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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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人質大好きナカノ国

 今度こそ、ここから立ち去ろうと、俺は風魔法で上昇気流を作り出したのだが……


 なにやらナカノ国の兵たちがザワついている。

 どうやら援軍が到着したようだ。


 なんかエラそうな態度のおっさんが、こっちにやって来たよ。

 雰囲気から見て、援軍を率いて来た指揮官のようだ。


「投降しろ。こちらには人質がいるのだ!」

 俺たちに向かってそう言いながら、指揮官のおっさんが指差したのは——


 縄で体をぐるぐる巻きにされた、コヤクニーン改めセッカチーだった……



「知らない人だから、放っておきましょう」

 あっ、聖女アイシューが腹黒アイシューに戻った……


 まあ、セッカチーはアイシューを騙してナカノ国に連れ去ろうとしたからな。

 アイシューも、もう、怒ってはいないと思うんだけど……

 たぶん、アイシューにとってコイツは、俺やホニーと同じように、『腹黒ワードをぶつけてもいい人カテゴリー』に入ってるんだろうな。

 セッカチーよ、光栄に思うがいい。


「チョット、アイシュー。アンタ心が狭いんじゃないの? 過去のことをいつまでも引きずってないで、サッサとソイツを解放して、ここから立ち去りましょうヨ」

 おっ、ホニーのヤツ、たまにはいいこと言うじゃないか。


「……それって、単にホニーが早くヒトスジー領に帰りたいだけじゃないの?」

「うっ……」


 ……なんだ、そういうことか。

 でも、流石アイシュー。ホニーのことをよくわかってるな。

 ちょっと感動してしまった俺は、まだまだホニーのことがわかってないのかな?



「あの、お取り込みのところ申し訳ないんですが…… そろそろ助けてもらえませんか?」

 困り顔のセッカチーが控えめに口を開く。

 ああ、そう言えばそうだな。俺はセッカチーに向けて言葉を投げかける。


「おい、セッカチー。お前、国軍に捕まるのが本当に好きだな。前にもこんなことがあったよな? それからお前、軍を抜けたんじゃなかったのか?」

 俺はコイツが軍人を辞めたこと、更には公務員じたいも辞めたことを、ナカノ国のジンセイ=ズット・クローニン侯爵のお付きの人から聞いていたのだ。


「それが……」

 セッカチーの話によると、コイツは軍を辞めていったん故郷に帰ったそうだが、近所の人たちに、俺やアイシューたちパーティメンバーのことを自慢しまくっていたらしい。『俺はスゴイ人たちと一緒にいたんだぜ』、みたいなことを言って。


 そしたら、それを聞きつけた憲兵に、扇動罪だか国家転覆罪だかで捕まったそうだ。

 まあ、魔法で山を吹き飛ばしたとか空を飛んだとか、そんなこと言ってたら、妄言を振りまく危険分子だって思われてもしょうがないか。


 うーむ…… 俺たちのことを自慢に思ってくれるのは嬉しから…… やっぱり、ここはひとつ、助けてやることにするか。


 俺がそんなことを思っていると——


「やはり先発隊からの報告に間違いはなかったようだな——」


 俺とコヤクニーン改めセッカチーとのやり取りを聞いていた指揮官のおっさんがが口を開いた。


「——キサマらは風魔法を使って、空を飛んで来たというではないか。やはり、コヤクニーンが自慢していた人物と同じようだ。しかし…… まさかコヤクニーンの言っていたことが真実だったとは……」

