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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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3人目の中級魔導士は

「ホニー殿、どうか隣にいる男にも火魔法をブチかまして下さい!」


 ホニーの後方から声が上がった。

 元ナンバーズ諸国の鍛治師、オーボエの声だ。


 オーボエをはじめとする鍛治師たち6人は、シーナ、シオス、ブブさんたちに守られながら、ホニーたちの後方で待機している。


「隣にいる男は、我々の地域担当だった特徴工作部隊隊長です! コイツら、俺たちに散々嫌がらせしやがって……」

 オーボエの話の途中あたりで初級火魔法の詠唱を始めたホニーは、なんのためらいもなく隣の男に火魔法を放った。


「熱ッ! アッッッ、ツウウウゥゥゥーーー!!!」


 あーあ、またモッハベルトの出来上がりだよ。


「おい、ホニー。せめて話ぐらい聞いてからにしろよ……」

「フンッ! まったくカイセイは甘いんだから! 特殊工作部隊ってわかった段階で、『頭チリチリの刑』、確定なのヨ!」

 なんだよ、その小学生みたいな嫌がらせ? お前、ひょっとしたら特殊工作員に向いてるかも知れないぞ?


「ち、違うのです! 聞いてください——」

 新たに頭がチリチリになった男が叫び声を上げる。

「——俺は特殊工作部隊のバカみたいな仕事なんて、本当はやりたくなかったんだ! それなのに…… そうだ、隣にいる我が次兄、コッパヤクニーンが全部悪いんです! 」


 コヤクニーン改めセッカチーの弟の名前はコッパヤクニーンという。俺はさっき、『人物鑑定』スキルで確認していた。なんだかややこしいけど、流石は自動翻訳機能さん。コイツらの社会的ポジションがよくわかりますよ。まあいいや、それから?


「コッパヤクニーンの兄貴がヒトスジー領の特殊工作部隊になって手柄を上げたばっかりに、俺やコヤクニーンの兄貴まで、『ま、兄弟なんだから、おんなじような働きが出来るでしょ』みたいな軽いノリで、特殊工作部隊に人事異動させられちまったんですよ!」


「ああもう、ややこしいわネ。ちなみにアンタの名前はなんて言うのヨ!?」

 ホニーがイライラしながら、今話をしている一番下に弟の尋ねると、


「カキュウーヤクニンです」

と答えた。


 そうなんだよ。俺はなんとなく『コイツもあんまり使えないヤツなのかな』とか思ってたんだよ。



「おい、勝手なことばっかり言うんじゃねえよ——」

 今度は元ヒトスジー領担当で、ホニーを苦しめてきた次兄コッパヤクニーンが声を荒げる。

「——お前、俺のおかげで昇進できたって、喜んでたじゃねえか!」


 あー、もう。なんでここで兄弟喧嘩が始まるんだよ。

 そんな中、長兄セッカチーが弟たちの喧嘩の仲裁に入るが……


「おい、お前たちいい加減にしないか。いんちき魔導士様の御前だぞ」

 そのいんちき魔導士っていう呼び方、いい加減やめてほしいんだけど。


「いんちき魔導士様はじめ、皆さまには我が弟たちの醜態をお見せしてしまい、誠に申し訳ありません。もともと我々3兄弟は仲が良かったのですが……」


 流石、長男って感じだ。なんだかんだ言って、3兄弟の中では一番しっかりしてるんだな。弟たちが争ってるところなんて見たくないんだろう。


「皆さまに一つだけ、お伝えしたいことがあります」

 キリッと引き締まった顔で言葉を放つ長兄セッカチー。


「なんだよ、言ってみろよ」

 その弟想いの心に免じて、なんでも聞いてやろうじゃないか。


「結論を申しますと、一番悪いのは、ヒトスジー領担当のコッパヤクニーンです」


「……………………え?」



「我が末弟カキュウーヤクニーンが申しました通り、コッパヤクニーンせいで、俺まで特殊工作部隊なんかに飛ばされちまったんですよ! カキュウーヤクニーンは階級が上がったからまだ良かったのかも知れねえけど、俺は元の階級のまま飛ばされたんだよ!」


「それは兄貴の階級が元々高かったから——」

 次兄コッパヤクニーンが反論を試みるが……


「ウッセイ! お前のせいで、俺はここまで踏んだり蹴ったりだったんだよ! バカなお前のおかげで、俺は今でも水の聖女アイシュー様に、ずっと睨まれてんだよ! ほれ見ろ、聖女様の視線。メチャクチャ怖いだろ?」


「…………私、別に睨んでなんていないんだけど」

「ヒ、ヒイィィィ! お、お助けを!」

 何やってんだか……

 でもお前ら、お笑いの観点から見ると、意外と良いコンビなのかも知れないぞ?


