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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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コッパヤクニーンの弁明

「特殊工作部隊の嫌がらせが激しくなったので、私は王女様を信頼できる者に託し、他の場所へとお逃がししました。しかし私は……」

 元参ノ国の鍛治師オーボエの独白は続く。


「ナカノ国の連中に復讐してやろうと思ったんだ!!!」

 感情を爆発させるオーボエ。


「わかるワ、その気持ち」

 ホニーが共感する。


「そうね、その気持ち、本当によくわかるわ」

 アイシューも共感する。


「………………………………」

 ミミーは寝ている。


「おい、ちょっと待てよ。家畜泥棒をするのが復讐か? 目には目を、歯には歯を、嫌がらせには嫌がらせをってつもりなのかも知れないけど——」

 俺は口を開いたが、俺の話をさえぎり、またホニーが……


「ネエ、それって、カイセイの世界のスっごく強い埴輪はにわが覇権を握って、埴輪覇王はにわはおうになったってこと?」


「……『歯には歯を』だよ。そんなおっかねえ埴輪なんか見たことネエし、埴輪が王様になった国になんて住みたくネエよ。それ以前にお前、埴輪まで知ってんのかよ……」


 ホニーのバカは放っておいて、っと。



「コホン、すまない。それで、嫌がらせには嫌がらせをってつもりなのかも知れないけど、泥棒は嫌がらせの範囲を超えてると思うぞ?」


「それは…… 確かにその通りです。私もカッとして、後先のことを考えず…… 黒いフードを被った男の口車に乗せられてしまったようです。申し訳ない」

 オーボエが反省の言葉を口にした。


「チョット、カイセイ。確かにオーボエたちはやり過ぎたかも知れないワ。でもね、コイツらのやり口ときたら……」

 忌々しそうに3兄弟を睨みつけるホニー。


「ヒトスジー嬢のおっしゃる通りです——」

 今度は鍛治師たちのリーダー各、ヒャクネンタ=テモ・ユルサネエが声を上げた。


「——ある日突然、ナカノ国の王から王女様を招聘する通達が届いたのですが、それを断って以来、コイツらは来る日も来る日も嫌がらせばかりして……」

 なんか日本でいうところの、昔の悪徳地上げ屋みたいな感じなのかな。


 ユルサネエの発言を皮切りに、他の鍛治師たちの口からも、特殊工作部隊に対する怨念のこもった言葉が飛び出した。


「近所に一軒しかない雑貨屋さんから、コイツらは金にものを言わせて、食べ物を全部買い占めやがって」

 ああ、それは困るだろうな。なんせアジトがあった場所は、陸の孤島みたいな場所だったからな。


「それから、昼夜を問わず我らの研究所の前で大声で叫んで逃げて行ったり……」


「ピンポイントダッシュだったかしら。アタシもよくやられたんだからネ!!!」

 怒り心頭のホニー。

 確か、対象にする家をピンポイントで選び、その前で大声を上げる嫌がらせだったっけ?

 まったく、子どものイタズラだな。


「それから、夜中こっそり玄関の前に、犬のウンコを置いてやがったこともあったな」

 ……それは本当に子どものイタズラだよ。

 何やってたんだ、特殊工作部隊?



「 でも一番許せなかったのは—— 」


 怒りで身体をプルプルと震わせながら、ユルサネエがつぶやく。

 なんだ? よっぽど腹に据えかねることなのか?



「「「「「「 可燃ゴミの日に不燃ゴミを出しやがったことだ!!! 」」」」」

 鍛治師たちの声が揃ったんだけど……

 …………ま、まあ、人の怒りのツボはいろいろだからな。



「もう! カイセイさんったら、『なんだそんなことか』みたいな顔してるけど、あれ、本当に腹が立つんだから!」

 今度はアイシューの怒りに火がついたようだ。

 アイシューは、今度は本当に、ジロリと長兄セッカチーを睨みつけた。


「ま、待って下さい——」

 慌てた様子で、セッカチーが口を開く。

「——た、確かに俺は可燃ゴミの日に不燃ゴミを出しました。でも、俺は弟たちと違って、聖女様にご迷惑はかけてませんよ!? 俺たちに味方してくれた代官と反目する、商会長と聖堂長の住居の前に出しただけですから!」


