あいらの夏休み
初投稿です。
よかったら感想ください><
知っているんです。最初から全部こうなることは。
いつだってそうでしたから。手に入れたものは全部消えて、ほしかったものは欲しくなくなって、いつしか感情だって消えるんです。
大学に入ったら自然に彼女ができると思っていた。
何かが変わると思っていた。
きっと、物事はいいほうへ向かうと何でかわからないけど信じていた。
何にも変わらなかった。大学に入ってから初めての夏休み。高校時代からそうなんだけど夏休みは絶好の引き篭もり期間だ。いや、といってもわざとそうしてるんじゃなくて、そうせざるを得ないっていうか・・・なんというか友達がいないんです。普通、大学生だと夏休みはバカンスですよね!楽しいですよね!あっ!外では花火のようですね!パンパンなっていますよ!・・・・どうやら外ではなく隣の部屋みたいですね。
僕は、地元の高校を卒業してから大阪の大学に進学した。
高校時代していたことといえばバイトぐらいだったんだけど、勉強をぜんぜんしなかった。なんというか、高校生って言えば遊びじゃね。って、思っているうちに時日が経った。もちろん、友達の数0。厳密に言うと0ではないんだけど、今は連絡とってないし0にしておく。
学校から自転車で十分くらいのところのマンションで一人暮らしをしている。今はもう慣れてしまったが、最初の一ヶ月は精神的にも肉体的にもつらかった。そりゃ、今まで実家暮らしだったから洗濯も料理もやったことがない。最初こそカップめんで飢えをしのいでいたのだけれども、最近では、自分でスーパーへ買い物に行き材料を買い、米を自炊して料理ができるようになった。これもすべてクッキングパパのおかげだ。漫画を読みながら料理の勉強ができるなんて、なんとすばらしいのだろう。うちの家にはオークションで買ったクッキングパパが全巻そろっている。といっても、あまり参考にはしない。
夏休みぐらい家事なんかやめて実家でごろごろしたいところなんだけど、そうはいかない。バイトがあるのだ。時給八百円のコンビニ店員。別に接客が好きな訳じゃないんだけど、なぜか気づいたら働いていた。実際、接客は嫌いで、裏で品だししている方が好きだ。働いてもう、4ヶ月近くになる。大学に入ってからすぐバイトを探した。僕の家はあまりお金持ちではなかったので、仕送りも少ない。なるべくバイトして稼がなければ遊ぶお金が足りなくなると思ったからだ。だが、そんな心配いらなかった。友達もいないのでお金も使わない、趣味といった趣味もないのでお金を使わない。イコール、お金が貯まる。やっぱり、お金持ちがお金を持っているのは、無駄使いしないからなんだなと思う。貯金は高校時代からあわせて百万円ほどある。使い道は、ない。
おっと、そろそろバイトの時間だ。僕は、バイトよりバイトに行く前の、この時間の方が嫌いだと思った。それでも、時は過ぎてゆく。
「おはよぉございまーぅす・・・」
いつも通り、形式だけの挨拶をして、バックルームに入り着替える。準備していると店長が女の子と一緒に近づいてくる。
「あ、そうそう。今日から新しい子が入ってきたから、ちゃんと教えてあげてね。」
「はじめましてっ!坂本あいらっていいます!よろしくおねがいしますっ・・」
僕は、衝撃を受けた!この子がまたかわいい!しかも、ブサメンの俺に対する嫌悪感がない!ちなみに、僕はこのバイト先でも友達がいない。最初こそ、フレンドリーに話しかけてくれたのだが、持ち前のコミュニケーションスキルのなさで、会話は盛り上がることなくすぐに終わり、きまずい感じになる。そんなことを繰り返してるうちに、完全に仕事仲間になってしまい、事務的会話しかしゃべらなくなっていた。まあ、それが顔のせいかどうかはわからない。が、しかし少なからず、それもあると僕は思う。
とにかく、これはチャンスなのだ。彼女を作るチャンスであり、友達を作るチャンスなのだ。なぁに、心配いらない。こんな日のために、グーグル先生やヤフー知恵袋さんにコミュニケーションのとりかたってやつを教えてもらってある。ただ、一度きまずくなった人にそのテクニックを使うのは少々やりにくい。だが、彼女なら、初対面の彼女なら使える!
