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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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魂の器

「チョット! カイセイをソンジョソコラの日本人と同じだと思ったら大間違いヨ! カイセイは『キョート人』だから、ベッドじゃなくて『フトン』っていう寝具を使ってたはずヨ!」

 ベッドの下のお宝から始まった妄想がどんどん膨らみ、一人で我が道を突き進むホニー……


 でも、ちょっと待って欲しい。俺、確かに京都出身だけど、日本にいた頃はワンルームのアパートで安物のベッドを使ってたぞ?

 俺、ひょっとしていけないことをしてたのか?


「ふーん…… ホニーの言ってることはよくわからいけど、要するにカイセイさんは、イヤラシイ人じゃないって言いたいの?」

 アイシューが疑り深い顔をして口を開く。


「そんなこと言ってないでショ! ベッドがなかったカイセイは、きっとパソコンのハードに——」


「おい、ホニー! お前が日本文化に詳しいのは本当によくわかったよ。頼むからちょっと黙ってくれよ!!!」

 お前、実はエスパーなのか? なぜ、そんなことを……

 いや、それはどうでもいい。



 ほら見ろ。よくわからない話をするから、純真な心を持つシーナやシオスがキョトンとした顔してるじゃないか。


 俺の目の前には、元ナンバーズ諸国の鍛治師にして、現在は悪魔教徒に身を落としたオボエテ=ロヨ・コノヤロウが、俺が放った風魔法ウインドロープで身柄を拘束された状態で座っている。


 そのコノヤロウまでキョトンとしてやがる。

 ひょっとして、お前も純真なのか?

 いや、そんなことはどうでもいい。

 ホニーのバカな話はこれで終わりだ。本来の目的に戻ろう。


「この悪魔教徒は俺が見張ってるから、みんなはアジトの中を捜索してくれるか?」

 俺が他のメンバーにそう告げたその時——



「そこにいるのは何者ですか!」

 女神の使徒コテラになりきっているつもりの女神様が鋭い声を上げた。


 近くにある木々の茂みから音がする。逃げるつもりか?


 あれ? でもおかしいぞ?

 俺はさっきからユニークスキル『広域索敵』をオンの状態にしている。

 それなのに、俺の『広域索敵』には何の反応もないのだ。



「どうやら逃げるつもりのようですね。私から逃げられると思ってるのかしら…… ふふふっ」


 あーもう、自信満々の表情をした女神様が、勝手に謎の人物? を追いかけて行ってしまった。

 ひとこと俺に確認しろよ。ホウレンソウは大事だって教わらなかったのか? 社会人失格だぞ?


 仕方ない。俺の『広域索敵』に反応がなかった件については、女神様が戻って来たら理由を教えてもらうことにして、残りのメンバーでアジトの中を探すことにしよう。



——バーーーン!


 調子に乗ったホニーが、勢い良くアジトのドアを蹴り破った。


 アジトの中には……

 日本によくある家庭用の掃除機を大きくしたような謎の物体が、10個ぐらい置かれていた。

 おそらく魔道具だと思うんだけど……

 ちなみに、今、俺が例えている『掃除機』というのは、片手で使えるタイプじゃなくて、長いノズルがあって象のような形に見えるアッチの方だからな。


 サイズは様々で、小さいものはゴミを入れるポリタンク程度。大きいものは軽自動車ぐらいの大きさがある。


 せっかくアジトの中を隅々まで探すつもりでいたのに……

 中に入るまでもなく、外からでも怪しい物体が丸見えだ。



 さっきまでポカーンとしていた悪魔教徒コノヤロウが、ドアが壊された大きな音を聞き我に返ったようで、


「お、お前たち、なに勝手なことをしてるんだ!」

と、大声を上げた。


「おい、悪魔教徒オボエテ=ロヨ・コノヤロウ。あの怪しい物体は魔道具だろ? しらばっくれてもダメだからな。あの物体を押収して、冒険者ギルドで調べてもらえばハッキリするんだ!」


 俺の言葉を聞いたコノヤロウ。

 さぞや無念の表情を浮かべていると思いきや……

 なんだコイツ? 笑ってやがる。


「フ…… フフフ…… ハハハハハ! アハハハハハハ!!!」


 なんだ? ついに大声を上げて笑いだしたぞ?


