表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/275

196.カオス、1

(ローズ)


パリの街に着くと、雰囲気は一変する。

一言で言えば、もう安心できない。逆さまになった荒廃した通りを歩きながら、私は警戒している...。

混沌としているが、それ以上だ。


空気は淀んでいる。ここには何も住んでいない。木々も、野生の動物も、キノコやカビさえも。

荒涼とした光景はシュールだが、それ以上に、この先に何か恐ろしいものが待ち受けている、不吉な予感が拭えない。


外にいるのに、空気は埃の異様なにおいがする。もう何年も風が吹いていない。


遠くには、まだ建っているビルや塔が見えるが、灰色や緑がかった霧の中を泳いでいる...。まるでロンドンのようだ。


R「ここで何があったんですか?

B 「別のキノコやバクテリアではない。この土地をめぐって争った勢力は、みんなお互いを消滅させたんだと思う。私のような存在の意志の残骸を感じる。彼らは...街中の生存者と戦い、そして自分たちの間でも戦った。すべてが死んだと思う。いや、あちこちに眠っているものがある。

R「人類とあなた方の種族との戦争がここで起きた?

B 「正確には違う。むしろ自由で、サバイバルで、パニックだった。目的がはっきりした戦争ではない。誰もが、そしてすべてが突然カオスに陥り、生き残ろうとしたり、パニックに陥ったりした。

R 「どうしてこんなひどいことが起きたのか?なぜ逃げなかったのか?


周囲を見渡す。すべてが灰色と緑。霧は果てしなく、静的だ。すべてがわずかに毒々しい。


B 「街が崩壊した。しばらくは地獄だったに違いない。そして...

R 「それで?

B 「結局、みんな死んでしまった......。まだ空中に横たわっていた毒は弱くなり、ゆっくりと地面に落ちた。毒の雲は街に降り注いだようだ。

R 「すべてが終わった数年後に到着する...。

B 「そのようですね。

R 「どうしてこの街の運命は、空っぽの街とこんなに違うのですか?

B - これは私が存在するエネルギーの性質と特性によるものだと思う。私が生きているこの目に見えない水。

R 「思い出す?

B 「呼吸する空気や飲む水のようなものだ。あなたや私のような生き物を構成する要素なんだ。まあ、種としてのあなたではなく、今のあなた自身としてね。以前のあなたの種はそうではなかった。いつ変わったか覚えている?

R 「覚えているよ...。


病気になる。ひどい死に方をする。野蛮な怪物として蘇り、また戦い、殺さなければならない...。この新しい空気は有毒で、適応できなかったほとんどの生命体は、危険な存在、異常な存在、怪物へと変貌した。

私たちは皆、この新しい日に生きているのであれば、望むと望まざるとにかかわらず、何らかの形で適応し、進化してきた。


この街で、それは非常に間違った方向に進んだ。私自身が経験したことよりも、もっと広いスケールで......。

以前噛まれた左手の指が痒い。

この世界で、この街で過ごした最初の日々は同じだった。


B 「このデッドゾーンには、私やオーガのような黒幕の存在は感じられない。事故や怪奇現象によってすべてが見放され、長く存続することができなくなったのだと思う。もしかしたら、街中のリンゴが毒の生物になって、肉を酸や有毒ガスに変えてしまったのかもしれない......。あるいは似たようなことだ。


辺り一面の木の幹は灰だけ。どこにも何も残っていない。この埃と煤の匂いが気になる。この匂いは、かつてこの街に住んでいたすべてのものの残り香なのかもしれない。鼓動が少し高まる。


R「本当に安全なんですか?

B 「はい。毒そのものは長い年月の間に腐敗してしまった。地面やホコリにわずかに残っているだけだ。最終的に風が戻ってくれば、きれいに掃除してくれるだろう。

R 「かわいそうな街...。これが本当の時代の終わりの姿なのだろう...。

B 「帰るべきですか?

R 「ふむふむ。よく見てみたい。そのあと、慰めが必要だろうけど。

B 「オーライ、ローズ。


~


かつてパリと呼ばれた廃墟に足を踏み入れる。恥ずべき遺産だ。

暗い。本当に、ひどく静かだ。乾いた枯れた地面を踏みしめる私の足音だけが聞こえる。有毒な土にまみれた私の足音は、何年ぶりかで、そしてこのあたりで唯一見えるものだ。周囲は一日中、緑がかった霧が立ち込めている。


死体は残らないが、遺影や所持品が残ることはある。宝飾品。道具。義手や義骨...。それらはただ、路上に横たわっている。

彼らは皆、生きたまま溶解し、そして死んだ。あらゆる種のあらゆる生きた組織は、この恐ろしい道を見送ったようだ。


警察の鎧も汚れて横たわっている。腐敗も進んでいる。


私は知らない宮殿の前を通り過ぎる。それはすべて失われ、汚染されていた。スカーフを顔に巻いて呼吸をし、汚染されたものに触れる勇気はない。だから、私はまったく物に触れない。


ルーブル美術館を見つけた。以前とは違う。宮殿は今、空っぽで汚れている。でも崩壊はしていない。

美術品の大半は、天井画の大半さえもなくなってしまった。しかし、奇妙なことに数点の絵画があちこちに残っている。

あちこちに喧嘩の跡や略奪の跡がある。何があったかはわからないが、少し散らかっていて、壁も傷んでいる。


特に天井に残っている絵がある。これは聞いたことがあった。不気味で美しい。緑の霧にもかかわらず、寒色はまだ明るい。


鳥たち...鳥たちを見ていると、私の中に何かが呼び起こされる。

君の青い鳥を覚えているよ...


