208.お化け屋敷、2
(ローズ)
頭がしびれる。
目が覚めたのに、記憶が戻らない。
頭が痛くて、いつもは目を覚ましたり意識を取り戻したりすると一瞬で思い出すことができるのに、なかなか思い出せない。
私の名前...ここはどこだ...
私は自分が誰なのか、すぐに思い出す。
私がどこにいるのか、なぜいるのか、あいまいなままだ。なぜこんなに傷ついているのかも同じだ。
私は陸に打ち上げられた。海は私を石と泥の厳しい岸辺に吐き出した。暗い、夜だ。
左目が痛くて何も見えない。
なんとか水から這い上がる。咳き込み、1分間息ができず窒息しそうになる。大きく息をする。かろうじて体を起こそうとしている腕が大きく震えている。
私は動物のように、岸から少し離れたところを這っていく。
すぐ下で波しぶきが聞こえる。頭上には星が見える。崖や岸にぶつかる風の音が聞こえる。
寒いけど、今はほとんど感じない。
腹が減った...。と思う。
服は破れ、体中が痛い。
私は何か大切なものを失っている。
と聞いても、ブルーメは何も答えない。
あんなに静かだったことはない。
もう海に着いたの?彼女も私たちがどこにいるのか知らないのだろう。
結局一人なんだと気づいて、怖くなってきた。
私はゆっくりと立ち上がっている。不安定で、自分の体を支えている。
私の背後には海岸と崖があり、両側はかなり高い。
この先には、夜中に迷い込んだ、私の知らない場所がある。
~
私は小道を歩き始め、やがて小さな森に入る。
私は孤独で傷ついている。不安になってきた。どうやって落下から生き延びたんだろう...。何が起こったのか...
新しい世界への第一歩を思い出すよ...。
本当に不安になる。
でも、もうあんなことはできない。人間の怪物たちはみんなずっと前に死んだ。今はただの悪い夢だ。
その新しいエネルギーに突然さらされると、恐怖が激しく生まれるが、それは長続きしない。化学反応は長続きしない...。
私は今、森の中で迷っている。数歩ごとに立ち止まって呼吸する必要がある。肺が痛い。耳には乾いた血が流れている。
でも最悪なのは、彼女を失ったことだ...。
事故で離れ離れに...。こんな風に離れ離れになったのは初めてです。私たち2人はお互いを見つけようとします。
でも、彼女は今の私よりいい状態ではないと思う...。彼女を見つけなければ。
彼女は遠くにいるはずはない...
遠くで悲鳴のこだまが聞こえるような気がする...。
まるで、そのはるか外縁から誰かの悪夢の中に入り込んでいるようだ。私はまだ安全な場所にいるが、恐ろしい暴力的な何かが遠くのどこかで起こっている。
背中が焼かれたように、切られたように、食べられたように痛い。何が起きたのか、そして今何が起きているのか知りたい。
遠くで悲鳴が聞こえる。
私は物事がなぜ起こるのかを知りたい。でも時には、なぜそうなるのか理解できないこともある...。
少し行くと小屋の跡がある。倒れて壊れた壁のすぐ後ろに。
その小屋も朽ち果てていた。小屋の裏手に回り込むと、少しはましな状態で残っていた他の2つの小さな建物の間にいた。
私が見た限りでは、ドアは欠けていて、両方の内部で影が動いている。
幽霊はいないが、疲れているので休まなければならない。最初の廃墟に入る。中には崩れかけた小さなボートがある。
ああ、海岸が近いからボートがあるんだ。なるほど。
かろうじて見えるが、見るべきものは何もない。壁には見るべきものは何もない。本当に荒涼としている。
遠くで悲鳴や叫び声が聞こえる。人間か?とても不安になる。
私は小舟の後ろの壁に腰掛けた。右手の開口部から眼下に海が見えるが、それほど遠くない。
そして、ボートを水面まで降ろすためのクレーンのようなものが横にあったと思う。
私はそこに座り、夜のささやき声や遠くの不吉な音を無視しようとした。
自分を安心させようとするんだ...。