「聖堂長の住居って、聖堂会の建物のことでしょ! 私もそこに、他の聖堂士と一緒に住んでいることぐらいわからなかったの!?」


「あ……」


 セッカチーはやっぱり、せっかちだな。


「ゴミの後片付けは、私たち聖堂士がやらされてたんだから! ゴミ袋の中身を確認して、一つひとつ分別するのよ!? そ、そのうえ、その中に入っているものと言ったら……」


 あっ、アイシューの頬が赤く染まった。

 セッカチーのヤツ…… きっとイカガワしいものとか入れてたんだな……


 あっ、アイシューが水魔法の詠唱を始めた。

 これは、中級魔法の詠唱だ。


「反省しなさい!!! 『スノーシャワー』!!!」

 おっ、これは俺の得意技のひとつ、雪を降らせて相手の体温を奪い動けなくする中級水魔法じゃないか。

 なんだよ、アイシューのヤツ、いつの間に練習してたんだよ。

 アイシューは本当に真面目なヤツだよ。

 アイシューの勉強熱心さには頭が下がるな。


 なんて感心していたところ、3兄弟がなにやら言っているようだが……



「お、お助けを……」

「寒い…… 何か温かいものを……」


「バナナで釘は打てないぞ?」

 俺は先手を打って口を開く。


「…………いんちき魔導士様、俺の台詞を先に言わないで下さい……」


 セッカチーが何か言ったが放っておこう。



 ♢♢♢♢♢♢



 ナカノ国の兵士たちは、丘のふもとあたりまで後退し、俺たちのことを遠目で眺めているだけだ。

 だから今のうちに早くここから立ち去りたいのだ。

 でも、さっきからヤクニン3兄弟は必死に弁明を続けていて、なんとなく帰りにくいんだよ……


 まあ、ホニーやアイシューが怒ってるから、コイツらにとっては生死をかけて弁舌を振るってるつもりなんだろうけど。



「俺だって、特殊工作部隊の隊長になったのは、本当に偶然なんです! なりたくてなったんじゃないんです!」

 こう言ったのは、次兄のコッパヤクニーン。


 コッパヤクニーンの話によると、コイツはもともと、アイシューが住んでいたミズーノの街と国境を接した隣の街で、衛兵として勤務していたそうだ。


 ある時、コイツが勤務していた街が水不足となり、住民たちがとても困るという事態が生じた。

 そんななか、隣国で水の聖女と呼ばれていたアイシューがやって来て、得意な水魔法を使いこの地域の水不足を解消したとのこと。


「その時、俺も聖女様が生成された水飲んだんだ。いやぁ、あれは正に『聖水』って感じで美味かったですよ」


 あっ、アイシューがちょっと嫌な顔をした。

 まあ、自分が水魔法で生成した水を飲んで『美味かった』なんて言われたら、ちょっとセクハラされてる気分になるんだろうな。


「あんまりにも美味かったんで、俺は是非、王様にも飲んでもらいたいと思って、聖水を樽に入れて王都まで運んだんですよ。そしたら、王様ってば大喜びで。その功績を讃えられて俺はヒトスジー領担当の、特殊工作部隊に栄転ってことになったんです」


「なんで王様は大喜びしたの?」

 アイシューが尋ねと……


「え? ご存知ないんですか? 王様は水の聖女アイシュー様の大ファンだからですよ」

 へえ、アイシューって、人気あるんだな。

 アイシューのヤツ、満更でもない表情だ。

 ホニーがイラッとした表情になった。


「ああ、もちろん、王様は炎の令嬢様のことも大好きですよ」

 今度はホニーが満更でもない表情になった。


「それから参ノ国の王女様のこともお気に入りですから」


 なんか気の多い王様だな。

 でも…… 俺はちょっと気になった点を、コッパヤクニーンに尋ねてみた。


「ナカノ国の王様は、アイシューにもホニーにも会ったことないんだろ? まあ、王様が強い女魔導士に憧れるって気持ちはわかるんだけど……」


「王様は王室お抱え絵師を密かに3名の元へ派遣され、肖像画を描かせていたんです。ですので、皆様の容姿や体型は把握しておられました。そしてなんと! 3名の方々は、王様の女性の好みにピッタリだったのです!」


「女性の好みって、まさか……」

 なんだか嫌な予感がする。


「そうです! 王様は幼女と少女の間ぐらいの女性が大好きなのです!」


 ハァ…… 俺に火の粉が降りかからないことを祈ろう。

 それにしても、王様の恋愛ストライクゾーンは、えらく狭いんだな。

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