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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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ミミーを取り戻せ

 女神の使徒コテラになりきっているつもりの女神様に多少イライラしながら、俺は街道脇の森の中に駆け込んだ。

 ここなら誰にも見られる心配はない。


 パイセンからのメッセージを確認した。


『カイセイさんはバカなんスか? 魔王をぶっ倒すための魔剣を悪魔教徒に作ってもらうなんてこと言うつもりだったんスか? この世界の人たちは、魔王が復活するなんて知らないんスよ? この世界の人たちを混乱させて楽しいんスか? もう一度言いますね。カイセイさんはバカなんスか?』


 全然大切なことじゃないから、2回も言わなくていいよ……

 それにしても、パイセンはどうしてこんなに口が悪いのだろう。

 黙ってればクールビューティって感じなのに。

 天界にはまともなヤツがいないんだろうか……


 まあいいや。続きを読もう。


『目的については、『黒魔石を探している』ってことにしとけばいいんじゃないんスか? 悪魔教徒のヤツらなら、たぶん持ってると思うっスよ。ミミー氏に必要なんでしょ?』


 なんだよ。悪魔教徒が黒魔石を持ってるなんて情報聞いてないぞ?


『ミミー氏に黒魔石を渡したら、きっとまた『オニーサン』って言って、まとわりついてくれると思うっスよ、プププ……』


 それにしても、パイセンはどうしてこう性格が悪いんだろう。

 天界にはまともなヤツがいないの確定だな。



 ナイスなアイデアをいただいたものの、どうも釈然しゃくぜんとしない気持ちをかかえながら、俺はみんなの元に戻ることにした。そこで俺を待っていたものは——


「カイセイさん! 大事な用事がある時には前もってトイレに行っておきなさいとあれほど言ったでしょ!」

 帰り着くなり、女神様がなんか言ってきた。

 ちなみに、そんなことは一言も言ってなかったくせに。

 やっぱ天界にはまともなヤツなんていないな、うん。


「……あの、コテラさまぁ……ん。たぶんカイセイさんは、パイセンさまぁ……んからの、何かに気づいて、一人でその、なんと言うか……」

 ちょっと悶えてるようにも聞こえるアイシューの言葉を聞いた女神様。


「ああっ!」

 グーにした右手を左手のひらへ、ポンと置き、そして——

「ああ、そういうことだったんですね! パイセンからのメッセージを確認に——」


「それ以上、喋るんじゃネエよ!」

 このバカ、バラしてどうすんだよ! ここまできたら、もうトイレに行ったことにしとけよ!

 俺は女神様めがけてダッシュした。


「な、何するんですか、カイセイさん! い、痛い! ギブです! ギブですーーー!!!」


「チョ、チョット! これは噂に聞く、日本人のおっさんなら誰でも使えるという必殺技、コブラツイストじゃない! ア、アタシにも教えなさいヨ!!!」

 興奮気味にホニーが叫ぶ。


 ふっ、俺の若い頃、プロレス技と言えばコレだったんだよ。

 でもさり気なく、おっさんって言うんじゃねえよ。


 ふふっ、女神様にはどんな魔法を使っても効かないから、コブラツイストをかましてやったんだよ。これは正解だったな。

 でも、なんでギブとか知ってんだ? ああそうか。アンタもやっぱり日本のことが大好きなんだな。


 大きな笑い声が聞こえてきたので、コブラツイストをかけながら声がする方向に顔だけ振り向けたところ——

 また、シーナが顔面の筋肉に変な動きを加えながら爆笑していた。


 うーむ…… これはしばらく間をおいた方が良さそうだ……




「あー、面白かった。みなさん、本当に面白い方々ですね」

 シーナが口にしたその台詞、さっきも聞いたような気がするがまあいい。


 シーナが笑いの渦から抜け出したようなので、俺はやっとのこと本題に入ることにした。


「実は俺たち、黒魔石を探してるんです」

 あっ、ミミーが今、ピクッと反応した。

 待ってろよ、ミミー。黒魔石は必ず手に入れてやるからな。


「ここに来る前に、悪魔教徒の連中が黒魔石を持っているという情報をつかんだもので」

 本当はその情報をつかんだの、ついさっきなんだけどね。まあいいや。


「ギルドからの報酬はあなたたちが受け取る。黒魔石があった場合は俺たちがいただく。そういう約束で、これから一緒に行動しませんか?」


「うーん、しかし……」

 ブブさんが難しい顔をしてつぶやいた。そして——


「クエストで得た金品を、勝手に懐へ入れていいものかどうか……」

 まったくブブさんは真面目だな。

 確かにクエストで見つけたお宝なんかは、冒険者ギルドに提出する決まりになっている。

 でもそんな決まり、守ってるヤツなんて誰もいないよ。


 仕方ない。ここはミミーの事情を正直に話すことにするか。


 ミミーは黒属性の獣人族であること、俺の治癒魔法(白魔法)が黒属性のミミーには効かないこと、黒魔石があれば白魔法を黒魔法に変換出来ること、変換出来ればミミーがピンチの時に助けてやれること、そんな話をブブさんたちに聞かせた。


「これまでミミーにだけ寂しい思いをさせてきたかな、とか思っちゃって……」

 俺がそう言うと、瞳を涙でうるませたミミーが、

「……オニーサン」

と、つぶやいた。


 よし! さあ、俺の胸で泣いていいんだぞ!

 俺のところに戻って来い!

 と思っていたら——


「「うおおおーーーん!!!」」

 シーナとシオスが泣きながら俺に突進してきた。


「ちょ、ちょっと離せよ、苦しいよ! それに、なんでお前らが泣いてんだよ!」


「「ええ話やーーー!!!」」


「ああ、そりゃどうも…… っておい、お前ら感動し過ぎだよ! ちょ、ちょっとブブさん、なんとかして……」

 ブブさんは少し離れた場所で、『うんうん』と、うなずきながら涙を流していた。


 お前ら名前の通り、ホント、心の優しい人のようだな。

 いや、今はそんなことより、大事なのはミミーだ。

 俺はミミーの姿を目で追った。


 肝心のミミーはというと——

 …………女神様の胸の中で泣いていた。


 チクショウ!

 なんだよ、女神様ばっかりオイシイとこ持っていきやがって!

 でも、絶対ミミーは取り戻すからな!


 ちなみに、女神様はというと——

「ええ話ですーーー!!!」

と言いながら号泣していた。


 アンタ、ミミーの事情、最初から知ってたでしょ?

 場の雰囲気に流され過ぎだよ……

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