この絵はここに残っている。廃墟に残る他の歴史の痕跡と同じように。数十年後、数百年後に建物が崩壊するまで、この絵は古び、残るだろう。


さらに言えば、ペンキの跡が残ったセメントの破片は、そこで歳月を重ねることになる......。そして、古代エジプトの墓やマケドニアの宮殿のように、もしかしたら遠い未来の考古学者がまだ良い状態のものを見つけるかもしれない。

そして何年もの間、古代の歴史への情熱に突き動かされながら、パズルを組み立て、他の人たちを探し出すのだ...。長い年月を経た文化...この絵はそのほんの一部に過ぎない。


鳥はやがてみんな飛び去る。すべてのものは死に、あなたが愛するこのバラでさえも、いつかは枯れてしまう。


私はまた自分の死と向き合っている。この絵は今でも美しいのに、見ているとむしろ憂鬱になる。

災いなるかな...。


この絵の上でじっと固まっている美しい鳥たちから視線を離すことができない。その姿は消えてしまったが、どんな物語だったのだろう。お告げ?


淀んだ空気から少し守られた別の部屋で、私は人々とそのキャンプの残骸を見つけた。衣類。缶。金属製の火鉢に焚き火。さまざまな道具。カメラ...。

カメラだ!


梱包する。あちこちに走り書きされたメモを見る。どの言語か読めないが...。

帰る前に気づいたことがある。


壁にはペンキが塗られ、遺跡が描かれている。古代ギリシャやローマの遺跡のようだが、緑に覆われている。建物は自然に戻された。この壁一面に描かれた絵は、欠けたキャンバスの続きのように見える。額縁の空いた場所が見える。


バート』で終わる2つの単語しか読めない。

両親が好きそうな芸術だ。今の世界を見るのが好きだったのでは?ハーバート・ハーバートと呼びましょう。


私は美術館を出て、街の中を歩き続ける。地下には足を踏み入れない。地下に何が溜まっているのか見たくないからだ。

突然の夜。初めてお腹が空いた。もう食べるものもないし、飲むものもほとんどない。

キャンプを張り、適当なアパートで横になる。ベッドはまだいい。


眠りにつこうとしたとき、ブルーメが私を起こした。


B 「ローズ、何か生きているものが近くにいて、敵対しているようだ。


何も言わずに、私は暗闇の中でアングストリッヒにすべてを詰め込み、何事にも備える。

私は身を隠し、窓から眼下に広がる灰色の人けのない通りを注意深く眺めた。ブルーメは私の頭の中で、私たちはまだ見つかっていないと言う。このまま行くべきだ。


私は待つ。様々なゴミや埃に覆われた残骸がある通りの様子を少し見る。


アレが現れる。それは光を反射しない人間のシルエットで、ただ不確かなままゆっくりと歩いている。うめき声がする。とてもゆっくりと歩く。


ブルーメは暗闇での私の視力をわずかに向上させる。道行くものすべてが徐々にクリアに見えてくる。彼女を除いては。

彼女は真っ黒なままだ。


R - オーガ...そうなのか?

B 「いや、まったく別のものだよ。たまたま似ているだけだ。

R「痛みはありますか?

B 「そうだと思うよ。でも、今のままでは私たちの言うことを聞かない。今にも死にそうな傷ついた獣だ...。おそらく最後の生き残りだろう。

R 「悲しいですね...。

B - 平和のうちに苦しませておくべきだ。助けようとすれば、妬まれ、さらに苦しむことになるだけだ。


なるほど...。この地獄のような奈落の底で長い時間を過ごした後、世界が終わっていないことを知り、脱出できたかもしれないことを知った。あまりにも長い間、見ることもここから出ることもできず、閉じ込められていた。


R 「せめて、出て行くヒントを与えることはできないのか?敵の少ない環境で最期を迎えるために?

B 「後押しか?わかったよ。あのような存在との付き合い方は慎重にならざるを得ない...。私たちが去るとき、かすかな痕跡を残すことができる。好奇心をそそられ、それを追いかけたくなるかもしれない。そうすれば、盆地から出る道が見つかるだろう。


我々はそう思う。

この部屋の隅で半分眠りながら、隠れて少し休む。そして、アレが遠くに行ったとき、私たちは出発する。


喉も渇いたし、疲れたけど、もう時間だ。


私は死んだ広場、亡霊のような通り、凱旋門を横切る。

緑とオレンジの霧の中、太陽はゆっくりと昇り、埃と煤にまみれた、思い出の詰まった古代都市の廃墟の上に現れる。


日が昇る。果てしない霧を後にすると、空はゆっくりと青さを取り戻す。


~


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