ホニーの意外な一面
俺、ミミー、アイシュー、ホニーのパーティ4人組と、キタノ国の道案内を買って出た女神の使徒コテラになりきったつもりの女神様、そして先程出会った、シーナ、シオス、ブブさんたちキタノ国の冒険者3人組の計8人は、国境近くの山岳地帯目指して街道を北西に進んでいる。
俺たち8人は、山岳地帯に潜む元ナンバーズ諸国の鍛治師にして、現在は死者の復活を企てる悪魔教徒に身を落とした連中の調査に向かっているのだ。
このため、俺は今後の行動について軽く打ち合わせがしたいとキタノ国の3人組に申し出た。
では、歩きながら打ち合わせしようということになり、3人組のリーダー格、ブブさんと並んで歩いているのだが……
俺の少し前には、女性陣5人組がワイワイと楽しそうにお喋りしながら歩いている。
これから悪魔教徒の隠れ家に向かうっていうのに、まったく緊張感がない。
まあ、こっちには女神様がついてるんだし、危ないことはないと思うんだけど。
でも、女神様の正体を知らないシーナまで、ハシャいだ様子で笑い声を上げている。
シーナって子は、順応性が高いというか、天真爛漫というか……
とにかく、女神様やホニーとは、なんだか気が合うようだ。
そして俺とブブさんのすぐ横には、シーナの弟、年の頃10台半ばぐらいのシオス少年がくっついている。
「あの女性陣の中には入りづらいよな」
俺がそう言うと、
「はい…… お二人のお話のお邪魔をして申し訳ないのですが……」
と、恥ずかしそうに答えるシオス。
ああ、きっとシオス少年は今、多感な時期なんだろう。
きっとホニーやアイシューなんかは、恋愛の対象になるんだろうな。
ああ、甘酸っぱいぞ、シオス少年。
おじさんも、昔は君のような純情な少年だったんだよ。
まあ、そんなことはさておき。
俺は二人に、自分が転生者であること、そして探索系のスキルを持っていることを伝えた。
「ですので、まず俺が対象の人数や強さを確認します。ここで危険だと判断した場合、接触は控えて冒険者ギルドに引き返しましょう」
俺の探索系スキルを使い対象の情報を入手出来れば、ブブさんたちの目的である『調査』クエストは完了である。
ブブさんたちには情報を持って、冒険者ギルドに引き返してもらえばいい。
その後で、俺たちはゆっくりじっくり元鍛治師たちに『いろいろな方法』を使い、俺たちの真の目的である聖剣作りに協力してもらうつもりでいた。
ホニーがまた『拷問』とかオソロシイことを言い出して、暴走しないかちょっと心配なんだが……
「でも、それでは黒魔石を確保できないじゃありませんか!」
あっ、心優しいシオスが反論してきた。
「うーむ…… じゃあ、とにかく、後のことは対象を確認してから決めようか。気合いを入れて行っても、もぬけの殻って可能性もあるからね」
「わかりました!」
「それから、もし向こうがいきなり戦闘行為を仕掛けてきた場合は、俺たちのパーティが魔法壁を出して防御します。応戦する場合、最初の一撃も、俺たちに任せてもらえると嬉しいんですが、ブブさん如何ですか?」
突発的な戦闘が起こった場合、最初の一撃で相手を無力化してやるつもりだ。もちろん、相手を殺さないよう手加減を加えることも忘れてはいないぞ。
「わかりました。最初の一撃と言わず、我々はあなたの指示に従いましょう。今回の混成パーティのリーダーは、カイセイさんにお願いします」
「ありがとうございます。それじゃあ、シオスにガッカリされないよう、頑張らないといけないな」
俺がそう言うと、シオスは難しい顔をして、
「カイセイさんは、どうしてそんなに良い人なんですか?」
と、尋ねてきた。
「え? 俺って良い人なのか? うーむ…… そんなこと言われるのは初めてなんだけど……」
「だって! カイセイさんは僕たちの前に現れた時、空を飛んでたじゃないですか。僕たちのことなんか無視して、サッサと山岳地帯に向かうことだって出来たはずだし……」
あっ、そう言われてみれば。そういう選択肢もあったのか。
待てよ。でもあれは確かパイセンの指示が『キタノ国の冒険者3人組を止めろ』だったから、3人の前に降り立ったんだよな。
ということは、パイセンが良い人なのか? あのパイセンが? あのパイセンがねぇ……
なんだかバカバカしくなってきたから、考えるのはもうやめよう。
「それに、上級魔法を使える魔導士たちのリーダーってことは、カイセイさんはもっとすごい魔法が使えるんでしょ? それほどの実力があるのに、全然エラそうな素振りを見せないじゃないですか!」
目を輝かせて質問してくるシオス少年。
まぶしい。まぶし過ぎるよ、シオス。
俺、確かに超級魔法使えるけど、それはこの世界が2周目だからなんだよ。
だから、ちょっとズルしてるようなもんなんだよ。
前回のターンでは、今頃はまだビビりまくってて、ハジマーリの街から出てなかったと思うぞ。
「そりゃ、まあ、上級魔法よりも強力な魔法は使えるけど…… うーむ……」
俺がなんと答えようか悩んでいると、俺たちの会話が聞こえていたのか、ホニーが女性集団を離れ一人で俺たちの元へ駆け寄って来た。
「あのね! 別にカイセイが特別良い人ってわけじゃないのヨ! 日本人はみんな良い人なのヨ!」
嗚呼、ホニーよ。お前こそ良い人だよ。お前の周りにいたロクでもない日本から来た転生者を見ても、まだそんなことを言ってくれるのか。
パイセンは大嘘つきだし、お前の師匠に至ってはどこかにトンズラしやがったじゃねえか。
「ホニーよ。お前は俺たち日本人よりもっと良い人だ。だからお前に『踊り子』の称号を授けよう。川端康成大先生という方に感謝するように」
「うーん…… 嬉しいんだけど、アタシはカワバタの作品では、『雪国』の駒子とか、『古都』の双子の姉妹の方が好きなんだよネ」
「……………………すみませんでした。今度女神様にお願いして、日本から取り寄せてもらい、必ず読んでおきます」
ホニーよ。お前はもう日本人を名乗ってもいいと思うぞ。




