002.始まりと終わり、3
（アイシェアン）
私はなんとか家に帰り、そしてまだ生きている。これはもう、平均以上の幸運だと思った。
再び激しく嘔吐し始める前に、私はガスマスクを外した。緊張のため、目、舌、のどがいつもよりひどく痛んだ。
リビングルームの真ん中で私から漏れた体液は、超現実的なスピードでフローリングを腐らせ始めた。
私は咳き込み、もがき苦しみながらも生きていた。頭の中は火のように熱くなったが、それでももうしばらく生き続けることに集中した。
私は口と顔をすすぎに行った。ここに戻る途中で遭遇した、あるいは踏みつけにされたすべての死について考えないようにした。今は移行期なんだ。これは長くは続かない...。
彼らのほとんどは、私がまったく知らない何らかの病気にかかっていた。私自身の症状も、はっきりしたものは何もなかった。しかし、少なくとも私はまだ生きていた。脈拍、鏡に映る自分の姿、そして思いつく限りの医学的徴候をチェックした。
家族の帰りを待ち、祈りながら、自分を安心させようとした。
ずっと昔、それから毎年、祖母は私たちに誓いを立てさせた。
それは簡単なことのように聞こえるが、私たちは皆、兄弟が外の愛や信仰や金銭のために、仇敵となる家庭を知っている。
だから祖母は私たちに何度も悪態をつかせた。祖母は激しかった。
私たちを引き離すような優しい愛も、互いに敵対するような大金も、互いに異なる行動をとるよう要求する神もいない。
弟が話す前に、私たちはすでに互いに、そして家名への忠誠を誓っていた。
そしてその後、私たち全員が同じように弟を守ることを誓った。
私の心の一部は、ここから遠く離れた同胞たちや両親のことを心から心配している。そしてもうひとつは、今朝何が起こったのか、データを集めて仮説を立てようと懸命になっている。
白波は去ったが、まだ電撃が脳を打つのを感じる。
そして、私が通った道のいたるところで、人々がもがき苦しみ、苦痛を叫び、自分の目を引き裂くのを見た。彼らが恐ろしい症状で死んでいくのを目の当たりにし、彼らの叫び声が町と私の頭の中に響き続けた。
有毒な何かがまだ空気に充満しているのだろう。私はマスクをつけ直し、呼吸を安定させようと懸命になる。それでも助かるとは思えない。
別のコンピューターに切り替えてみる。
スタティックは変わったが、まだ不具合がひどい。強力な太陽フレアの影響か？地球の電磁シールドを突き破り、電子機器に頼るものすべてを破壊するほど強力なイベントだ。
そして、すべての人に、すべてのものに、とんでもない量の電離線を浴びせるほど強力なインパルス？
私は星の物理学について言えるほどの知識はない。生物学者としてわかるのは、環境のある側面が明らかに変化し、その周辺で出会ったすべての生物が激しく反応しているということだけだ。
そして、もしこの変化が元に戻らなければ、外の症状の深刻さを考えれば、非常に多くの人々が死に続けるだろう。
初めてそのことを考えたときは、それがどれほど真実なのか、まだ実感するにはほど遠かった。
私の植物や微生物レベルの恒常性から離れすぎていた。
そして、現実のどのパラメータが変化すれば、これほど短時間で人体に恐ろしい影響を与えることができるのか、見当がつかなかった。唯一思いつくのは、もしかしたら、もしかしたら、大規模な放射線の爆発かもしれない。
さらに悲鳴が聞こえたので、外を見に行った。大切な人かもしれないと思ったからだ。
何人かの若者たちが路上で奇妙な動物から不器用に逃げていた。ティーンエイジャーたちは何度もつまずき、まるでひどく酔っぱらっているかのようだった。
彼らの足跡をたどる獣は不規則で、形が絶えず変化したり、はっきりしなかったりした。よろめきも多く、悲惨な苦痛と疲労、あるいは混乱に陥っているように見えた。
そして突然、液体の跡を残しながら跳躍した。それは少年の上に着地し、彼を押しつぶした。
恐怖におののいた生存者たちは、あらゆる方向へ逃げていった。私は恐怖におののき、理解することができずに見つめた。
その怪物には食べるための口も顎もなく、ただ体重と奇妙な数の不安定な脚だけがあった。