一通り仕事を教えて、あとはレジを練習するみたいな感じになった。といっても、うちの店はお客があまり多くないので、しゃべるのには絶好の機会だ。今こそ、俺のスーパーテクでくどいてやるぜ!
「坂本さんってさぁ・・・処女?」
「え・・何・・・。きもっ」
おわった。
どうでもよかった。あんな女。ていうか誰だよ、最初に処女って聞いて下ネタにもっていって、即はめに持って行ける。とか言ったの。そんなの信じてねーよ。消えたい、死にたい、殺したい。わからない。先が見えない。前が見えない。現実が見えない。
いや、そりゃキモイっていわれるわ。あほでもわかる。ただ僕は死にたいだけなんだ。チャンスはあった。だけど、ない方がよかった。恐かった。失敗するのが恐かった。チャンスだー!なんて期待して無様に失敗するのが恐かった。だから逃げた。いつだって僕は逃げていた。
吐き気がする。
うわあああああううぅううううぁあぁっぁぁぁうあっわああああああああああ
先ほど趣味がないと私は言いましたがそれは、嘘です。本当の趣味は、為替です。知っていますか?その気になれば、1分で何百万円儲けることができるんです。もちろん、逆もありますよ。昨日、口座には二百万円ありました。とても、うれしかったです。人間欲深いって言うのは本当のようです。もっと・・・もっと・・・といっている内に気づいたら元の資金の百万円もいつしか十万円になっていました。
おかしい・・・オカシイ・・・
確かに、二十四時間前はとても幸せだったんです。友達とか別にいらね。ってな感じで、お金さえあれば幸せさ♪なんて、多分、生まれてから一番幸せだったと思う。
まさか、次の日こんな目に遭うとは思わなかった。死にたい。何を焦っていたのかは分からない。ただ、焦燥感に惹かれた。急がなくていいはずなのに。何かにとりつかれたかのように。しねしねしねしねしねい。これは、現実か、現実なのか、嘘だ、夢だ。
すべてこうなったのも劣等感のせいだ。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。昔からあるニキビ、食べても太らないがりがりのからだ、出っ歯・・・数えたらきりがない。死にたい、何もしたくない。見えない。吐き気がする。
「殺してほしいぃぃっっぃっぃぃい!」
僕は叫んだ。バイトが終わり、少し離れた公園でさけんだ。もう、他人にどう思われてもよかったので、思いっきり叫んだ。何度も、何度も。
ドスッ。鈍い音がしたのと同時に、背中に痛みを感じた。バランスを崩し前に倒れ込む。
「いってー・・・。誰だこりあぁ!」
多分、背中を蹴られたんだと思う。絶対殺してやる。と思って振り返りながらさけ
「ずいぶん、楽しそうなことをしてるんですね。先輩。」
振り返るとそこには、坂本あいら。びっくりした。と同時になぜか恥ずかしくなった。こんな状況でもやっぱり他人の目は気になってしまうのがまた、自分に対していらいらした。
「なに。あいら?」
どうでもよかったので呼び捨てにしてやる。むかつく。
「先輩にとりついてるのは、たちの悪い悪霊です」
!!!その発想はなかった!そうか、だから俺はこんなについてないのか!そうなのか!多分、イギリスかローマの法王の地縛霊がついているんだろう!やることなすこと裏目に出るのもそのせいか!
「はやく除霊してくれ!」
俺は叫んだ。あいらは俺に近づいて包丁を向けた。なんとなく、ミライが分かった。すごくね?多分この能力があったら今頃投資で億万長者だよ。なんでもっと早く開花しなかったのだと悔やむ。
ブスっ。のど元に包丁が刺さる。刺さる。刺さる。血が出る。人の刺し方をよく心得ている。笑える。俺は死んだ。
目が覚めた。いつもと変わらない光景。
「なんだ、夢だったの。」
周りを見渡す。
灰色に狭い檻の中にアタシはいた。
やっぱり、あいつは死んだ。
途中でぶん投げてしまいました