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800文字ショートショート

好かれる理由があるように嫌う理由もある

作者: 一色 良薬

「社長。先程苅田から連絡がありました。件の依頼内容についてお話したいことがあるようで、事務所に立ち寄るようです」

 猪原の言葉に棘崎は天を仰ぎたくなった。勿論態度には示さないし、これといった動揺した素振りも見せない。何喰わぬ顔をしつつ、猪原と社長の会話を耳澄ませる。

「……またか? 三日前にも別件で話したいことがあるって事務所にきたよな、あいつ」

 一旦流そうとした社長の間から、訝しげる質問が飛ぶ。続いた問いかけに棘崎は勢いよく頷きそうになってしまった。堪えて「そうだ、そうだ!」と心の中で声を上げた。

「なんならその三日前も同じような事を言って社長へ会いに来てたっすよねぇ」

 二人の会話の輪に参加するように、寅助が頭の後ろで手を組みながら疑問を投げた。

「寅助の話は初耳です。そうなのですか?」

「というより最近そのペースで事務所に訪問してくるんだ。依頼内容の件に問わず、だらだらと世間話をしに来て……あいつ、暇なのか?」

「苅田さんがスか?あの人以上に腕利きの情報屋はいないからそれはないでしょ」

 会話を聞いているだけで胃が痛くなる。棘崎に追い打ちをかける形で卓上に置かれたスマホが点滅した。

“もう少しで終業だよね? 今日こそご飯どうかな”

 何度も何度も着拒しても番号を変えてショートメールを送ってくる相手に、心底嫌気が差す。手酷く対応してやりたいが、そうもいかない相手で面倒臭い。

 苅田じゃなかったら警察に突き出しているのに。

「君のことが好きな理由はいくらでもあるよ。ここであげるのはもったいないから二人きりの時に」

 一度告白を断ったことがそんなに執着する理由になるなんて、棘崎は思いもしなかったと額に手をかざした。なんなら嘘でも付き合ってから別れた方が良かったかのだろうか。

 ──嫌。そもそも苅田の事は嫌いだし、嘘でも付き合うくらいなら死んだ方がマシだ。

「……しつこいところが本当に嫌」

 呟きと共に来客の扉を開く音が響いた。

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