094.血液、4
(ローズ)
まだ夜は浅く、身の危険を感じるので、ペースを保つ。
疲れた。痛い。火傷しそうだ。
まだ遠くで悲鳴が聞こえる。また獣だ。他の獣たち。もっと...これは戦争なのか?
ただ生き残りたい。家に帰りたい。家が恋しい。家では楽なことばかりではないけれど、安心できる。愛されていると感じる。生きていると感じる。自分の人生に意味があると感じる。
誰かが小川に落ちてうめき声を上げる音がする。誰かが、私の20歩後ろにいる。うつ伏せになっている。私は疑い、まだ動かない。注意深く彼を見る。
彼は立ち上がる。彼は人間じゃない。
冷たく感じる。彼は私を見ている。
彼が私に向かって走り出すと、私はまた逃げ出した。彼は私を怖がらせる。
彼は強く、速い。私は弱く、体力の限界だ。獣のような声。彼は迫ってくる。
私は逃げられない。また死闘を繰り広げなければならない。もっと強い相手と。私は死にたくない。
もう少し先に大きな岩が見える。もうヘトヘトだ。どうにかして使わなければ。使うしかない。他にチャンスはない。
私がこれらに到達する前に、彼は私を捕まえた。彼は私をつかみ、空中に持ち上げた。私が反応する前に、彼は原始的なうめき声とともに私を地面に投げつけた。
頭が痛くなり、石に当たってしびれる。
蹴られているみたい。お腹が壊れそうなくらい痛い。
息ができない。まだ石をつかむことはできるが、腕の力はほとんど残っていない。
見たくなかったものが見えた。彼は裸だ。彼は私をレイプする。
とても怖いし、腹が立つ。まだパニックにならないで、考えて!考えるんだ!
彼を殺せどうやって?撃ち損じたら私の人生は終わりだ。彼の目も顔も見えない。私が持っているのはわずかな刃物だけで、一見無力に見える横たわった状態で奇襲をかける要素はほとんどない。
喉?ペニス?どこだ?頭をつかんで殺せるかもしれない。でも失敗したら...
彼は突然、私の腹を殴った。ショックで息も絶え絶え。倒れそうになる。ダメだ、ダメだ、ダメだ!意識を失うな!ファイトだ!
手が痺れている。もう何も持てない。私に何ができる?彼は私の身も心も永遠に汚そうとしている。彼は私の足を掴んでいる。私はさらされている。
私は足を閉じる。彼は足を開く。何とかしろ!動け殺せ!殺せ!殺せ!
私はその顔に石と水を投げつけた。怒って、また私を傷つけに来る。
だが、今回は予想していた。私は左腕で彼の腕をつかみ、当たりを避けた。
あそこに噛みつきたいが、もっと弱い部分を狙うべきだと思い出した。
腕は筋肉質すぎ、首は太すぎる。ただひとつ、儚げな立ち姿があるが、それに歯を近づけようとするのは、あまりに嫌悪感をそそる。別の選択肢が欲しい!
彼を傷つける。傷つける。私の足でつまずき、バランスを崩す。もう少しで倒れるところだった。その頭が石のベッドに触れれば、私は勝てるかもしれない。
でも彼は戦い、私はもう自分がどこにいるのかわからない。頭が痺れてくる。私の右手はその頭を叩こうとするが、彼は私の腕を捕まえ、ひどく痛むほど強く押す。
何とか片方の膝を彼の顎に当てる。私は4本の手足を彼の頭の上に乗せる。そうすると、彼は私に対して2本の手足しか使えなくなる。
強く立つ。頭は地面に近い。頭を潰したり、喉を裂いたりする力はない。
歯を折ることもできる。そうする。歯が全部抜けるまで石を口に押し込む。足で絞め殺そうとしたが、力不足のようだ。彼は私の左腕を折り、髪と服を引き裂いた。
私は彼の最後の歯を激しく折った。彼は私の左腕を掴めなくなった。
私は傷ついた腕を、残っている力を振り絞って彼の喉の奥に差し込んだ。体の残りの部分をテコの原理にして、腕をさらに深く首の中に押し込む。
戦っているが、私を外すことはできない。私は勝っている。徐々に息苦しくなってくる。手足を無造作に動かし、私を傷つけながら戦っている。
10秒。頭と背中が岩に当たって痛い。
15秒。顎が腕に痛い。引き抜きたい、溶かされている感じがする。
20秒?私の頭を石で思い切り傷つけ続ける。私は頭の上で丸くなっている。
30秒。私は意識を失っている。自分が何をしているのか、どこにいるのか、2秒ごとに思い出す。髪がちぎれ、背中の皮膚が裂ける。
40秒。左腕の先が酸につかり、ひどく痛い。痛みで泣きながら震えている。抜いてしまいたい。さらに押し込む。
分からなくなった。人生で最も長い1分間が過ぎた。もう私には逆らえない。
私の体は彼の頭の上で緊張したままだ。掴んだ手を早々に離したくない。早すぎる勝利の主張は、やってはいけない最悪の過ちだ。鼻から血が漏れているのが見える。目が見える。どこか別のところを見ている。パニックだ。
肺と喉が少し動くようになった。私はかすれた声で、レイプされた気持ちがわかったと彼に言った。
怯えた目で私を見ている。なぜ私がそんなに残酷なことをしているのか理解できずに、懇願している。
その通りだ。今でも理解しようとしない。理解できないのかもしれない。とにかく今は生かしておけない。
力が抜けていく。私はまだ待つ。
私はまた雨音を聞く。裸の肌に再び雨を感じる。冷たいが、今感じたものより甘い。
さらに待つ。もう腕の感覚がない。拡散した痛みだけだ。動けない。全身が痛み、筋肉が限界まで緊張している。
ゆっくりと体が柔らかくなり、少しずつ骨が動くようになった。私は目を摘み取った後、首を掴んでいた手を離したが、何の反応もなかった。
私の腕は中で動かない。折れた歯が私の肉の奥深くに埋まっている。私は熊の罠にかかったように身動きがとれない。出られない。
私は震える手で手近にある最も鋭い石をつかみ、その喉と顎の筋肉を切り始めた。
時間がかかる。何度も気絶したはずなのに、もう倒れそうだ。私はなんとかその顎を引きちぎることに成功し、大きな痛みと困難を伴いながらも腕を引き抜くことができた。
吐き出された肉と血の泥の中を滑り落ちていく。開いた口はもう閉じることができず、汚染され、穢されている。私は閉じない。その穴が口となり、眼窩から血を流しているその顔は、地獄にいる呪われた者の顔のように見える。拷問され、苦しみ、絶望している。
もう少しで同じような表情になるところだった。
私はふらふらと歩き出す。右手は左腕のズタズタをつなぎとめようとしている。私の服もすべてズタズタになった。ほとんど裸だ。とても寒く感じる。
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