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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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年長者の矜持

「コテラさん! オレっち、コテラさんが急にいなくなって、心配してたんだゾ!」

 上空から舞い降りたミミーはそう言うと、変なお面を被って旅人のフリをしようと頑張っているコテラこと…… ああ面倒くせえ! とにかく女神様目掛けて駆け寄り、その胸目掛けてダイブした。


「ごめんなさいね、ミミーさん…… 黒いフードを被った男が危険だと思ったから急いじゃって……」

 ミミーを抱きしめ、優しい笑顔を向ける女神様。


 やっぱり女神様が自信満々で追いかけたくせに取り逃がしたのは、黒いフードの男だったんだ。俺のユニークスキル『広域索敵』でも、その男を捕捉することが出来なかった。どうやら一筋縄ではいかない男のようだ。


 それにしても…… あーあ、せっかく女神様からミミーを取り戻せたと思ったのに。

 まあ、それは置いといて……


 でも、いいんですか女神様? あなた、今はただの通りすがりの旅人設定じゃないんですか?

 変なお面で顔を隠してるって設定でしょ?


 ほら、シーネ王女なんて絶対女神様のお面を見ようとしないし。

 さっき一瞬見たとき爆笑しそうになって以来、半笑いの状態でずっと地面を見てるし。


 まあいい。とにかく女神様とミミーのことは気にしないことにして、俺は他のメンバーたちにこれまでの経緯を話した。


 その上でシオス王子が悪魔教徒…… いや、もう元ナンバーズ諸国の鍛治師たちと言った方が良いのかな? とにかく彼らに向けて質問を始めた。


「あなたたちは、キタノ国の法に背くような行為を行いましたか?」

「いえ…… 魔道具を作っていましたがそれ以外のことは特に……」

 リーダーの男が答える。年の頃は50代ぐらいだろうか。

 ちなみにこの男の名前は、ヒャクネンタ=テモ・ユルサネエというそうだ。

 全くもって恨みがましい名前だ。


 王子の尋問は続く。

「これはナカノ国の問題だと思うのですが一応尋ねます。あなたたちはナカノ国で家畜を盗んだのですか?」

「いいえ…… 放牧地に到着する前に、ここで軍に包囲されました」

 そりゃあ、あんなに怪しい魔道具を持ってたんだ。日本で言うところの職務質問ぐらい当然されるよな。


「では、特に国家に対する罪は犯していないということになりますね。この魔道具を作ったことをどう捉えるか…… これはこの世界全体にかかわる問題だと思いますので、やはり女神様にお決めいただくのが一番良い方法だと思いますがいかがでしょう」

 そう言って俺を見つめるシオス王子。

 ちなみに、リーダーのユルサネエはシオスがキタノ国の王子だと知り大変恐縮している。


 恐縮しながらユルサネエは話し始めた。

「いえ、覚悟は出来ています。そこにおられる女神様のお言葉をうかがうまでもなく——」

「旅人です!」

「ああもう、チャチャ入れるなよ、女神…… いや、旅人さん。そこ、どうでもいいトコでしょ? ちょっと黙っててもらえませんか?」

 ムスッとした女神様は放っておいて、俺はユルサネエに発言の続きを促した。



「えっと…… 旅人様のお話をうかがうまでもなく——」

「ムムっ? コテラさんはコテラさんじゃないのカ?」

「コテラですよ?」

「ああ、また余計なこと言って! 二人とも、人の話は最後まで聞きましょうって、先生に教えてもらわなかったのか?」

 俺は再度、ユルサネエに発言を促す。


「えっと…… 旅人のコテラ様のお言葉をうかがうまでもなく——」

「ムムっ? コテラさんは旅人だったのカ?」

「旅人なんですけど、その実体はコテラなのです。でも私の正体は秘密なのです」


「おい、もうやめてあげろよ! ミミーはともかく、そこのヒョットコっぽいお面を被ってる人は、ワザとやってるだろ? ユルサネエが困ってるじゃないか。今日に限っては、そこにいる人は『旅人』ということにする。今日はそういう設定だからな、わかったかミミー? じゃあユルサネエ、続けてくれ」


「こ、これはかたじけない。えっと…… なんの話をしてたんだっけ?」

 ほら、話が進まなくなってきたじゃないか。

 そんなことを思っていると——


「あー、もう、ウットオシイわネ——」

 イライラした様子でホニーが口を挟んできた。

「——罪がどうとかよくワカンナイけど、アンタたちはアタシたちに借りが出来たの。アタシたちはアンタたちをナカノ国の兵士から守ってあげたでしょ? これが一つ目の貸しネ」

 コイツらを守ったのは俺なんだけど…… まあいいや、それから?


