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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑥心優しいキタノ国の冒険者たち 編

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女神様にヤキモチ

「ムムっ! コテラさん、あっちにお花がいっぱい咲いてるゾ!」

「まあ、本当!」


「コテラさん、オレっちはあの赤いお花が一番カワイイと思うゾ!」

「でも、私はミミーさんが一番カワイイと思うわ」


「ムッフン! オレっちはコテラさんもカワイイと思うゾ!」

「まあまあ、ありがとうミミーさん。私、とっても嬉しいわ」


 俺とパーティメンバーのミミー、アイシュー、ホニー、それにキタノ国の道案内を名乗り出た女神の使徒コテラになりきったつもりの女神様は、キタノ国領内を北西の方角に進んでいる。



 それにしても、おもしろくない。そう、俺は今、とてもおもしろくないのだ。


 なんだよミミーのヤツ。『コテラさん、コテラさん』ばっかり言いやがって。

 前は『オニーサン、オニーサン』って言って、俺の周りにまとわりついていたくせに!


「フン、なんだよ」

 思わず愚痴を漏らしてしまう俺。


「もう…… カイセイさんったら」

 苦笑いするアイシュー。


「アンタ、ヤキモチ焼いてるの?」

 ズケズケと確信を突いてくるホニー。


 ああ、その通りだよ。なんだかモヤモヤするんだよ。この気持ちはきっとアレだ。

 父親と幼い娘が家で楽しく遊んでいたのに、用事を終えた母親が家に帰って来るや否や、『お母さんが帰って来た!』と言って、母親の元へダッシュする娘をひとり寂しく見送る父親の気持ちだ。


「あーあ。俺、将来はお父さんじゃなくて、お母さんになりたいな」


「もう…… 何言ってんだか」

 半分あきれ顔で、アイシューは微笑みを浮かべた。



「オカーサン…… あっ、間違えたゾ。コテラさん、一緒にあっちに行ってみるゾ!」

 俺たちの先頭を歩くミミーの声が聞こえてきた。


 そう言えば、ミミーは幼い頃に両親を亡くしたって言ってたな。その後は、男性の『カカリチョー』に面倒を見てもらったって言ってたし……


 ……仕方ない。しばらくの間、ミミーは女神様に任せることにしてやるか。でも、しばらくの間だけだからな!



 ♢♢♢♢♢♢



 さて、話は少しさかのぼる。


 女神様と俺たちは、キタノ国の北西に広がる国境付近の山岳地帯を目指している。

 悪魔教に魂を売り渡し、山岳地帯で悪さをしている元ナンバーズ諸国の鍛治師たちをお仕置き、いや、改心させるためだ。

 その後、ほんのささやかなお礼として、俺が持つ魔石で聖剣を作ってもらおうという腹づもりでいる。


「じゃあ、俺の風魔法を使って、サッサと国境付近の山岳地帯まで空を飛んで行きましょうか」

 俺がそう言うと、不満そうな女神様が口を開いた。


「え? カイセイさんは、これまで新しい仲間がメンバーに加わったとき、お互いに親睦を深めるため、しばらくは徒歩での移動を選択されてきたではありませんか?」


 まあ、それはそうなんだけど……


「ひょっとして! 私のことは仲間だと思ってないの? ヒドイわ!」

 ヨヨヨ、と泣き崩れる女神様。

 娘さん3人が冷たい視線を俺に向けて来る。


「いや、そんなことないですって! お前らもそんな目で俺を見るなよ。今までは新しいメンバーがみんな子どもだったから、ちょっと配慮しただけですよ。女神様は立派な大人じゃないですか」


「……コテラです」

「ああもう、メンドくせえな! でもいいんですか? 早く行かないと、パイセンに怒られたりしませんか?」


「問題ありません。パイセンは優しいですから」

 本当かよ…… そんなことを考えていたら——


 ——チャラララ〜


 あっ、なんか音楽が聴きえたと思ったら、ステータス画面——今ではすっかりメールの受信ボックスになっているが—— が強制的に開いた。


 メッセージを確認してみると——


『申し訳ないんスけど、しばらく女神様を預かってもらえますか。自分、今、女神様がやり残した書類の整理に追われてるんで。今すぐ帰って来てもらうと、また書類をグチャグチャにされるんスよね』


 今度はパイセンがメールの送信係になったのか……

 それにパイセンのヤツ、今までの機械的な着信音を着メロに変えてるし。無駄に有能なヤツだよ、まったく。

 まあ、そういうことなら、ゆっくり徒歩で行ってもいいか。

 それにしても、なんだよパイセンのヤツ。俺は女神様のお世話係じゃないぞ?



 そんなわけで、俺たちはしばらくの間、徒歩でキタノ国の北西を目指すことになったのだ。


 それから、女神様は、『コテラ様』などとと仰々(ぎょうぎょう)しく呼ぶのではなく、もっとフレンドリーに話しかけて欲しいと言ってきた。


 ただ、真面目なアイシューだけは、まだ少し戸惑っているようで、

「あの、コテラさまぁ……ん」

と、なってしまう。やっぱ女神様を、『さん』付けで呼ぶのは抵抗があるんだろうな。

 でも、なんだかもだえているように聞こえるぞ? なんてアイシューに言ったらエライことになるので、本人には絶対に言わないが。



「それから、カイセイさんは日本の風習に従って、年下の私に丁寧な言葉遣いをしなくて結構ですからね?」

 女神様はそういうのだが……


「でも女神様…… じゃなくて、コテラ様は俺より年上ではないんですか?」

 見た目は若そうに見えても、女神様って不老不死の存在じゃないのか? よく知らないけど。


「ヒドイ! ひょっとしてカイセイさんは私のことを、スッゴいババアだと思っていたのですか?」

 またヨヨヨ、と泣き崩れる女神様。

 あ、ちょっと楽しそうにしてやがる。これ、さっきやったら意外と面白かったんで、またやってるんだろうな。


 また娘さん3人が冷たい視線を俺に向けて来る。


「ああもう! わかりましたよ、いや、わかったよ! じゃあ、えっと…… コテラ、これからよろしくな」


 こうして俺は、この面倒くさい設定を遵守じゅんしゅさせられることになった。

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