ブルーメを探すんだ。
それ以外はどうでも良いと思う...。
不安と心配を感じている。
遠くに聞こえる声については考えないようにしている。ただの悪い夢で、不安の表れなのだと自分に言い聞かせようとする。
横にもたれて、疲れに引きずられて眠りにつく。私はとても空っぽで、結局眠ったり、気を失ったりする。
夢の中で見たのは、屠殺と殺戮だった...。
人間も動物も同じように、暴力的に、無意味に殺すもの。
悲鳴が私を悩ませる。
怖くなってきた。少しずつ、その恐怖が私の中で花開いてきている。
喉元まで恐怖が迫ってくる。周囲で何が起こっているのか見当がつかず、最悪の事態を恐れ始める。
~
最悪というほどではないが、それでも最悪だ。
目を覚ますと、外はまだ夜で、数時間しか寝ていないように感じられる。
なぜもっとないのか?幽霊が叫びながら走ってきた。
なぜ幽霊の悪夢を見たのか。
立ち上がろうとすると、まだ体が痛い。それ以上に、空腹と喉の渇きだ。
私は森の中に戻る。夜は静かになった。悲鳴もやんだ。適当に見つけた植物を食べる。気分が良くなることはない。
後ろで何かが動いている。振り向いても誰もいない。心が不安定になる。
私はボートハウスに戻った。外には長い塀があり、そこから少し離れたところに門がある。塀は広い敷地をぐるりと取り囲んでいるようだ。
ゲートは開いていて、後ろから朽ち果てた道が始まっている。この道はもっと面白い場所に通じているに違いない。
新たなささやきが聞こえてくる。
何かがこっちに来る。私は隣の別の建物に隠れ、割れた窓から門をちらっと見て、隠れた。
何かが現れた。見た目は人間だが、私よりもひどい状態だ。うめき声を上げながら、次々と不確かなステップを踏んでいく。それもひどく傷ついているように見える。
その姿は、人間でもなければ、再び遭遇することを恐れていた怪物の類でもない。
ボートがボートハウスまで歩いていく間、私は隠れていた。どう行動すべきか、まだわからない。
私が気づかなかった階段を通って、背後の水面上のポンツーンまで降りていく。私のいる場所からは、もうその形は見えない。
私は、何も確信が持てないまま、できるだけ隠れたまま、ゆっくりと追いかける。
私は小さな崖の上にいる。右下にはポンツーンがあり、その上に立って海を見ている。
ぞっとする。何ですか?
今のところ言えるのは、確かに昔は人間だったということだ...。
そこにとどまる。まるで海の上で何かを探しているかのように。
そして死ぬ。膝をついてゲロを吐き、命もなく倒れる。
しばらく用心深く待っていたが、何も起こらなかったので、よく見てみることにした。
私はゆっくりと、海の上のおんぼろポンツーンにいる遺体に近づいていく。
死体はひどく切り刻まれ、非常に汚れているが、普通の人間のように見える。
血や嘔吐物だけでなく、強烈な不快臭がする。血や嘔吐物だけでなく、何かとても悪いものを連想させるような口調だ。死の臭いがするが、私にはよく思い出せないひねりが加わっている。
私が見ているこの気の毒な男には、死そのものよりももっと心配なことがある。
彼は突然生き返り、叫びながら私に襲いかかる。
私は痛みと恐怖の悲鳴を上げて尻餅をついた。彼は折れた顎の残骸で私の足を噛んでいる。私は残された力で彼を撃退し、なんとか脇に押しやった。
私の肩をかきながら、彼は水の中に落ちた。
水が彼を飲み込んだ。彼はもういないようだ。
息が上がってきた。怖かった、本当に怖かった。
夜はまだ澄んでいて平和だ。星は以前と同じように私の頭上にある。
彼女は今どこに?心配だ...。
私は痛々しく立ち上がった。もう一人の幽霊を見て、私も水に落ちそうになった。
誰かがそこにいた。子供かティーンエイジャーだろう。
私はゲートまで戻り、数秒ためらった。
何かが非常に間違っている。
私は自分の道を歩く...
