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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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オボエテ=ロヨ・コノヤロウの災難

 元ナンバーズ諸国の鍛治師で、今では悪魔教徒になってしまった連中が潜む山岳地帯が、俺たちの目の前に迫っていた。


 俺たちは風魔法を使い、上空から悪魔教徒のアジトを目指すことにした。名目上、空からの方が発見しやすいということにしたのだが……


 本当は山道を登るのが面倒なのだ。

 このままでは俺たち、ダメ人間になる気がする。


 とりあえず、頑張るのは明日からにすることとして——



 初めて空を飛んだシーナはハシャギまくり、シオスは驚き、ブブさんはビビっていた。


 上空から俺のユニークスキル『広域索敵』を使ってみたところ、それらしい人物が一人潜んでいると見られる建物を見つけた。


 周囲に民家はない。多少暴れても大丈夫だろう。


 俺は悪魔教徒のアジトと思われる建物の前にみんなを降ろした。

 さあ行動開始だ、と思っていると——



「どうして悪魔教徒がいるとわかるのですか?」

 ブブさんが尋ねてきた。


 そんなの簡単だ。中にいる人物の名前を見れば一目瞭然なのだ。


 ソイツの名前は『オボエテ=ロヨ・コノヤロウ』


 なんだか恨みがましい名前じゃないか。

 自分の国を追われた者には、おあつらえ向きな名前だと思う。

 そう、自動翻訳機能さんが限りなくクロだと言っているのだ。


 ただ少し気になるのは、ソイツのレベルが38もあるということだ。

 でもまあ、コッチには女神様もいることだし、今のところはその点について心配する必要はないだろう。


 さて、悪魔教徒の存在がわかった理由を詳しく説明すると時間がかかりそうなので、俺はキタノ国の3人に、ユニークスキルを使えばなんでもわかると適当なことを言った。


 俺は適当なことを言っただけなのだ。それなのに——


 シーナとシオスが尊敬と羨望の眼差しを向けている。

 うーむ…… 今後、発言は慎重に行うことにしよう……


「でも、証拠もないのに、いきなり身柄を拘束するのは流石にマズイのでは?」

 心清らかなブブさんが苦言をていす。


「じゃあ、俺と女神…… コテラでソイツを誘い出しますので、その隙にアジトの中にある動かぬ証拠を見つけて下さい」


「でも…… それも不法侵入と言いますか……」


「ブブさん! 時には大胆な行動も必要よ!」

「そうですよ! ここはカイセイさんの作戦に従いましょう!」

 またシーナとシオスがキラキラした目で俺を見つめている。

 なんかゴメン…… お前たちには心清らかなままでいて欲しいのに……


「でも、コテラさんに危険が及ぶのでは?」

 心配顔のブブさんが発言を続ける。


「ムムっ! コテラさんはオニーサンより強いゾ!」

 ミミーが笑顔を爆発させて叫んだ。


 ミミーの一言を聞いて、驚くキタノ国3人組とヘコむ俺。


「チョット、ミミー! そんなこと言ったら、魔法しか取り柄のないカイセイのチンケなハートが傷つくじゃない! 見なさいヨ、カイセイの見た目が10歳ぐらい老け込んで、50代のジイさんみたいになっちゃったじゃないのヨ!」


「ちょっと待てホニー。ひょっとして、俺に対する精一杯の慰めの言葉がソレなのか? それから俺は36歳だから、10歳老け込んだとしても、まだ50代じゃネエよ。そんでもって、50代の人をジイさん呼ばわりすんなよ。田舎に行ったら、50代なんて超若手なんだからな」


「チョット! それって、噂に聞く過疎化ってヤツなの!?」


「もう! あなたたちは、日本ネタを話さないと生きていけないの? ちょっと黙りなさいよ!」


「おい、待てよアイシュー! 俺は別に好きで日本をネタにしてるわけじゃ…… ん? どうしたミミー?」


「オニーサン、ゴメンだゾ……」


「ミミー…… お前は本当に優しいヤツだな。いいんだよ、コテラは一般の人間のカテゴリーに入らないっていうか——」


「カイセイさん! それじゃあ、まるで私が人間じゃないみたいじゃないですか!」


「ああっ、もう! それはボケてるのか? それともポンコツなのか? とにかくコテラは黙ってろよ!」


「ああ、姉さんがまた笑い出した!」

「いかん! シーナの顔面が——」


 俺たちがヤイノヤイノと騒いでいると、悪魔教徒のアジトの扉が開き——


「お前ら、人の家の前でうるさいぞ! 近所迷惑だろ!」

 オボエテ=ロヨ・コノヤロウが姿を現した。

 見た目は40代ぐらいのオッサンで、ヨレヨレの魔導士風ローブを着ている。


 しかし俺たちは——


「ウッセエな! 今、俺たちは大事な話をしてんだよ!」

「そうヨ! 今は過疎化の話をしてるんだからネ!」

「もう! その話は関係ないでしょ!」


「オレっちはオニーサンにお詫びの言葉を述べるゾ!」

「まあ、ミミーさん。とっても立派ですよ!」


「うわっ! 姉さんの顔が近年稀に見るほど酷い状況に!」

「シオス! 今すぐ隠しなさい!」

「あははははははは!!! お、お腹が痛い…… あははははははは!!!」



「……あのー。それってウチの前で話す必要ないよな? もう、帰ってもらってもいいか?」


 うん。オボエテ=ロヨ・コノヤロウの言う通りだと思う。

 俺たち、何しにここに来たんだっけ?


 あっ、思い出した。


「えっと…… いろいろ作戦とか考えてたけど…… もういいよな?」

 俺はそう言うと、お久しぶりの風魔法ウインドロープを使い、コノヤロウを縛り上げた。


「む、無詠唱だと!?」

 お約束ありがとう。お前、意外と良識のあるイイ男のようだな。


「い、いや、何かの間違いだ。そんなことより…… お、おいお前! 善良な市民である私になんてことするんだ!」

「ウッセイやい。ネタはあがってるんだ、神妙にしやがれ!」


「ネタって…… まだなんにも証拠はありませんよ?」

 女神様がトボけた顔で俺を見つめる。


「さっき説明したじゃないか…… 順序は逆になるけど、これから家の中を探せばきっと見つかると思うと言うか……」

 なんだよ。なんだか改めて罪悪感が湧いて来たじゃないか。

 ここは異世界。日本じゃないんだから、いいってことにしておいて下さいよ。


 その時、俺たちの会話を聞いていたコノヤロウが——


「ダ、ダメだ! 絶対、中に入るんじゃない!」

と、慌てた様子で叫んだ。


「ほら見ろ、自分で悪事をはたらいてますって、白状してるようなもんじゃねえか。さあ、じゃあ家の中を探しに——」


 俺の話を途中でさえぎり、ホニーが、

「ベッドよ! 」

と、大声で叫んだ。


「ベッドの下が怪しいわ! コイツはきっとベッドの下にお宝を隠してるはずヨ!」

「この日本文化バカ! コイツは日本人じゃないだろ!」


「……じゃあ、元日本人のカイセイさんは、ベッドの下に何を隠してたのかしら」

 アイシューがまた薄汚いゴミを見るような目で俺を見つめてきた。


 もういい加減にしてくれよ……

 俺はベッドの下にアヤシイお宝なんて隠してないよ…… たぶん。

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