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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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天の裁き

「チョット、カイセイ! アンタいったい、今までどこに行ってたのヨ!」

「カイセイさん、大丈夫なんですか?」

「オニーサン、オレっち心配したゾ……」


 悪魔教徒のアジトに戻った俺は、ホニー、アイシュー、ミミーから3人3様の言葉で迎えられた。


「すまなかったな、心配かけて。もう大丈夫だ。それから、コテラはなんか急用が出来たそうで、ちょっと席を外すそうだ」

 俺は努めて笑顔で言葉を放った。



 俺の言葉を聞いた北の国の冒険者3人組、シーナ、シオス、ブブさんも安堵の表情を見せた。

 そこまでは良かったのだが……


「おい、お前! 私を変なロープみたいな魔法でグルグル巻きにしておきながら、どこかへ行ってしまうとは何事だ! 早く私の拘束を解かないと酷い目に合わせるぞ!」


 元ナンバーズ諸国の鍛治師にして、現在は悪魔教徒に身を落としたオボエテ=ロヨ・コノヤロウが悪態をついている。


「チョット、カイセイ。アンタがコイツの話の途中で出て行っちゃったから、コイツってばさっきから、ずっとうるさいのよ」

 面倒臭そうな顔のホニー。


「ねえカイセイさん。この人、きっとあなたに話を聞いてもらいたいのよ」

 憐れみの表情を浮かべるアイシュー。


「オレっち、このオジサンはきっと、かまって欲しいんだと思うゾ!」

 訳知り顔のミミー。


「お、おい、お前ら! それが大人に対する——」

 コノヤロウが非難の声を上げるが、ホニーがひと睨みすると——


「ヒ、ヒィッッッ!!!」

 恐怖の声を漏らした。


 ……おい、ホニー。お前、まさか俺がいない間に、変なお仕置きとか、変な尋問とか、いろいろ変なコトしてネエだろうな?


「……わかったよ。でも俺、もう聞きたいことあんまりないんだけどな。まあいいや、じゃあ、話の続きを聞いてやるから言ってみろよ」

 俺がそう言うと、待ってましたとばかりにコノヤロウが口を開く。


「ふっ、仕方ないな。お前がどうしてもと言うんなら、話してやらないこともないぞ」

 コイツやっぱり、かまって欲しいだけのようだ。


「ではその前に、私の拘束を解いてもらおうか!」

 コノヤロウのヤツがエラそうなことを言うので、

「じゃあもういいや。ここにある怪しげな魔道具と一緒に、このままコイツを冒険者ギルドに突き出してやろう」

と、俺は簡潔に答えた。


「ち、ち、ちょっと待て! わかった、今回だけは特別に、この場で話をしてやろう。特別だからな!」


 まったく面倒なヤツだ。仕方ないのでちょっとだけ聞いてやろう。

 コノヤロウは意気揚々と先程の話の続きを述べ出した。


「お前たちが私を冒険者ギルドに突き出したとしても、もう遅いのだよ! さっき言っただろ? 私の仲間が既にナカノ国に向かっていると」


 そういえば、そんなこと言ってたな。


「ここにある魔道具は、『魂の器』をマナに変換し、そのマナを吸収・蓄積する機器の試作品なのだ。完成品を携えた私の仲間たちは、今頃ナカノ国でマナの吸収を行っていることだろう」


 そういえば、ここにある魔道具は日本にある掃除機のような形をしている。これってマナを蓄える魔道具なのか?


 あれ? マナを吸収するってことは…… まさか、人を殺して……


「我々の悲願、それは100年前に君臨した、我らの偉大なる5人の英雄王を復活させること! 復活せし英雄王のもと、我々は失いし国を取り戻すのだ! 多くのマナを使えば、死者が復活するということを我々は学んだのだ! ふふっ、お前が私を冒険者ギルドに突き出す前に、私の仲間たちが英雄王を復活させ、私を助けに——」


——ズドーーーン!!!


 悪魔教徒コノヤロウの話が終わる前に天空から轟音が鳴り響き、俺たちがいる悪魔教徒のアジトの屋根が吹き飛んだ。


 俺はとっさにミミーたちを守ろうと思ったのだが……

 屋根はどこかへ吹き飛ばされ、俺たちにはなんの被害もなかった。


 唖然とする一同。

 俺たちの頭上にはとてもキレイな青空が広がっていた……


 しばしの沈黙の後、青空の彼方から光が差し込んできた。

 俺と悪魔教徒コノヤロウ以外の面々がその光に包まれる。


 間違いない。これは以前、女神様が下界に向けて放った、ヒールっぽい効果のある不思議な光だ。

 俺がそんなことを考えていると——


『悪魔教徒コノヤロウ…… 汝に天の裁きを……』

 天空から女神様の声が聞こえてきたのだが……


 声の主は女神様で間違いない。女神様のあの美しい声を聞き間違えるはずはない。

 しかし……

 怒りで声が震えている。

 女神様は相当怒っているようだ。

 いや、怒っていらっしゃる。いやいや、お怒りなされておいででおられる。ええい、もうなんでもいい。とにかく怖いんだよ!


 ヒールっぽい効果のある光を浴びていなければ、きっとミミーはまたチビっていただろう。

 なんだよ…… 俺にも不思議な光を当てて下さいよ。俺だって怖いんですよ!



 悪魔教徒コノヤロウに目をやると…… チビっていた。


 俺は一瞬、武士の情けで混合魔法ドライヤーを使い、下半身を乾かしてやろうかと思ったが……

 やめておこう。余計なことをしたら、俺までトバッチリを食いそうだ。

 はっきり言おう。俺は今、とてもビビっているのだ。もう、俺までチビりそうなぐらいビビっているのだ!


「ヒ、ヒィィィーーー!!! お、お、おま、おま、お待ち下さい!!!」

 こういうのを断末魔の叫びと言うのだろうか。

 悪魔教徒コノヤロウが死にそうな顔をして、必死に声を絞り出している。



『……己の欲望を満たすため、無関係な大勢の人の命を奪うとは…… 汝、それでも人たると言えるか!!!』


「ご、ごか、ごかい、誤解で、誤解です!!! 人の命を奪おうなんて、これっぽっちも考えてません!!!」


『……………………え?』


「わわ、私たちは、ナカノ国の放牧場にいる、牛や豚を狙っているのです!!! ひ、人様を殺めるなんて、そんな恐ろしいこと我々には出来ません……」


『……………………あれ?』


「わわ、私たちは貧乏生活を続けておりまして、もう何年も肉を口にしておりません。そこで今回、牛や豚の『魂の器』を奪ったついでに、焼肉パーティを開催して盛り上がってやろうと企んでおりました。ハシャいでしまい、本当に申し訳ありませんでした!!!」

 身体を拘束されたまま地面に倒れこみ、こうべを垂れて謝罪の言葉を放つ悪魔教徒コノヤロウ。



 それに対する女神様の答えはと言うと——


『……………………えっと…… 泥棒は良くないことです……」

 なに当たり前のことを言ってるんですか、女神様?


『……………………ええ、そうですとも。泥棒は犯罪ですとも…… 今後は…… 注意して下さい』

 きっと今頃、顔を真っ赤にして恥ずかしがっているんでしょうね、女神様?


『……………………あの…… 後のことは、そこにいるカイセイさんと相談して下さいね……』

 やっぱり俺が尻拭いするんですね、女神様……

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