。


「人間の姿じゃいまいちピンと来ないか。ロストグリモワールを書いていたのはお前なんだろう? って言っても、話せないよな。でも、聞こえてはいるんだろう?」

 少し笑いながら声をかける。


 石化したメイリアは何も言わない。

 呪いは頑なにメイリアの時を止めていた。


「電子世界に、石化の解除する方法を知っている者がいたんだ。半信半疑だったけど、試しに来た。待ってろよ」


 ― XXXXXXXXXXX XXXXXXXXX XXXXXXXXXXX - 


 詠唱をして目を閉じる。


 ポケットに入れた、魔法石を埋め込んだ杯を取り出した。


 宙に浮かせて魔法陣を展開する。

 盃に水が溜まっていった。


 聖杯の模型のようなものだった。


「・・・・少しは効果がありそうだ」

 目を細める。

 


 パリンッ


 メイリアを覆っていた結界が弾けた。

 杯が地面に落ちて消えていく。


 あの時のメイリアが、目を丸くして立っていた。


「わ・・・・私・・・・・・」

「悪いが、この時空に浮かぶ小屋を出ることはできない。聖杯の呪いの目から逃れた場所じゃなきゃまた石化されてしまう」

「サマエル・・・」

 メイリアの瞳から涙が溢れていた。


「サマエル・・・だよね?」

「そうだよ。まぁ、知ってるかもしれないけど、今は人間だけどな」


「っ・・・・」

 メイリアが勢いよく抱きついてくる。


「ごめんなさ・・・私・・・・私のせいで・・・・・」

「ありがとな。ロストグリモワールを書いていたのは、メイリアなんだろ?」

「・・・・・・」

 言葉を詰まらせながら頷く。


「石化して、動けなくなって・・・でも、見えていたの。声は誰にも聞こえなかったけど・・・魔法少女戦争を・・・リリスとマリアが・・・ユウミが戦い続ける姿をずっと見てきた。リリスがここに来ていろんな話をしてくれたの」

 堰を切ったように、必死に話す。


「リリスはいつも泣いてた・・・私に謝って・・・書物をたくさん読んで、呪いを解く方法を探してた」

「わかってるよ」

「ごめんなさい・・・私ばっかり楽して、みんな戦ってるのに・・・何もできなくてごめんなさい・・・」


「メイリアは悪くない。自分を責めるな」

 メイリアの涙を拭う。


「メイリアのおかげで、ここまでこれたんだ」

「サマエル」

「今回は絶対に勝つ。基盤は出来上がった。俺とリリスが魔法少女の勝者となって、魔法少女戦争を終わらせる」

 メイリアが涙を拭いながら首を振った。


「リリスは今回も勝てない・・・魔法少女戦争が終わることはない」


「どうしてそう思うんだ?」


「私、水の精霊の声が聞こえるようになったんだ。石化してからは、話し相手がいなくて、ずっと水の精霊と話していた」


「!?」


「ルーリア家の血筋だからかな・・・? びっくりした?」

 机の書物に触れながら言う。


「水の精霊は聖杯の水のことも知ってた。聖杯は私たち三賢のことを許していないって言ってた」

「・・・・・・」

「勝手だよね。魔法を手に入れる方法があって、魔法を必要とする人がいたんだから、一択だった。私は聖杯の水を飲んだこと、あのときの選択を後悔していない。きっと、また同じ行動をとるよ」

 震えながら言う。


「メイリア・・・」

「でも、私たちがいなければ魔法少女は生まれなかった。魔法少女戦争で・・・多くの少女たちが死んじゃうことも無かった。私たちが間違ってたんだよね?」


「聖杯が許すとか、許さないとか、俺には関係ない」

 拳を握り締める。


「『ロンギヌスの槍』を手に入れるのは俺だ」

「・・・サマエル、ロストグリモワールを・・・私の脳内を読んだならわかってるでしょ?」

「言いたいことはわかるよ。でも、負けるわけにはいかない」 


 三賢者もユウミも誰も悪くない。

 はじまりの罪があるとするとしたら、俺だろう。


 均衡が崩れて、セフィロトの樹の神々の世界になってしまった。

 本来、俺たちクリフォトの樹の神々とセフィロトの樹の神々は対となり、人々を守らなければいけなかった。


 聖杯が許していないのは、俺のことだ。

 三賢者ではない。


 クリフォトの樹の神々は力を失ってしまった。

 数多くの書物には悪魔と書かれて、人間の信仰から敬遠されてしまった。


 『ロンギヌスの槍』はセフィロトの樹の神々か、彼らに関係する神々の魔法少女に受け継がれていた。


「セフィロトの樹の神々・・・は、サマエルならわかると思うけど、手ごわいから。『ロンの槍』が彼らと契約する魔法少女の味方をしてるの」

 メイリアがため息交じりに言う。


「私たちは、ミハイルよりもサマエルのほうが大好きなのにね」

「・・・・・」

 力なくほほ笑んだ。


 ファナとファナの兄が『ロンギヌスの槍』を手に入れたのも奴がいたからだ。

 ファナが前回の魔法少女戦争で契約した神は俺の弟、セフィロトの樹の神々の長、ミハイルだった。

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