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21:コミュ障ヘビとの会話

「親戚の中では比較的歳が近いからさぁ、叔父様が来てくれてたんだよね。お話の時間用に」


 おチビちゃんの前に、とキーリーが告げる。


 私を抱き枕にでもするつもりなのか、身体ごとべったりともたれかかっているキーリー。

 義兄の重さにつぶれながらも、私は気にせず読書をする。


「ベタベタしてる信じられない僕が目の前にいるのに他人の視線を気にしないのか絶対に呪う呪ってやる呪うしかない」


 そしてそんな私達の前のソファで、ぶつぶつと文句をいい続ける叔父様…………


 文句をいいながらも視線はどこか遠くを見ているので全く合わないのも怖い。

 背筋をピシ! と伸ばして座ってるし、自信満々にも見えるし、着ている服も高級そうなのが見てわかるし、はたから見ると人と目を見て話せないなんて風には見えないっていうのになぁ。


「いうことはキッチリしてたんだよ。僕がキーリーにヒトの言語を教えてあげましゅ〜〜〜みたいな」

「キーリーのモノマネってさ、上手なんだけど多少悪意があるよね」

「甥っ子にバカにされてる最悪だナメられてる絶対に呪う呪うしかない何なんだあいつちょっと結婚したからって調子に乗ってやがる」


 私のモノマネも結構いつも悪意あるもんね。

 叔父様もキーリーの悪意を感じ取ったのか更にぶつぶつと呪いの言葉を吐き出していた。


 それはそれで怖いけども。

 しかしキーリーはさらりといってのける。


「いや愛しかねぇけど??」

「甥っ子だいしゅき…………」

「叔父様、チョロくない?」


 チョロいという点でもニキアス家だね!


「でも結局いまみたいにオレの方全然向かねぇし、一方通行でしか話さねぇし、意味がないってパパがていちょーーーに追い出したんだよな」


 叔父様はその時のことを思い出したのか、聞き取れないくらいの音量で何かぶつぶつといい続けてる。


 たしかにこういう風に呪文なのか、呪いなのか、それともただの独り言なのか? みたいなことをいわれてもなぁ。

 何かを話していることはわかっても、言語を覚えるには意味がなさすぎるもんね…………会話をしないと無意味って私も知らなかったから何ともいえないけど。


「でも少しは一緒に過ごした時間があったんだね。よかった」

「よかったぁ? なんでぇ?」

「私が行くまでキーリーはずっと独りだったんじゃないかって思ってたから。楽しい時間もあったんならよかったよ」


 ひとりは寂しいもんな。


 と、どこぞの魔法少女のようなことを思う。

 キーリーはそれを聞くとニタァと笑った。


「おチビちゃん大好き」


 とかいいながらほっぺたをつねられたのは何で?

 キーリーの愛情表現って痛みを伴うものが多い気がする、噛み付いたり…………とか。


 ヘビだからか?

 いやヘビの愛情表現が暴力的なのかは知らないけど……というか、ケモノの姿は人間性に影響を与えるんだろうか?


 見た目には影響与えるからあり得るのかなーーー?

 それなら私、シカとかの神様の血筋が羨ましいかもしれない。格好いいしキレイだから。


 上機嫌のキーリーを横目に私がそんなことで悩んでいると、前に座る叔父様がぶわーーーとつぶやき出した。


「キーリーは…………そりゃあ楽しかったのかもしれないな、何せ僕がお話をしてあげていたんだから楽しかったに違いない楽しくないわけがない。でも僕は神付きじゃないからヘビは怖かったけどね。キーリーは大きいし…………」

「あーーーもしかしてオレの悪口いってますぅ? 叔父様ぁ?? 悪口ならオレに聞こえるようにいってくんない?? ぶん殴るからァ」

「こわ義兄さんは絶対に育て方間違えてる絶対に無理だ仲良くなんてなれない怖すぎる呪うしかない呪おう」


 なんかキーリーと叔父様の会話ってアレみたいだ。

 ヤンキーに絡まれるオタク! 学生の時に見たことがある。


 一向に視線は合わないけど。


「キーリー、殴るのはダメだよ。手が痛くなるし」

「わかったぁ、蹴る方にしとく〜〜〜」

「ダメだよ、キーリー。そういう話じゃない」


 私がきっぱりと告げると、叔父様がため息を吐いた。

 何か悩ましげに。


「初対面の義理の姪っ子に助けられたんだけど。8つも離れてるのにダサすぎない僕? うわもうこれは死のう死ぬしかない生きててすみませんでした死にます」


 こんなことをいいながらも、もちろん叔父様と視線は合わない。


「攻撃力とか考えると硬い棒とか使った方がいいと思うよ、手とか足も痛くないし」

「………………え?」

「おチビちゃん天才じゃん」

「…………え?」


 あからさまに動揺をした叔父様は、私達の言葉が本気なのかを確かめるために明後日の方からこっちを向く。

 ようやく視線が合った、私はにっこりと笑う。


「やっと目が合った」

「う、うわあああああああああ石になる!!!!!」

「なんねぇーーーよバカじゃん」


 叫びをあげ、叔父様はクッションで顔を隠した。


 そこまで…………?

 ある程度は反応するとは思ってたけど、まさかここまでとは……


「ていうかオレ達でもこんなんなら貴族と交流するとかムリじゃん。叔父様が連れてってくれるんでしょ〜〜〜? そのためにいるんじゃねぇの? 帰る〜〜〜?」


 叔父様の反応が面白かったらしく、ヒャヒャヒャと声をあげて笑うキーリーのヤンキーっぷり。

 そういうところもステキだよ、楽しそうで何よりだね。


 なんて、心の中で思っていると、年下のガキンチョにやられっぱなしなことを不服に思ったのか、叔父様はクッションから顔を出した。


「僕をバカにするんじゃない!! お前達を連れて行くぞ!! 大人とはどういうものなのか見せてやる!!!」


 視線は明後日を向いてたけど…………

 叔父様はそういったのだった。





★★★



「これはこれはニキアス伯爵…………初めて紳士のお茶会にいらっしゃってくれましたね。いつ来てくださるのかとお待ちしておりましたよ」


 そして翌日、私とニキアスは叔父様に連れられて大きな屋敷にいた。

 スーツ姿の紳士がにっこりと笑う。


 部屋の中では他にもスーツ姿の男性達が楽しげに何かを話してる。

 というか、スーツ姿の紳士しかいない。コーヒーを飲んだり、難しい政治の話をしたりして。


 そこにはもちろん、子どもの姿はない………………


「………………もしかしてオレ達って保護者じゃね?」


 キーリーがぽつりといった。

 


 

★★★


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