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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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まだそんな歳じゃない

「あー、面白かった。みなさん、本当に面白い方々ですね」

 さっきまで笑い転げていたココロヤサシーナが、笑いで溢れた涙をぬぐっている。


 いや、バカなこと言ってたのはホニーだけだと思うんだけど……


「あっ、申し遅れました。私は冒険者のココロヤサシーナと言います。みんなからは『シーナ』って呼ばれています。みなさんが怪しい人じゃないってことは、よくわかりました!」

 そうなのか? ホニーのバカな話も、たまには役に立つことがあるんだな。


「僕はココロヤサシオスと申します。みんなからは『シオス』と呼ばれています。どうぞお見知りおきを」


 あれ? 俺は今、人物鑑定スキルを使っているんだけど……

 この二人、『名前』の他に『性』も持ってるようなのだが。

 なんで名前しか名乗らないんだ?


 俺がそんなことを思っていると——

「カイセイさん。人にはそれぞれ事情というものがあるのですよ」

 訳知り顔の女神の使徒コテラになりきっているつもりでいやがる女神様が、小声でつぶやいた。


 それを聞いた俺は…… なんだかちょっとイラっとした。

 なんだよ、普段はポンコツなことばっかり言ってるくせに、カッコつけちゃって。

 俺は仕返ししてやることにした。


「へえー。女神様も俺の『人物鑑定』みたいなスキルを使えるんですね。流石は女神様。俺、ちょっと感動しましたよ」

 俺も小声でつぶやき返す。


「そりゃあ、なんてったって、女神の才は全知全能ですから!」


「……自分が女神だってこと認めるんですね」

「は、めたわね! ……コホン、いったい何を言ってるんですか? 私は女神の使徒コテラですけど?」


 女神様はこのぐらいで許してやることにしよう。


「私は、ブブヅケ=デモ・ドウドスと言います。皆からはブブと呼ばれています。一応このパーティのリーダーと言いますか、まとめ役と言いますか、まあ私が3人の中で1番歳上ということもありまして——」


 回りくどいよ。別にリーダーでいいじゃないか。



 俺はリーダー格のブブさんに向け、本題を切り出した。

「実は、俺たちも国境付近の山岳地帯へ調査に行こうと思ってたんですよ。でも、冒険者ギルドに行ったら、もう他のパーティが調査の依頼を受けちゃったって聞いたもんで…… よかったら、俺たちと協力して一緒に調査しませんか?」


 我ながらナイスな提案じゃないか。向こうの顔を立てて、俺たちも利益を得る。

 俺は自分の提案に満足していたのだが——


「なぜ、そこまで調査にこだわるのですか? ギルドから依頼を受けた訳でもないんでしょ?」

 ブブさんが怪訝な顔をして口を開いた。


「あれ? えっと…… あっ、そうだ! 冒険者ギルドで聞いたんですよ。言っちゃあなんですが、みなさんのランクはFなんでしょ? 悪魔教徒は手強いと聞きますので、ここは我々も協力させていただいた方が——」


「僕たちのランクは確かにFですが、それは最近冒険者になったばかりだからです! 実際の僕たちの実力は——」

「ちょっと、シオス! やめなさいよ! 失礼だよ」

 弟シオスの発言をたしなめる姉シーナ。


 あれ? せっかく和やかだった雰囲気が、なんだか気まずい空気になってしまったような……


「いや、俺の方こそ失礼なこと言っちゃって…… 実は俺たちの目的は——」


 俺が本当の目的を話そうとしたところ、アイシューとホニーが、『え? 本当のこと言っちゃっていいの?』みたいな顔を向けてきた。

 ついでに言うと、女神様まで二人と同じような顔してやがる。

 別に女神様が上手いこと言って、この場を収めてくれてもいいんですよ?


 今まではパーティ内で大人なのは俺一人だったから、こういう役割を担ってきただけなんだ。だから俺よりもうんと歳上だと思われる、女神様がここで活躍してくれてもいいんですよ?


 まあ、そんな期待をするだけ無駄だよな…… そんなことを思っていると——



 ——チャラララ〜


 助かった! 天界のパイセンからメッセージだ。これぞ本当の天の助けだよ。


 でも、ここでメッセージを確認するにはちょっとマズイな。

 俺今、ブブさんたちの注目をメチャクチャ集めてるんだよね。


 メッセージが書かれた『ステータス一覧』を見てる時、他人からは俺がぼーっとしてるように見えるのだ。


 前回のターンでは『誰かに洗脳されたのかと思った』って言われたこともあったしな。


 それから淫乱神官バインバイーンには、『うわっ、また私のことを性的な目で見てるのね! 気持ちワル!』なんて言われたっけ…… チッ、また嫌なことを思い出しちまった。


 性悪バインのことは忘れるとして…… 俺たちの向かう先には悪魔教徒がいる。

 洗脳とか錯乱とか、とにかくブブさんたちに変な誤解を与えないためにも、ここは一旦席を外してじっくりメッセージを確認した方がいいな。



「あっ、すみません。ちょっと失礼してもいいですか? お手洗いに少々……」

 俺はそう言うと、街道の脇にある森を目指して駆け出した。


「ま、まあ、我慢するのも体に悪いですから…… 私たちは待ってますので、どうぞごゆっくり!」

 シーナはいたわりの声をかけてくれたのだが、女神様は——


「もう、カイセイさんったら。何恥ずかしいこと大声で言ってるのかしら。そういうことは早めに済ませておけばいいのに。きっと歳のせいで、やたらトイレが近くなったのね。まったく、困ったおっさんだこと」

と、好き放題言ってくれちゃって。


 ……これはアレか? さっきの仕返しってヤツか? いや、この人はポンコツなんだ。俺が本当にトイレに行くと思ってるんだろうな……

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