獲物の上に崩れ落ち、沸騰した液だまりの中で破裂した。捕らえられて潰された人も、そこで溶けてしまった。
私は口と吐き気を押さえながら、それでも目に映るものを理解しようとした。これらの出来事は、私が知っているすべて、そして私が経験したすべての論理を覆していた。
通りや壁のあちこちに、突然コケや地衣類が生えたり、カビが生えたりした。
我が家にはペットがいないので、ペットの様子を見ることができるのですが、観葉植物に大きな変化がないことに気づきました。一般的に植物はリグニンのおかげで安定しているのでしょうか？
私は不安定な足取りで階段を上り、妹たちの相部屋に入った。私は隣の池を上から見ようと、妹たちの部屋の窓に向かった。そして私は息を呑んだ。魚たちはもういないだろう。そこに立っていた邪悪な何かが、ほとんどすぐに私の方に顔を向けた。
~
後ろのドアを叩く音がする。慌てて棚を押してバリケードを作る。もはや人間とは思えない腕が窓を押し潰し、体をえぐり、中に入ろうとしている。私は悲鳴を上げ、揺れ動き、後ずさりする。恐ろしい音だ。
私は勝手口のドアをロックし、バリケードの操作を繰り返す。
しかし、ガラスの割れる音とともにうめき声は急速に衰えていく。数分後には、ただ死んでしまう。静寂が戻り、水たまりがドアの下に広がる。
即席の武器を手にドアを開けると、そこにあったのは凶悪犯罪の現場だった。あらゆる面に血が乾いている。足元には、少し変形し、ところどころ骨折した骸骨が、悪臭を放つベトベトのプールに横たわっている。恐ろしい。
助けを呼ぼうとして爪で引っ掻いたように見えるが......。ゾンビのように私を食べようとしたのではないだろう。本能的に他の何かを探していたのだ。私はドアを開け、外の腐敗した肉を掃除し始めた。
自分でもわからないような冷徹な現実主義で床を掃除している自分を見て、共感の一部が消えてしまったのだと思う。
私の台所で誰かが死んで、あっという間に原油になったと思う。マスクをしていても、咳は何度も出る。
あの人のように自分全体が溶けてしまう前に、何が起こっているのか理解したい......。
そして、家族の誓いについても考えた。聞き覚えのある声がして振り返ると、妹と弟がリビングルームに入ってきた。
彼らもまた、ありがたいことに生きて家に帰ることができた。彼らはまた、まるで途中で心の一部を失ったかのように、恐怖とショックを受けていた。
私はマスクを外し、ショックで立ち尽くし、手をつなぎながらも震えている2人を抱きしめた。彼らは私の腕の中で硬直し、怯えたままだった。私は彼らが生きていることが嬉しくて、涙を流した。
たとえ、私の心が無感情に覆われ始めていたとしても。その瞬間、私が感じたのは、彼らが生きていることへの安堵だけだった。
~
アイシースとアイシェアは手をつないだまま震えていた。私と同じように体中が汚れていた。混乱の中で、自分たちなりの帰り道を見つけていた。
彼らもまた、衝撃的で理解しがたい出来事を見、経験していた。私は彼らの頭を撫でようとしたが、手はべたつき、肌の色は変わり始めていた。
私たちは心配そうな視線を交わした。
私と私たちの目の前で、私の手の皮膚は流れるのを止め、固さと自然の色を取り戻した。
彼らを見守るという単純な事実が、メタボリックな何かを変えるのに十分であるかのように。
生物学ではあまり見慣れない行動だし、アティが戻ってきたときに反論されることもないだろう...。
彼女は戻ってくるのか？彼女は戻ってくるのか？
安 - 間違いない...間違いない。
私は彼らの背丈に寄りかかる。彼らはもう子供ではないが、震えて不安定だ。
私たちの祖母のために...」。私は目を光らせながら手を挙げ、抱き合う二人の手に触れる。
頭が熱くなり、キッチンからの残り香で気分が悪くなる。突然気を失いそうになる。
ちょっとここで待ってて」と頼む。私は脇に寄って急ぎ、たどり着いたバスルームに倒れ込む。
腕と胸の血管がピクピクと動くのを感じる。まるで私を完全に見捨てたいかのように、体の中を痙攣が駆け巡るのを感じた。
いや...
もう少しの辛抱だ。
まだだ...。
~
