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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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今度は聖人様ですか?

「「「 かしこまりました!!! 」」」


 後のことは俺と相談して決めろという、女神様の問題丸投げ宣言に対して反応したのは、キタノ国の冒険者3人組だった。


 3人は右膝を地につけ胸元で両手を組みこうべを垂れ、時々天上を仰ぎ見ている。

 これは騎士の礼の聖職者バージョンじゃないか。


 よく見たらアイシュー、ホニー、ミミーの3人も同じポーズをしていた。


 アイシューは真面目な顔でこうべを垂れているが、ホニーは『まあ、とにかくやっておこうかな』みたいな顔をしている。


 今回についてはホニーの反応の方が正解だと思うぞ。

 だって、さっきまで一緒にいたオモシロお姉さんが、今またおかしなことを言い出したんだ。敬虔な気持ちになれる方がどうかしていると思う。


 ミミーはというと、不思議そうな顔で周囲をキョロキョロ見渡している。

 そりゃそうだろう。

 さっきまで一緒にいたポンコツお姉さんに、なんでみんなはこんなにも仰々しい態度をとるのかよくわからない様子だ。

『みんなやってるから、オレっちもやっておこう』みたいな感じだな。


 でも、なんかみんなに合わせてぎこちなくこうべを垂れている姿はとてもかわいく見える。

 お葬式に連れてこられた小さな子どもが、ドキドキしながらお焼香してるみたいだ。


 まあ、ミミーがかわいいのは当たり前のこととして……



「キタノ国第1王女、ココロヤサシーナ=ケド・エラインデス、これよりカイセイさん、いえ、カイセイ様に従います!」

 天空に向け、シーナがなんか変なことを叫んだ。


「キタノ国第2王子、ココロヤサシオス=デモ・エラインデス、女神様の御意志に従い、これよりキシ・カイセイ様に忠誠を誓います!」

 シオスがもっとおかしなことを口走っているんだけど……


「ああっ、シオスずるい! カイセイ様のことをフルネームで呼んで、自分だけ気に入られようとしてる!」

「ちょ、ちょっと姉さん、いえ、姉上。こんな時に何を言っているのですか!」


 なんだよ…… コイツら、いや、このお二人は王女様と王子様でいらっしゃったのかよ。


「お二人とも、おやめなさい——」

 ブブさんが二人のやり取りに待ったをかけた。

 流石、ブブさんは冷静だ。


「女神様の代行者であらせられる、聖人様の御前ですよ——」

 あれ? 何言ってんですかブブさん?


「キタノ国近衛騎士団団長、ブブヅケ=デモ・ドウドス、王女様王子様をお支えして聖人様の御意志を叶えるべく………… あああっっっ、ヤッベー! 俺、なんかスッゲー緊張してきた!!!」

 ブブさんは全然冷静じゃなかった……

 それにキャラが崩壊してますよ?


「ちょっと待って下さいよ……」

 たまらず俺は口をはさんだ。


「みなさん、ちょっと冷静になりましょうよ。さっき天界から聴こえてきた声ですけど、あれ、どこをどう聞いても、さっきまで一緒にいたポンコツお姉さんコテラですよ? それに俺は単なるお調子者で、どこにでもいるような人畜無害なオッサンじゃないですか。ここまで一緒に行動して来たんだからわかるでしょ?」

 俺はキタノ国の3人に向け言葉を放った。


「…………確かに」

「ちょ、ちょっと姉上、何を言うんですか!」

「そそそ、そうだぜ、いや、そうですぜ、王女様!」

 うーむ…… どうやらブブさんは、こっちの話し方の方が自然なんだろうな。

 きっと生まれは庶民の出で、腕っぷしひとつで、近衛騎士団団長にまで上り詰めたのだろう。


 俺がどうでもいいことを考えていたその時——


「静まれ! 静まれーーー!!! このモンドコロが目に入らぬか!!!」

 …………またホニーが変なことを言い出した。


「……なあ、ホニー。お前はいったい何を言ってるんだ?」

「え? 日本ではこういう時、この台詞を言うんじゃないの?」


「……もう正体がバレてるじゃないか。もう一度改めて自己紹介してどうするんだよ。それに、そういう台詞は印籠いんろうを出しながら言うんだよ。紋所もんどころっていうのは、その印籠に書いてあって…… って、おい! なにメモってんだよ! こんなこと覚えなくてもいいよ!」


「じゃあ、今からすぐに、そのインロウってのを買いに行きましょうヨ!」

「そんなモン、この世界には売ってネエよ!!!」


「もう! あなたたちは、こんな時まで何を言ってるのよ! あなたたちは日本ネタを話さないと生きて行けないの!?」

「待てよアイシュー。俺は別に好きで日本ネタを話しているわけじゃ——」


「あはははは! ちょ、ちょっとやめて…… あはははは!!!」

 シーナ、いや、ココロヤサシーナ王女様が、また笑いの渦の中にのまれていった……



「あのー、聖人様…… 私、心を入れ替えましたので、そろそろ身体の拘束を解除していただけないでしょうか……」

 悪魔教徒コノヤロウが、申し訳なさそうに口を開いた。

 そうだ、コノヤロウのことすっかり忘れてたよ。


「大変恐縮いたしますが、そろそろ、オシッコに行きたくなってきたもので……」

 俺は急いで風魔法で作ったウインドロープを解除した。


「……なんかゴメン。そういうことなら、次からは早目に言ってくれ」

「いえ、もう拘束されるのはゴメンですので…… ヒイイッ! 本当に心を入れ替えましたから! 本当ですって!!!」


 コノヤロウの怯えた視線の先にはホニーの姿があった……

 ホニーよ、お前は俺がいない間、いったいコイツに何をしたんだ?

 もう絶対、ホニーには容疑者の尋問はさせないことにしよう……

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