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03:義兄との遭遇

「髪の長さは女性の美しさの象徴!! わ、わかってるんですか!? そ、それを貴女は、こんなにも短く切ってしまわれるなんて……!!」


 メイド長のメアリーがキンキン声で叫んでいた。


 私が好んでいたゲームが中世ヨーロッパ的な世界観のものが多いせいか、髪が長いほど女性らしく魅力的っていう常識的なのがあるみたい。

 今までもこういう雰囲気の世界に来たことがあった、なので私は知っていた! 短い髪では怒られちゃうってこともね!


 けれど! 関係ないよね!


 髪の毛を短くして女性にモテまくって死んだりしたけど!

 その分だけ私はこういう騒動の抜け出し方も心得ているわけですよ、主にメンタル的な面で。


 実際に話術とかで何とかできたら長生きしてるわけだしね。

 私にそんな話術とか望まないで。顔とイケメンさで何とか生きてきたような人間だから。


「そ、それにその格好は何ですか!? 乗馬用のズボンをはいて……ま、まるで男の子ですよ!!!」


 メアリーはほんど泣きそうな声だ。

 何ならショックすぎてちょっと泣いてる。


 けれど、鏡の中の私は輝いていた。


 短い黒髪。

 乗馬用のズボンを履いた私。


 すらっとした長い足にズボンはピッタリだし、白い肌には黒い髪が似合う。

 それに実は私って男顔だったから、何なら転生前の私よりかっこいいかもしれない!


「でもメアリー」


 だから私は振り返ってにっこりと笑った。



「今の私の方がステキでしょ?」



 メアリーは何もいえなかった。

 部屋を片付けてくれているメイド達も何もいわない。

 その沈黙こそが、その通りって証明してた。


 長い髪が魅力的な人はもちろんいる。

 でも短い髪の方が魅力的に見える女性だっているよね。

 私も男装アイドルしてたけど、やっぱり似合う髪型って大事だもん。


「ほらね。だからメアリー、泣かないで。貴女は笑っている方が魅力的だよ」

「は!? ク、クイン様、何をいって……!!」

「私の心配をたくさんしてくれてありがと。感謝の代わりにハグしてもいい?」

「な、なにをいって……!!」


 返事を聞く前に私はメアリーをぎゅっと抱きしめる。

 10歳にしては身長が高いといっても、メアリーの胸くらいまでだからあんまり意味がないかもだけど。


「大好きだよ! いつもありがとうね!」


 見上げてそういうと、メアリーの顔がパッと明るくなった。

 少し照れているようだ、まぁ貴族の娘って「はしたない」とかいってハグとかこういうことしないか。


 やっぱりその通りだったみたいで、メアリーは「は、はしたないですよ」と私を離した。

 それでもちょっと機嫌が良くなったのは雰囲気でわかる。

 やはり好きって気持ちは大事……!


「そうだ! クイン様!! そ、そんな場合ではありません!!」

「え、なに?」

「お義兄様に会う時間ですよ!!」

「おにいさま……?」


 あ、そういえばメイドさんが迎えに来たんだった。

 私の髪の毛が短くなっちゃった騒動で忘れちゃってたけど。


「そっか、私っておにいさまがいるんだ」


 乙女ゲームでよくあるよね、おにいさま。

 ということは多分これ血が繋がってないな。結婚できるやつだわ。イケメンで攻略対象だったりするんだろうな。


「血が繋がってないおにいさまだ……!」


 がぜん乙女ゲームっぽくなってきた!

 拳を作る私に、メアリーはさらりといった。


「いえ。キーリー様とクイン様は実際には従兄弟ですので血の繋がりはございます」

「あれ……?」

「目の色もそっくりでございます」

「おっと?」


 あれーーー?

 こういうのって血の繋がりがないのが王道……


 と、まで考えて私は気づく。

 私って今はヒロインじゃなかったんだ!


 ヒロインの友達でお助けキャラだから、そっか……

 血の繋がりとかあったりするのか……ライバルとかにならない感じか……そりゃそっか。


「じゃあヒロインとおにいさまを巡って血で血を洗う殺し合いをしたり、攻略対象の義理の妹兼ライバルと殺し合いをしたりとかはしないのか……!」

「クイン様は悪い夢でも見たのですか!?!?」


 悪い夢どころか、実際に私の身に今まで起こったことなんですけどもね!

 青ざめているメアリーにいえるはずもなく、私は笑顔で誤魔化しておいた。


「じゃあとりあえずおにいさまに会いに行こっか!」


 力強く宣言すると、部屋にいたメイド達がざわついた。


 え、なんで?

 おにいさまとやらに会う時間だから迎えに来たんじゃないの?

 何でそんな、この人本気でいってる? みたいな態度なんだ?





 そんな疑問は『おにいさま』と出会ってすぐに消えた。

 だって十数分後、私の目の前にはーーーー



『クイン………………』

「お、にいさま?」



 真っ黒で巨大で人語を話すヘビがいたんだから。




 

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