~
森は不気味だ。死のにおいが消えない。以前聞いた叫び声を思い出す。
森は畑の上に急速に終わる。作物。手入れされた作物だ。季節は冬だが、現在はそれほど寒くはない。あちこちに様々な野菜が植えられている。ここは文明的だ。
私はそう思う。
道路は大きなトラックの横を通り過ぎる。さらに少し進むと、水面すれすれの崖で止まる。
道路が崩壊した。土地の一部が突然、そこにある海に落ちた。
私はゆっくりと野原を横切り、穴を回り込むように歩いた。暗くて、その先に何があるのかよくわからない。
夜なのに、まるで昼のように目が覚めている。
私は虚空の地面を歩いている。まだ遠くに海が見える。風の音が聞こえる。そして前方の遠くで、おぞましいうめき声とため息が聞こえる...。
もう少し先で川の音がする。
血の匂いがする。
ある建物にたどり着く。おそらく農場だろう。しかし、道は右に分かれ、左は広場になる。小さな村に着いた。
私は動きを止めて耳を傾ける。川の流れ、いや、小川の流れが聞こえるだけだ。
私は長い間放置されていたこの広場を注意深く歩き、しばしば肩の後ろを振り返る。
まるで幽霊が出るかのような、奇妙で無意味なささやきが遠くから聞こえてくるが、おそらく気のせいだろう。
広場の真ん中に噴水がある。誰かが横たわっている。 誰かが死んだのだと遠くから思う。
通りかかった家の中からうめき声が聞こえる。
ドアが開いている。中は暗くて何があるのかわからない。
背後で奇妙な音がする。振り返ると、遠くから犬が走ってくるのが見えた。怖い。私は中に入り、ドアを閉めた。
犬は1秒後にそこに到達し、吠え始める。まったく気に入らない。私は自分が危険にさらされていることに気づく。
うなり声は次の瞬間、恐ろしいうなり声に変わり、やがて消えていく。
ゆっくりと開けたドアの向こうには、骨と液状化した死肉の山があるだけだ。ああ、この腐敗臭は吐き気を催す。
犬はそこで、何かを思い出させるような死に方をした。
後ろからまた、家の中からうめき声が聞こえてくる。私はとりあえず、死を外に置いてきた。
振り返る。廊下が前方の夜に突っ込んでいる。右手のドアを開けると、厨房がある......と思う。
風がカーテンと私の心を弄ぶ。古い家の木がきしむ。あちこちで幽霊の声が聞こえる...。
私は飲み込み、ゆっくりと中に入る。
~
廊下の突き当たりに階下に通じるドアがあるが、まずは1階を見たい。
キッチンを見回していると、ここに住んでいる人がいることに気づいた。箱や家具の中には野菜の在庫があり、鍋には乾燥肉がある。
私はたまらず、テーブルの上や流しの脇に転がっていた乾パンの残りを少し食べた。
頭上でつまずく音がする。何かが上にいる。
ナイフを持ち、ゆっくりと階段を上る。別の時なら、手ぶらで助けを呼びに行っただろうが、今はまだ十分頭が冴えているので、そうすべきではないと気づいた。
階段の先の窓に映った自分の姿を見て、一瞬パニックになったが、自分の間違いに気づいた。
そして誰もいない部屋がある。ベッドはきれいにセットされている。今夜、誰かが予定通り使わなかったのか?
ベッドの背後には、うめき声が聞こえる別室へのスリムなドアがある。
入る。空気が血まみれだ。重苦しい。誰かがここで死んだ。そして今、誰かがその遺体の上で泣いている。
カーテンは夜の光に閉ざされ、窓ガラスは風で割れている。彼は誰かの粉々になった肉体にすすり泣く。
私の存在に気づいた彼は、私以上に怯えた様子で、どうやら前に鍵をかけたのを忘れていたらしい、この部屋への普通のドアから逃げようとした。
彼は汗をかきながらドアの前に立ち、息を整えながら、私が彼を敵として攻撃していないことに気づいた。私は彼を追いかけようとはしなかった。
かなり震えている。ライターに火をつけている。私は彼の顔を見るが、他のすべては消えていく。
彼はそこに誰がいるのか聞いているんだと思う。だから私は姿を見せた。彼は私を見つけると、わずかに飛び跳ねた。私は恐ろしく見えるに違いない。
それが彼との出会いだった。
彼は私に、隠れて静かにしているべきだと言った。囁いている内容はよく理解できないが、何か致命的なものが野放しにされているような気がする。その気持ちはわかる。
外で足音が聞こえる。
そして、不協和音が大きな悲鳴に変わる。それは鋭い痛みとともに私たちの頭に入ってくる。
私たちは気を失う。
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