「アンタたちは人を殺すつもりはなかったかも知れないけど、さっきは結構追い詰められてたでしょ? ひょっとしたら自分の身を守るために、魔道具を使って反撃することになってたかも知れないワ」

 まあ確かにその可能性は否定できないな。


「だからアタシは、アンタたちが罪なき人を殺すのを止めてあげたの。これが二つ目の貸しヨ」

 おいホニー。いつのまにか主語が『アタシたち』が『アタシ』に変わってるぞ?



「更に、アタシはアンタたちのために時間と労力を使ってここまで来てあげたの。当然、人件費と交通費が発生するでしょ? これが3つ目の貸しネ」

 ……当然なのか? それは経費として計上出来ないのか? でも経費なら払うのは俺になるのか? ああもう、何言ってんだ、俺。

 それにお前、今日はここまで、まだなんにもしてないぞ? 風魔法を使ってみんなを連れて来たのも俺じゃなかったけ?


「だからアンタたちは、『聖剣』を作ってアタシたちにその借りを返しなさい!」

 あ、そうだった。俺たちは聖剣を作ってもらうためにここまで来たんだった。


 ホニーのヤツめ…… ちゃんと俺たちの目的を忘れないでいてくれたんだな。

 でも、本当ならその台詞は俺が言わなきゃならないはずだ。

「ホニー、悪かった。なんだかホニーに嫌な役を押し付けちゃったな」


「フン、別にたいしたことじゃないワ。女神様やカイセイは優しいから、きっと『許してやろう』とか言うでしょうから。いい? 善悪と貸し借りは別よ?」


 ああ、わかってるよ。よし、ここは年長者でリーダーの俺が、ビシッと言ってやろう。

「改めて俺の口からハッキリ言わせてくれ。旧ナンバーズ諸国の鍛治師たちよ。俺たちには新しい『聖剣』が必要なんだ。だからその…… 命令というわけじゃないんだけど…… そう、取引だ。俺と取り引きしてくれ。お前たちを助けた対価として、俺はお前たちに聖剣作りを、その…… 頼みたいんだけど……」


「チョット! 全然ハッキリしてないじゃないのヨ!」


「いえ、なんとなく事情は察しました——」

 リーダーのユルサネエが口を開く。

「——そこに旅人様…… でよろしいのでしょうか? とにかく、そこに旅人様がおられたこと、それから聖剣は人間族に対して使うものではないということを考えれば…… おそらく聖剣作りはこの世界にとって必要なことなのでしょう」


 なんかコッチの事情が全部バレちゃったみたいなんですけど……

 いいんですか、女神様?


 そう思って女神様の様子をうかがおうとしたところ——

 あれ? 女神様がいないぞ?


「おいミミー。女神…… じゃなくて、旅人さんはどこに行ったんだ?」

「ん? なんか用事があるからって、壊れた魔導具を持って帰って行ったゾ?」


 まったく…… せっかちな人だな。


「じゃあ、みんなそれでいいのか?」

 旧ナンバーズ諸国の鍛治師全員が頷いた。


「じゃあアンタたち。家と研究所を用意してあげるから、とりあえず聖剣が出来るまでは、アタシの領地で暮らしなさい」

「なに言ってんだ、ホニー?」

 また突拍子のないことを言って……


「だって、元アジトの屋根、無くなったじゃない。もうあそこには住めないでしょ?」

 そうだった。勘違いした女神様が、怒りん任せて屋根を吹っ飛ばしたんだった。

 ひょっとして…… 屋根の一件が気まずいから、女神様は早々にトンズラしやがったのか?


「それから、アンタたちはこの世界のために役立つ仕事をするんだから、ちゃんとお給料は払ってあげるワ。お肉だって毎日は無理かもしれないけど、ほどほどには食べられるぐらいにネ」

 ニッコリ俺に笑うホニー。


 ホニー、お前ってヤツはなんて良いヤツ…… ん、なんだ? まだ続きがあるのか?


「まあ、お給料を払うのはカイセイだけど」

 チャッカリ俺にたかるホニー……


 …………いいよ、わかったよ。それぐらい出してやるよ。ダンジョンで稼いだ金がまだいっぱい残ってるから。

「第3回小説家になろうラジオ大賞」応募用の短編2作品を投稿しています。

2作品とも1000文字で書かれたコメディです。

こちらもご一読いただけると、とても嬉しいです。


「密室の二人 〜一緒に閉じ込められたのは、クラスで一番カワイイあの子〜」

https://ncode.syosetu.com/n5198hj/


「ハットトリック・オア・トリート!」

https://ncode.syosetu.com/n5522hj/

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