 だから仲間だと思われて連れて来られたのか。なんだか災難を背負い込むのがお得意な男だ。



 俺はまた風魔法を使い、セッカチーの近くにいたナカノ国の兵士たちを吹き飛ばした。言うまでもないが手加減している。


 それを見て、コヤクニーン改めセッカチーが上半身を縄でぐるぐる巻きにされた状態のまま、こちらに駆け寄って来た。


 しかし——


「おい、コヤクニーン! お前、家族がどうなってもいいのか!?」

 俺の風魔法で吹っ飛ばされ、更には尻もちまでをついているのに、態度だけは一人前の指揮官のおっさんが叫んだ。


「ハン! 残念だったな。俺は現在、花嫁募集中の身なんだよ! それから俺の両親は、もうとっくに国外に逃したんだ!」

 そう言ったコヤクニーン改め…… ああ、もうメンドくせえな、とにかくセッカチーを見て、ニヤリと笑うおっさん。


「こんなこともあろうかと、お前の弟たちをここに連れて来ているのだ。おっと、どこにいるのかは秘密だがな」


 おっさんの言葉を聞いたセッカチーがワナワナと震える。そして——

「汚ねえぞ! アイツらは国軍の兵士だぞ! 国のために必要だろうが!」


「国軍の兵士? 違うな、裏切り者の家族だ」



 ちなみに…… 俺は、さっきからとてもイライラしている。

 指揮官のおっさんの言葉を聞いて、更にイライラしてきた。

 コイツら、いったいどれだけ人質を取れば気がすむんだよ。


「この人たち、口を開けば人質ばかりで…… 本当に許せないわ——」

 俺と同様の感情を抱いたアイシューが、腹立たしげにつぶやいた。

「——あっ、でも、そこにいる元人質の人はどうでもいいんだけど」

 ちょっと気まずそうに言葉を添えるアイシュー。

 そう、アイシューは照れ屋さんなのだ。



「おい、セッカチー、ついて来い!」

 俺はそう言うと、火魔法を使いセッカチーの体を拘束していた縄を焼き切り、セッカチーを連れて、風魔法で作った気流に乗り上空へと飛翔した。


「アイシュー、ホニー、ここは頼む! 念のため、ウォーターウォールとファイヤーウォールで防御を! ミミーは臨戦態勢で待機だ。コイツらレベルが高くないから、やり過ぎるなよ!」


「オウっ!」

「はいっ!」

「おおっ!」

 おっ、なんかパーティらしくなってきたな。



♢♢♢♢♢♢



 俺とセッカチーは上空を舞っている。

 俺の横で若干不安そうに空を飛んでいるセッカチーが、さっきからずっと俺の方を見ている。

 なんだ、礼でも言いたいのか?


「いいってことよ。俺は当然のことをしたまでで…… って、なんだ? なんだよその目は?」


「あの…… 次から縄を切るのは火魔法じゃなくて、風魔法を使ってもらえませんか? あれ、結構熱かったんですけど……」


「……テメー、ここから突き落としてやろうか?」



 俺は若干気分を害されながらも、上空から、ユニークスキル『広域索敵』と『人物鑑定』を使い捜索を開始。

 程なくして、ナカノ国の兵士たちの中から、セッカチーの弟二人を見つけ出した。


 風魔法を使って二人を上空へ引き上げ、助けてやったんだけど……


「ヒ、ヒィイイイ! お、お助け下さい!」

「お、お願いです! 俺たちを、もとにいた場所へ帰して下さい!」

 必死に懇願する二人。


 なんだよ、せっかく助けてやったのに。

 ひょっとして、自分たちが人質になってたってことに、気づいてなかったのか?

 それとも、空を飛ぶのが怖いのか?


 まあいいや、とにかくみんなが待つ丘の上に戻ろう。

 ホニーとアイシューが生成した魔法の壁を見てビビっているヒガシノ国の兵士たちは、遠巻きにホニーたちを眺めているだけだ。

 よし、安全は確保されているな。


 俺、セッカチー、弟二人の計四人が丘に到着し、地面に足をつけた瞬間——


 あっ、ホニーが初級火魔法の詠唱を始めた。

 ホニーの初級火魔法が、弟のうちの一人に命中。


 何やってんだ、ホニーのヤツ?

 威力は弱めにしていたようで、命に別状はないようだが……

 魔法を受けた弟の頭がチリチリになっている。


 久しぶりだな、このヘアースタイル? を見るのは。

 音楽室の壁にかかってる音楽家の肖像画みたいだよ。


 なんだっけ、モッハベルトだっけ?

 そうそう、確かモーツァルトとバッハとシューベルトが混ざって…… って、前にも言ったけど、この情報、ホント、どうでもいいな。


「おい、何やってんだよ、ホニー? コイツらは——」

 俺の言葉を遮り、ホニーが憎々しげに言葉を吐き出す。


「ソイツは、ヒトスジー領担当特殊工作部隊の隊長ヨ……」


 あっ、そうか。確かセッカチーは、ヒトスジー領で住民に嫌がらせをしてたのは、自分の弟だって言ってたな。


「お、お助けください! 今は心から反省しています! どうかお慈悲を!」

 なるほど。だからここに来たくなかったのか……

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