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24:誘拐されてます③

「ていうかこれ、この誘拐…………」

「なに? なんなのよ」

「私、タイムラインで見たぞ…………!?」


 ルネ様がいった。


「は?」


 そりゃそうだ。

 タイムラインってなに? 何なのこいつ? って話だもの。


 けれど私は見た。

 いや正確には見ていない、でも知ってる。


(これ、この少年がオネエキャラとして生きていくことになったイベントだ…………!)


 そう、そしてタイムラインで見た。

 正確には見ていない。つまりそうーーー



 めちゃくちゃ二次創作されているのを見た。



 整理すると、この少年。

 彼はたしかルネ・A・ヴィヴィアン。


 ルネ様って名前とヴィヴィアンって呼ばれていた事実。

 そしてこの眼からして間違いなく、彼は攻略対象のひとりで神付きだったはず…………


 なぜ知っているかというと、このゲームを愛していたグループのメンバーの推しだったからだ。

 泣きぼくろになりたいっていってた。


 確かルネ様と仲良くなると過去に誘拐されたって話をしてくれるんだよね、詳細は省かれていたとかだけど。

 こうさらっと、ずいぶん昔、誘拐されたことがあるの。眼を狙われてね、目玉を狙われることって貴族には多いのよ………くらいの内容らしいけど。


 でもそこで彼は命というものは、やっぱりとてつもなく儚いんだと気づいたらしい。

 それならば、家のためとかそういうのを全部無視して好きに生きようと決意した、っていう話だった。


 侯爵という家柄的に厳しく止められてたオネエ口調や制服の派手な改造とか。

 ファッションデザイナーになる夢とか、そういうのも全部「人生は短い」という、その誘拐事件を受けてそうなった…………みたいな。



 もしかしなくてもこれ…………

 人生の岐路だね? 間違いなくいま。なう。



 ここで何かを間違えてしまうと「ルネ・A・ヴィヴィアン」という人間のアイデンティティが失われてしまうのではないか……?

 それなのに何が問題かって…………



 絶対にこの場に、確実に。

 私は本来いなかったはずってことだ。


 やらかしているみたい、現在進行形で。

 やばい。どうしよう。



 そもそもだよ? だってね? よく考えるとキーリーだってゲーム開始直後も大蛇だったもの…………

 ヒロインちゃんに心を許してヒトの姿を得るんだよ。


 うちの義兄、すでに完全にヒトに戻ってる…………

 その結果、私と一緒に避暑地に来てこうなってしまった。確実にゲームの中では「(クイン)」はここにいない。


 聞いたことないものね、キーリーとクインとルネ様が学園に入る前に知り合いだったってことは一言も。

 幼馴染とかそういう関係性って、少なくともオタク気質がある私は好きだから、幼馴染だったら確実にニキアス家との二次創作、およびファンアートは多いはず…………!


 これは私が確実にやらかしている。

 いや…………ゲームの中に「私」として入り込んじゃったってわけではなく、ゲームの中の「人間」として転生しているわけだから関係性が変わることは仕方ないってわかってはいる。


 わかってはいるんだけど………………

 アイデンティティが失われるのはさすがにまずい。


「な、泣きぼくろの危機だ」

「アンタさっきから何いってんの」

「ごめんね。悩ましい顔させちゃって。そういう顔も素敵だけど」

「え、なに? 何で息をするように褒めるの?」


 いまルネ様の疑問について答えているわけにもいかない。

 ともかく今は! ルネ様のアイデンティティを奪わないようにしなければ…………


 私は「ルネ・A・ヴィヴィアン」についての記憶を必死に漁る。


 大丈夫。ルネ様のオタクがいたんだから。

 自分とメンバーを信じるんだ、私。


 私は今までたくさん聞いてきたじゃないか。「誘拐事件」の妄想や考察、捏造、そして膨大な(18禁やBL含む)二次創作を。


 メンバーが大いに堪能し、時にファンの子とは一切繋がっていない裏垢にてリツイート祭りをし、時に夜明けまで私に語りに語っていたくらいなんだから何とかなる。

 大丈夫。私はこの場面を乗り切ってみせる……!!



 ただ、ひとつ問題があるとすればーーー……



「何が妄想で何が真実なのか全然わからない…………」



 私はぽつりと呟いた。

 ルネ様は不審者を見るような顔で私を見てる。


 これ聞いちゃダメだよね。


 もしかして今から乱暴されるの? とか。

 何かトラウマレベルなことされて、そこからそういう軽い男になってしまったとか。いや確実にそれは二次創作だな。さすがに。


 え、というかどこからどこまでが二次創作?

 どこからが真実?

 想像の力はとんでもないな、嫌いじゃないけどね?


「…………大丈夫なの、アンタ」

「大丈夫だよ。オタク特有のさも真実かのように妄想と持論を語る、その楽しさでこんな気持ちになるなんて……って思ってるだけだからね。ご心配なく」

「いやするわよ、心配。アンタの頭を」


 ちらりとルネ様に視線をやった私は、彼のその赤い瞳を見てハッとした。


「というかここで神様の姿になって、飛んで逃げればいいんじゃない?」


 ルネ様は確か神付きで、ケモノの姿では鳥だったはず。

 うちのメンバーも鳥のモチーフのものを集めていた気がするから、きっとそう。


 私が良い考えだと笑うと、ルネ様は怪訝そうな顔をした。


「……………………何で私が飛べるって知ってんの」


 おっと、これ…………

 やらかしちゃいました?




★★★


少しでも面白いなーと思ってくだされば

評価やブクマ、コメントいただけると嬉しいです!!

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