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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

治療行為

『吸血鬼を捕まえた』と(れん)が言っていたので、どんな物かと夜になってから視に来たのだが、溜まり場にしている廃ビルの柱に手錠で後ろ手に拘束されていたのは、視た感じ普通の白人の少年みたいに僕には視えた



「こいつが?」


少年の顔を赤いスニーカーの爪先で弄びながら、僕が蓮に尋ねる


この赤い靴のせいでみんな僕を「レッド」と呼ぶ

簡単に言うと、喧嘩の時に人の顔を蹴るのが好きだから靴は赤くて、この渾名はそういうのの説明にもなっている


本名で呼び合って敵みたいな奴らに家や学校が特定されても嫌だし、そういう面でも僕はこの名前が便利だと思っている

まあ学校には全然行ってないが


「そう」


「こいつが」


こっちの方を視もせずに蓮が答える

視れば、数名で段ボールを集めて焚火をしようとしているみたいだった


こいつらの大半は頭がいかれている

でも、だから一緒に居てとても心地が良かった



少年は諦念に満たされながらも泣きそうな顔で、靴の爪先に白い頬を玩弄されていた


後ろ手で拘束されている以上、抵抗する事も出来ない

ふと、「こいつを殴ったら気持ち良いだろうなあ」と言う考えが頭に浮かんだ


実行に移そうかと僕がぼんやり思案していると、少年が不意に涙を浮かべ始めた

にも関わらず、その顔は少年自らの意思で靴へと擦り付けられていく


「血の匂いが解るのか」


僕は少年の行動を、そう解釈した



「これ」


「マジかもな」


蓮へと向き直る

愛すべき仲間たちは本物の馬鹿なので、燃え盛る段ボールの山に歓声を上げ、酒や煙草を楽しみ始めていた

蓮たちは、もう完全に少年への興味を失っていた様だった


近くに鍵が落ちていたので少年の手錠を外すと、僕は蓮たちに「おーい!」と声を掛けた


「こいつ、貰ってくから!!」


いいぜー、と何人かの声が聞こえてくる

新しいおもちゃを手に入れて早く遊びたくなった僕は、少年の前髪を掴むとウキウキと外に飛び出した




「お前、血が好きなの?」


ビルの外に出ると、僕は掴んでいた少年の髪を離して質問する

少年は返事の代わりに僕の腕に噛み付くと、歯を立てて皮膚を噛み裂こうとし始めた

思わず僕も、少年を反対の手で殴り飛ばしてしまう


「てめ、なめんなよ…」


噛まれた所を視ると、うっすら血が滲んでいた

『こいつは一回殴るだけじゃ済まないかも知れない』

そう思ったが、なんとなく噛まれた場所にむずむずとした感覚が在った


少年は倒れて仰向けになりながら、嗤っていた

本来なら僕はこんな状況で笑われれば腹が立つ人間の筈なのだが、あまりそういう気は起きなかった

代わりに『なんか綺麗な顔だな』と、ぼんやり思った


「おい」


僕は倒れた少年に馬乗りになると、とりあえず顔に拳で一撃する


「ちょっとさ」


「もう一回噛んでみろよ」


言った後で、それを自分でも意外に思った

しかし、本心だった


噛ませる為、腕を少年の口の前に差し出す


硬い金属音

何処に持っていたのか、そこに少年がさっきの手錠を付けた


「おい……」



狼狽える僕に少年は眼を細めて微笑むと、手錠の反対側を自分の腕に付けた

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