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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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反省

 俺は大空を舞いながら、俺の隣で空中遊泳をエンジョイしているシーナ王女とシオス王子に近づき、そして叫んだ。


「聞いてくれ! 俺はお前らが思っているような良い人じゃないんだ。おれはアイツらに『聖剣』を作らせたいだけなんだ。悪魔教徒のアジトに行ったのもそのためさ。そうさ、おれは私利私欲のために魔法を使う薄汚い大人なんだ。さあ、今からたっぷり蔑んでくれ。なんなら俺のことは『この薄汚えブタ野郎』って呼んでもかなわないぜ!」

 ちょっとヤケになって叫んだら……


 キョトンとする二人。そして——

「『聖剣』って何ですか?」

 シオスがつぶやいた。


 あっ、そうか。キタノ国の3人には、この先魔王が復活することを話してなかったんだ。

 別に話してもいいよね? ナカノ国のクローニン侯爵にも話したんだし。女神様は味方を増やせって言ってたんだし。


 俺は大空を舞いながら、同じく空中を飛翔しているブブさんにも声をかけ、シーナ、シオス、ブブさんの3人に向け、これから起こるであろう魔王の復活や魔人族の侵攻について説明した。もちろん他言無用と釘を刺した上でだ。


 俺の話を聞き終わったシオスがひと言。

「それで、どこが薄汚いんですか?」

「え?」


「『聖剣』はこの世界を平和に導くために必要なんですよね? そのためにカイセイさんは『聖剣』を求めているんでしょ? ならば、それは私利私欲ではないと思うのですが?」

 不思議そうな顔をしてつぶやくシオス。シーナも同じような顔をしている。


「それから、悪魔教徒たちを更生させた後で、彼らに聖剣作りの協力を依頼するんでしょ? 別に力づくで脅迫するわけではないのですから、特段汚いとは思いませんが」


 あれ、そういうことになるのか? 俺は欲にまみれた薄汚えブタじゃないのか?

 物欲全開神官バインバイーンとお似合いの、ゲスで下品な最低野郎じゃないのか?

 あっ、でも自分で言っておきながら、バインと同じっていうのは流石に、それだけは、どうしても、心の底から嫌だな。


 まあ、せっかくシオスが私利私欲じゃないって言ってくれてるんだ。黙っていたのもこの世界の秘密に関する事柄なんだから当たり前だと言ってるし。

 むしろ、自分たちを信頼して秘密を話してくれて嬉しいなんて言ってくれちゃって。


 うん。ならもう、そういうことにしておこう。

 なんだよ、悩んで損しちゃった。こんなことならもっと早く言っとけば良かったよ。


 でも、ブブさんだけは、

「魔王が復活するとか魔人族が攻めて来るとか…… 嗚呼ああ、俺、エライこと聞いちまった…… なあ、カイセイさん! その話、俺が聞く必要あるんですか! ああっ、ヤッベー! 俺もう、普通の男の子には戻れネエよ!」

と、お嘆きのご様子だ。


 でもブブさん、ちょっと待って欲しい——

 アナタ、近衛騎士団の団長じゃないんですか?

 もともと普通の男の子じゃないでしょ?

 それから、アナタの年齢は確かは30代でしたよね?

 どうやっても男の子には戻れませんよ?

 そもそも、そのネタ、おっさんしかわかりませんよ?


 ひょっとして、ブブさんは日本から来たおっさんなのか?

 いや、そんなわけないか。ただの偶然だな。

 


 さて、そんなことがありつつも、順調に目的地に向け飛行を続けた俺たち。

 眼下にヒガシノ国の兵士らしき人の群れが見えてきた。


 兵士たちは小さな丘を取り囲んでいる。

 丘の上にはオーボエと同じような黒いローブを着た集団が見える。

 どうやらあの丘にいるのが悪魔教徒たちのようだ。



 上空から目を凝らして丘の様子を眺める。

 悪魔教徒たちは丘の頂上から、迫り来るナカノ国の兵士に向け4門の大砲…… ではなく、4つの魔道具を並べ対抗しようとしている。


 あれは悪魔教徒のアジトで見た、相手のマナを吸い取る魔道具の完成版だろう。大砲ぐらいの大きさがある。


「おい、オーボエ。あれを人に向けて使ったら、相手の『魂の器』が壊れて死ぬんだろ?」

 俺の風魔法で空に浮いている元悪魔教徒コノヤロウオ改めオーボエに尋ねる。


「…………はい。ただ、あれは単なる脅しだと思います。彼らも本気で人を殺そうなどと思っているわけではあるません」


「でも、万が一誤作動とか暴走とか、そういう事態が起こったらどうする? お前、これから一生悔やむと思うぞ?」


「そうなる前に、聖人様に我が仲間をお助けいただきたく…… いえ、わかりました。……壊して下さい」


「よし。話し合いはその後だ。お前の仲間たちは必ず助ける。いいな、やるぞ?」

「…………お願いします」

 どうやらオーボエは本当に改心したようだ。


 そんなオーボエを、優しい顔で見つめるアイシュー。

 なんだかとても嬉しそうだ。

 そう言えば、アイシューは聖女様って呼ばれてたんだよな。

 今のアイシューの顔を見たら、そりゃみんな聖女様って言いたくなるなるだろうよ…… って、あれ?


 アイシューのヤツ、オーボエをだまくらかしてたんじゃなかったのか?

 あっ…… 最近、アイシューの腹黒い言動ばかり見てたから、俺はてっきりアイシューの謀略が炸裂したとばかり……


「なんだか腹黒くないアイシューを見るの、久し振りのような気がするワ……」

「もう、ホニーったら! それ、どういう意味よ!」


 すまない、アイシュー。全くもって、俺もホニーと同じことを考えてた。

 そうだよ。アイシューは他人に対して優しい、思いやりのある女の子じゃないか。

 確かにアイシューは最近言葉の端々に、腹黒いワードが垣間見えるようになってきた。

 でも、心の一番深いトコロにある優しさのカタチが、そんな簡単に変わるわけないじゃないか。



 どうやら俺の汚れた心が、事実を歪めて見ていたようだ。

 ハァー…… やっぱり俺は、薄汚れた大人だな。反省しよう。


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