148.最悪の夜、4
(ローズ)
オーガは暗闇でできた巨大で不気味な人間のシルエットだ。
女らしく、夜のように暗く、獣のような人間の影。身長は4メートル以上あるが、四つん這いで動いている。足か手か頭のてっぺんのようなものが伸びているのがわかるだけだ。頭には何の特徴もなく、ただ黒い。
私が後ろに下がろうとすると、何かつぶやいた。
私の足をひっかく。私は叫びながら倒れる。頭を地面に強く打ち付けられ、痛みで気を失う。
まだ体が動いているのを感じる。
~
私は高いビルの廃墟で意識を取り戻した。壁は崩れ落ち、欠け、屋根はもうない。岩の頂上だ。
隠れ家だ。
見晴らしのいい場所の真ん中で、大きなかがり火が燃えている。周囲に残された壁は不完全で、崩れ去っている。
火の中に遺体のシルエットが見える。
頭が痛い。めまいがする。足を怪我して出血している。
私は立ち上がろうとする。左手は石にしがみついている。
ブルームはやっている。彼女はそれを手放さない。私ができなかったときに、彼女はなんとかそれを取り戻して、私の腕でそれを掴んでいた。唯一のチャンスだ。
鬼は突然、ほとんど音を立てずに空からそっと降ってきて、私たちの前にしゃがみ込む。大きな火でもその顔の特徴を照らすことはできない。
それは私の知らない言語で話しているが、私が今考えているのはもっと原始的なことだけだ。殺すこと、生き残ること。
その手が突然私をつかみ、激しく押し倒した。私は地面に突き刺さった。
もう片方の手が私の頭に突き刺さる。私は痛みで悲鳴を上げる。私の頭蓋骨が卵が割れるように粉々に砕けるのを感じ、音がする。それは私の脳の中に入ってきている。私の片目が引き裂かれるのを感じる。ペナンブラではもう同じものは見えない。私の声は悲鳴のために無言になる。頭蓋骨が砕ける音と感触だけが聞こえる。
左目がつぶれている。声も喉も麻痺している。頭の中が真っ白。
頭の中でその声が聞こえる。喉で、肺で。それは私の思考を通して私の言語を学んでいる。
何度も何度も奇妙な言葉が繰り返されるだけで、生き残る可能性があまりにも早く狭まっていくのを感じる。頭部に適切な頭蓋骨がなく、脳が空気にさらされていない状態で、私はいつまで生き延びることができるのだろうか？
右手が私の頭から離れる。指についた血の染みは、ほとんど瞬時に暗闇の中で消えた。
私は血を吐き、残り少ない力を振り絞って地面を震わせた。
奇妙という言葉を声に出して繰り返し続ける...。私の頭はバラバラになっているが、私の左腕はまだ私たちに残された唯一のチャンスを掴んでいる。ブルーメはもういないようだ。
O 「奇妙だ...。
生々しく、活気に満ちた大きな声が、家よりも高い体から聞こえてきた。立っていることもままならない私の体のすぐそばで。呼吸をしようとするが、ひどい困難がある。
O 「どうしてまだ食べてないの？
そして、それが私に話しかけているのではなく、私に咲いている臆病な花に話しかけているのだと気づいた。どうやら仲間の一人のようだ。ブルームは動き、また青白く光る。彼女はまたヴァイオリンの音を立てるだけだ。オーガが私たちを見下ろしている、私たちを取り囲んでいる、不思議そうに、戸惑っているようだ。
O 「どうしてそんなに弱いの？なぜ人間と一緒に暮らしているんだ？彼らは食べ物だ...彼らは...
