01:長生きしてよ!
女の子は『プリンセス』にならなくちゃダメ?
絶対に?
「お嬢さん、君は笑っている顔が似合うよ」
例えば私みたいに
「髪の毛切った? 可愛いね」
女の子が『プリンス』になってもいいじゃない?
「キャーーーーー!!! プリンス!!!」
「結婚してーーーーー!!!」
「ありがとう、プリンセス。大好きだよ」
これは攻略対象よりイケメンの主人公が
圧倒的プリンスっぷりで無双していく話である。
★ ★ ★
「プリンス! 大好きです!!」
「ありがと。私も大好き」
「きゃーーーーー!!!!!」
この世に生まれ落ちて早二十数年……
今までの歴代あだ名は「プリンス」、「タカラ●カ」、「ス●パ●攻め様」……
少し悩んだこともあった。
けれど「むしろ特技は伸ばすべきでは!?」と考え、磨きをかけた結果……!
あれよあれよという間にスカウトやらグループ組んでやらデビューやら何やらがあり、今や私は男装アイドルとして生きていた。
ちなみに男装してるつもりはまるでない。
恋愛対象は男性だし、イケメンが好きだけど。
でも可愛い女の子も好きだから、存外楽しくハッピーに生きていた。
そんな最中……
「今日、こうやって、プリンスとチェキが撮れるの、ほんと、ほんと嬉しくて!」
「私も嬉しい。凄く可愛くして来てくれたんだね、ありがと」
「プリンス♡」
「モブ子!!! お前、俺との結婚資金を全部その男女に溶かしやがったのか!!!?」
「モ、モブ男!!! アナタとはもう別れたじゃない!!」
何かよくわからない男が乱入して来て……
「お前を殺して俺も死ぬ!!!!」
「やだ!!! やめて!!!」
ナイフを持って私のファンに襲いかかって来て……
「プリンセス!!!!」
ファンをかばった結果。
「いやーーーーー!!!! プリンスーーー!!!!!」
悲鳴が遠くで聞こえる……
聞こえる、聞こえる、聞こえる……
『ということで、残念ながら貴女はお亡くなりになりました……』
「オウ…………」
私は呆気なく死んだのだった。
しかしどうやら私のこの死は全くもってのイレギュラー。
次の人生は決まっているのに、それにしては私の死は早すぎたらしい。
そのため、あの世では全く準備ができてないとか何たらかんたら。
ということで!
金髪美少年天使くんがいうには、良い行いをしたのでご褒美も兼ねて!
次の生まれ変わるための準備が整うまで好きなゲームの中のキャラクターに転生して自由に過ごしていいよ、ということになったのだった。
「好きなゲームでいいの?」
『もちろん! 乙女ゲームのヒロインになって、イケメンに愛されちゃってください!』
なんて天使くんはいう。
『ハッピーエンドにならないとダメですからね! あの世の準備が整うまで、ながーーーく生きてもらわないとダメなんですから! 間違っても悪役令嬢に断罪されてしまわないように!!!!』
ヒロインなんて私には似合わないと思うけど……
それでもイケメンに愛されるのは悪くないな!
『それにしても多いですね……全部乙女ゲームですか!?』
「どんな言動で女の子はキュンとなるのか研究したくて」
『そういう視点でゲームをしている人は少ないと思いますけどね!?』
そんな会話をしつつ、私は好きなゲームのヒロインに転生し…………
『何でヒロインなのに……!! 悪役令嬢含めて女の子の好感度MAXになって!! 私以外を愛する貴女はいらないわ!! とかいって悪役令嬢に刺し殺されてるんですか!!!! 王道学園乙女ゲームがヤンデレ百合ゲームになっちゃったぁああああ!!!!』
また殺されました。
嘆く天使くんの肩をポン、と叩き、私は微笑む。
「イケメンでごめん!」
天使くんはガシ! と私の胸元を掴む。
ぶんぶんと私の頭を振り回しながら、天使くんは叫んだ。
『あの世の準備ができてないから!! でも地球では死んじゃったから!!! ゲームの世界で時間潰してくれっていってるんですよ!!!! イケメンさを発揮して殺されるなああああああ!!!!』
めちゃくちゃ怒られた。
けれど……
『今度はアレですか……イケメンすぎて王子様から婚約解消……』
「私の人生を憂だ父親が屋敷に火をつけて無理心中した」
『何で全部バイオレンスなゲームになっちゃうんですかぁあああああ!!!! 人間怖いいいいい!!!』
天使くんにトラウマを植え付けたところで。
私たちは気付いたのだ、圧倒的に私はヒロイン向いてない。
なんなら悪役令嬢も向いていない。
ヒロインが私を愛しすぎて破滅した。
『わかりました……! よーーーーーくわかりました!! このゲーム……このゲームにしましょう!!』
血走った目の天使くんが指さしたのは【スパークリング・カラー】。
光の勇者になるとかそういうゲームだっけ、ダウンロードして初回特典で貰えるガチャを回しただけでやってないゲームだ。
『こ、このゲームだけは嫌だったんですけど……!! 背に腹はかえられません!!』
なんで?
私が尋ねる前に天使くんは私を指差す。
『次こそは!! ぜーーーーったいに長生きしてくださいね!! 次の貴女はヒロインでも悪役令嬢でもないんですから、次こそはーーーー……!!!』
天使くんの声が遠くなる。遠くなる。遠くなる。
ヒロインでも悪役令嬢でもない?
じゃあ次の私は………………
「なんだろうなぁ」
★ ★ ★
「なるほど〜! ヒロインのお友達兼お助けキャラね」
生まれ変わった私は鏡を見ながらつぶやいた。
鏡の中にいる新しい「私」。
黒髪おさげ、重たそうな前髪とぐりぐりメガネで顔はほとんど見えない。
身長が高くて女性らしさはそんなにない。
これが私。
「ヒロインの友達(お助けポジ)」としての。
さて。私は次こそ長生きできるかな?
★★★
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