「もう遅いんだよ! 今頃、俺の仲間たちは、ナカノ国で我々の使命を全うしているころだ!!!」


 勝ち誇った様子で叫んだ悪魔教徒コノヤロウ。

 しかし……


「ムムっ! このオジサン、ちょっとおバカだと思うゾ。オニーサンの質問に全然答えてないゾ?」


「ダメよミミーちゃん、そんなこと言っちゃあ。この人だって、これでも一生懸命生きてるんだから」

 いつものように、相手の心をえぐるような悪口を放つアイシュー。


「おいっ、このクソガキども! 大人を舐めんじゃねえよ!」

 あっ、コノヤロウが激昂した。


「じゃあ、ちゃんと答えてみなさいよ」

というアイシューの挑発に、


「ああ、いいとも! お前らみたいな、バカなクソガキにでもわかるように教えてやるよ!」

と、いとも簡単に応じてしまったコノヤロウ。


 顔を真っ赤にして何か言い返そうとしているミミーの口元を、アイシューが手で押さえている。流石はアイシューだ。


「いいか、よく聞け! 俺たちは長年の研究の末、この世界に存在する『レベル』の仕組みに気づいたんだ!」


 レベルの仕組み? なんだそれ? 俺、そんなの知らないぞ?


「この世界の生きとし生けるものものには、皆、形を持たない『魂』がある。『魂』は『魂の器』で覆われているため、たとえ形がなくとも生物の中にあり続けることができるのだ」


 人間をはじめとした全ての生物は『魂』と『魂の器』を持っていると言うのか?

 ほうほう、それから?


「しかし、『魂の器』が壊れると、もともと形のない『魂』は数刻のうちに、この世界のどこかへと行ってしまうのだ。これが生物の死だ」


 魂は消滅せずに、どこか別の場所に行くってことか?

 へー、なるほど。


「では壊れた『魂の器』は消えて無くなるのか。いや、違うのだ。壊れた『魂の器』は『マナ』となる。『マナ』は己を生成させたもの、即ち『魂の器』を壊した者の体内に吸収される。それを女神や異邦人たちは『経験値』と呼んでいるのだ」


 え? じゃあ、ナニか? 俺は生き物の命を奪うことで経験値を稼ぎ、そしてレベルを上昇させて来たって言うのか? ナ二言ッテンダ、コイツ?



「ちょっと待てよ。俺はお前の言う『異邦人』だ。そして俺は冒険者でもあるから、お前の言っていることが間違いだと断言できるぞ」

 俺はさっきから熱弁をふるっている、目の前のイカれた悪魔教徒に向かって言葉を放つ。


「いいか、俺はこれまで、魔獣や野獣をたくさん討伐してきた。でも、ヤツらを撃ち漏らしたことだって何度もあるんだ。だが、そんなヘマをした時でも、経験値はちゃんと入ってきたぞ? 『経験値』とは、『戦闘の経験』に応じで手に入るものじゃないか」


 俺が放った言葉に対し、今度はコノヤロウが言葉を返す。

「アンタは『異邦人』だったのか…… なら話が早い。それは、アンタが攻撃した相手の『魂の器』が一部壊れたんだよ。アンタはその『魂の器』のカケラの一部をマナとして吸収したんだ。相手を完全に倒しきれなかった場合、手に入る経験値はきっと少なかったはずだ。そして…… 魂の器が一部でも壊れると『魂』は少しずつ、時間をかけて肉体から離れて行くんだ」


「そんなバカなことが…… そうだ、訓練だ! 俺は仲間たちと訓練をした時にも、ほんの少しだが経験値を手に入れたことがあるぞ! ほら、やっぱり『経験値』とは、『戦闘の経験』に応じで手に入るものじゃないか!」


「それは訓練の際、相手の『魂の器』がほんの少しだけ壊れたってことだ。『魂の器』を壊された相手は直ぐには死なない。時間をかけて死んで行くのさ」


 そんな……

 じゃあ俺は、一緒に訓練をした仲間の命を奪っていたということなのか?

 なんだよそれ……


 俺の目の前が真っ暗になった…………


「おいアンタ、俺の話をちゃんと聞いてるのか? まだ、話の途中なんだが————」


なんだかコノヤロウの声が、どんどん遠ざかって行くような気がする……


そんなことを思っていると——



「『魂の器』は修復されます!!! 器が少し壊れたぐらいで、『魂』が肉体から離れることはありません!!! 勝手な妄想を口にするのはおやめなさい!!!」


 女神様の声が聞こえて来た。

 ああ、女神様が戻って来たんだ……


 でも俺は……

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