動こうともせず、横になっていると息ができる。鬼が話すのが聞こえる。私は死ぬほど怖くて、ブルームが何を言っているのか、まだ不思議に思っている。彼女はまだ答えようとしない...。
B - 私たちは...私たちは彼らのことをほとんど考えていない。それなのに、彼らの真似をしようとしているあなたを見て...。彼らのように生きたい。心の底では、みんな彼らのようになりたいんだ。だから、ありのままの自分を愛してくれるホストを見つけなさい。これは私のものだ！
ブルーメは光を放ち、オーガを驚かせる。
そして、オーラが大きくなり、私たちに向かって前進してくる。唸っている。ブルームは、その思いがけない好奇心を狂気へと変えた......。
ブルームの淡い光は、近づいてくる影によって暗くなる。背後の動物の死体の大きなかがり火は、まだ周囲をほとんど照らしていない。
私の指は血が出るほど強く握りしめている。その間、彼女は私の頭の中で何かを語っている......。
鼓動が痛いほど速くなった。終わりだ......怖い。ブルーメは今また四六時中ヴァイオリンを弾いている...。
左手の指が石の上で折れるのを感じる。彼女は最後に私に何かを伝えている。
B 「私はローズを愛していた...。
私の左腕が突然動き出し、頭上の石を砕いた。私は色と輝きに目を奪われ、背中が一瞬地面から離れた。
それは私に飛びかかり、その頭は突然私の左腕を食いちぎった。
色がそこらじゅうに落ちて、鬼が狂った。私の腕を引きちぎって飲み込んでいる。残された光と色の斑点と泡は私の全身に広がっているが、鬼が私の腕を食べている間にすぐに消えてしまう。
肩の傷から出た私の血が地面を濃い灰色に染めている。なんとなく見える。痛みが全身を襲うが、気絶はしない。たぶん、最後が見たいから。
オーガはブルーメを侮辱している。怒りとおそらく嫉妬に打ちひしがれている。オーガは今、私をズタズタにしている。私の衣服と皮膚を引き裂き、私の胸とその内側に隠されているものを開こうとしている。
花をつかんで引きちぎる。彼女を私から引き離そうとしている。ブルームを私から引き離そうとしている。私の肺、内臓、心臓の周りの根が引き伸ばされ、引き裂かれるのを感じる。メインの花束が少しづつ貧弱になっていくのが見える。枯れていく...。
彼女は私からブルームを奪おうとしている...。
今は違う痛みで泣いている。
夜は沈む。人類と生命の残骸を燃やす炎は、そのすぐ後ろにある。
彼女の贈り物がなくなった。彼女の花は私から奪われた...。彼女の根は、容赦なく私の肉から引き剥がされた。
耐え難いほど空虚な気分だ。私の体は今はまだ生きているかもしれないが、長くは続かない。私の魂は空虚に感じる。
頭の中でヴァイオリンの音が聞こえなくなった。
何かが私の中で急速に大きくなっている。あと数秒で爆発するだろう。
私は彼女を奪われた痛みを叫んでいる。私の声には怒りが湧き上がり、今にも爆発しそうだ。
年前、君が鬼に連れ去られていたら、私はどうなっていただろう？
一人でも一緒にいる限り、私は人間性を大切にした......。
私の叫びは今、別のものになった。私の苦しみと憤りをすべてその火花に捧げる。私は自分が何になろうとも気にしない。
残った光る岩の破片は、私の右腰の肉と皮膚とともにオーガに飲み込まれた。
私は傾ける。すべてを解き放つ。私の怒り、私の願い、私の苦しみ。私の夢と悪夢。私の小さな力と広い怒り、私は彼女が近づいた瞬間、激しい火花に変わる。
すべてが溶ける。
閃光が私の目を眩ませ、私は怪物のように叫んだ。
彼女は私からブルーメを奪った！私は想像以上に大きな声で泣き叫び、音と思考を瞬時にあの燃え盛る光に注ぎ込んだ。
右腕を怪物の中に突っ込み、私の心臓と同じように怪物の心臓を引き裂こうとしているうちに、私の体は消えてしまったようだ......。
光と闇、無彩色と色、私はもうその違いを知覚することができない。私はもう死んでいるのだろう。
私は叫び声と灼熱の光の噴出、火花の中で意識を失った。オーガの奥深くまで到達できたとき、私はオーガを攻撃した。
私の胸からブルームが消え、心は恐ろしく冷たく空虚になった。想像をはるかに超えていた。
突然、私の中で爆発が起こった。
すべてが一瞬にして消え去り、あるものすべてを消し去ってしまうかのようだ。
オーガ、私、焚き火、廃墟、街、空の雲。
それはすべて、私の目を焼くまばゆい光に溶け込み、眼下の街に溢れ始める。
この夜、私はとても虚しく感じた。
~