 でもなぁ……

 ここは心温まる兄弟愛の話になるんじゃなかったのか?



「なんだよ! なんでもかんでも俺のせいにしやがって! 俺だって…… ア、アッッツウウゥゥゥーーー!!! ヒ、ヒトスジー嬢、どうかお許しを!!!」

 ホニーがまた、次兄コッパヤクニーンに向け、初級火魔法を放った……


「……アンタ、ウッサイのヨ。チョット黙りなさい」


 うわぁ、ホニーのヤツ、メチャクチャ怒ってる。

 そりゃそうか。ここまでの話を聞く限り、一番功績をあげたのはヒトスジー領担当の次兄コッパヤクニーンのようだからな。

 ということは、ホニーのヤツ、相当酷い目に遭ったんだろう。


「チョット話を整理しましょうヨ。まずはオーボエ。アンタたちは死者の復活とか、いろいろ怪しげなことをしてたんでしょ? それなら特殊工作部隊から横槍を入れられても、仕方ないんじゃないの?」

 どうしたんだろう、ホニーのヤツ。なんか急に場を仕切り出したぞ? まあいいや。ここはホニーを見守ることにしよう。


「実は…… その者たちの目的は我々の研究を邪魔することではなく……」

 そう言うと、オーボエは他の鍛治師たちの様子をうかがった。

 鍛治師たちは全員無言で頷いた。

 何か秘密の話でもあるのだろうか。


 覚悟を決めた様子でオーボエが口を開く。

「私は旧ナンバーズ諸国『参ノ国』の者です」

 確か壱、弐国はニシノ国に併合され、肆、伍国はナカノ国に併合されたけど、参ノ国は今でも独立を保ってるって話だったな。


「そして私は参ノ国の元貴族でもあります。実は今でも参ノ国の王族や貴族とは繋がりがありまして……」

 ためらいながら話をするオーボエ。


「ああ、なんとなくわかるワ。実は参ノ国のエライさんたちも、裏でアンタたちの研究を支援してたとか、そんな話でしょ? よくある話ネ。いいわヨ、もう終わったことなんだから。アタシは聞かなかったことにしてあげるワ。カイセイも、それからシーナ王女とシオス王子も、そういうことにしておいてくれない?」


 キタノ国のシーナ王女とシオス王子は無言で頷いた。

 シーナは早く話の続きが聞きたいようで、『そんなことどうでもいいから、早く次に行って』みたいな様子で、体が前のめりになっている。


 もちろん、俺にも異存はない。いや、異存はございません。

 俺、これからホニーのことを、ホニーさんって呼ぼうかな。


「ありがとうございます、皆さま。では話の続きを致します。ある時ニシノ国から、参ノ国の王女を人質に差し出せという要求があったそうです。参ノ国の王女は中級魔法を使える魔導士でもありますので…… 要求を跳ね除けたい参ノ国の王ではありましたが、なにせニシノ国は大国。断ることは容易ではありません。そこで王は、王女が行方不明になったということにして、密かに王宮から逃がしたのです。時間を稼ぎたかったのでしょう」


「なるほどネ。それでオーボエがその王女サマを匿ってたってわけネ」


 あっ、思い出した。確かクローニン侯爵は、ナカノ国の王は3人の中級魔導士を狙っていたって言ってたな。

 アイシュー、ホニー以外の中級魔導士って、参ノ国の王女様だったのか。


「ホニー殿のおっしゃる通り、私が王女様を匿っていました。ですが王女様の情報をつかんだナカノ国の者共が、そこにいるゲス野郎どもを使い、あの手この手で王女様を拐かそうとして……」


 その瞬間、ホニーの初級火魔法が3兄弟に襲いかかった。


「ちょ、ちょっとなんで俺まで!」

 長兄セッカチーが叫ぶ。モッハベルト3兄弟の出来上がりだ。



 でも、ホニーのヤツ、ちょっとやりすぎじゃないか?

 ミミーがこんなの見たら、きっと教育上よくないはずだ。


 と思い、ミミーに目をやると……

 退屈したのか、アイシューにもたれかかって寝てるじゃないか。


 隣にいるアイシューと目が合った。

『ミミーちゃんは寝てるから大丈夫。ヤっちまいなさいよ!』

 そんな目をしていた。

 アイシューはセッカチーに対して、ホント、容赦ないな……


 うーむ…… ではしばらく、静観することにしよう。

 セッカチーよ、後でちゃんとヒールをかけてやるからな。

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