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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑤女神テラ様降臨 編

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70/219

全人口に占めるホニーの割合

「疲れた……」


『女神様の部屋』から退出し、祈祷所内にある休憩所に戻って来た俺。

 するとそこには、俺と同じく疲れた顔をしたアイシューが待っていた。


「アイシュー、大丈夫か?」

「……少し疲れたみたい」

 そりゃ、そうだろう。この世界の時間が巻き戻ったことや、魔王が復活するなんてことを聞かされたら、そりゃ頭が混乱するだろう。



「あの…… なあアイシュー。なんて言うか…… 今までいろいろ黙ってて悪かったな」

「え? どうして謝るの? この世界についての禁忌だから黙ってたんでしょ?」


 まあ、禁忌というか、女神様から口止めされてたんだけど。アイシューは前回のターンのこととか、いろいろ聞きたいのかな? それとも何か心安らぐヒーリング的な話をするべきか?

 えっと…… こんな時、俺はなんて声をかければいいんだ? あー、もう、年頃の娘さんの考えてることなんて、サッパリわからないや。


「もう…… カイセイさん、なんて顔してるの?」

「え? 俺、どんな顔してる?」


「とっても困った顔」

「ハハハ……」


『ハァー…… 』と、一つ大きくため息をついた後、アイシューの口から、か細い声が漏れてきた。

「あのね、カイセイさん。私は今、頭の中が混乱してるし、これから自分が何をすれば良いのかわからなくなったの。でもね…… 話を聞いて良かったって思ってることもあるのよ」


「何だよ、良かったことって?」

「私、今まで不思議に思ってたの。どうしてカイセイさんが、初対面の私やホニーに優しくしてくれるのか」


「え? なんだよ、それ?」

 俺、アイシューに優しくしてたのか?


「カイセイさんがミミーちゃんを可愛がるのはわかるの。だって、カイセイさんはミミーちゃんのことを実の娘みたいに思ってるでしょ? でも、私やホニーは娘という感じでもないし…… それに私やホニーは、結構カイセイさんに酷いことも言ってるのに……」


 酷いことを言ってる自覚はあったんだな…… なんてことはどうでもいいや。


「カイセイさんにとって、私やホニーは初対面じゃなかったのね。だから私たちのことをいろいろと助けてくれるのね」


「うーむ…… 実はそうなんだ。前回のターンで、俺は二人と会ってるんだ。俺は二人のことをよく知ってるんだよ。お前らが責任感の強い勇気のあるヤツらだってことをな。それから…… とても繊細なヤツらだってこともな」


「私の知らない未来があったのね」

「未来じゃないさ。俺、今となっては、長い夢を見ていたような気持ちでいるんだ。だって、本当の未来はこれから作っていくものだろ?」


「そうね。じゃあその、『私の知らない未来』については、あまり考えないようにするわ」

「ああ、それがいい。これからどういう未来を作っていくか、そっちを考える方が大切だからな」


 アイシューが少し微笑んだ。先ほどの青白かった顔色に、少し赤みが戻ったように思う。

 これからもアイシューとはこんな感じで、彼女が不安を感じたときには、こうやって一緒に不安を取り除いていければいいな。俺はそんなことを思った。



 さて、俺は改めて休憩所の中を見渡した。そして——


「女神様はもう休憩所で待ってるって話じゃなかったっけ?」

「ホニーとミミーちゃんと一緒に、ホコーラの街の観光に出かけられたわ」


「アイシューは一緒に行かなかったのか?」

「疲れてたから、私はお留守番をさせてもらうことにしたの」


「ふーん。バーサンさんの姿も見えないようだけど?」

「女神様が心配だからって、ついて行かれたわ」

 巫女から心配される神様って、どうなんだろう。


「ミミーとホニーは大丈夫なのかな」

 俺はそう思い、何気なくつぶやいた。俺のつぶやきを聞いたアイシューが、


「それ、どういうこと?」

と、聞き返してくる。


「いやなに、本当は疲れてるのに、無理して女神様に付き合わされてるのかなって思って」

「…………元気だったわ、とっても」

『ハァー…… 』と、また大きくため息を吐くアイシュー。


「ミミーちゃんは、なんだか女神様に懐いてるみたいね。ミミーちゃんはまだ小さいからいいのよ…… でもホント、ホニーったら……」


「ん? ホニーがどうかしたのか?」

「日本から来た異邦人がよく出入りしてた食事処があるって聞いたら、もう大はしゃぎで……」


「ホニーはブレないな…… ある意味、肝が据わってるのかな」

「単なる日本文化バカだと思うわ」


「……そうだよな」

「でもバカっていうのは、良い意味でも悪い意味でもバカってことよ?」


「……解釈の難しい表現だな。まあ確かにホニーみたいな良い意味でも悪い意味でもバカなヤツは全人口に一人ぐらいは必要だな」

「何それ。えらくウッスイ割合ね」


「だってそうだろ? 10人のうち9人が、ホニーみたいなヤツだったらどうするんだよ」

「そうね。人類という種の絶滅が目に見えてるから、仕事を辞めて残りの人生をエンジョイするわ」


「オマエ、筋の通った生き方してんな……」

「もう…… なんでホニーの話なんてしてるのかしら……」


 なんとなく、ホニーの話をすると落ち着くのかもしれないな。きっと家族の一員のような感覚なのだろう。


「さて、じゃあこれからの話なんだけど。俺は女神様のご意志に従い行動するつもりだ。だからお前たちは無理して俺と一緒にいなくても——」

「カイセイさん、怒るわよ!?」

 俺の発言をさえぎるアイシュー。そして——


「もちろん約束通り、あなたが逃げろと言ったらちゃんと指示に従うわ。あなたからすると、私たちは戦力にならないのかも知れない。でもね、私やホニーやミミーちゃんは、カイセイさんのパーティメンバーなんでしょ? 違うの?」


「違わないさ」

 アイシューの勢いに押され、少し驚きながら答える。


「ふふ、実はカイセイさんがここに来るまで、女神様…… じゃなくて女神様によく似た使徒コテラさんも交えて、これからのことを話し合ったのよ。3人ともこれまで通り、カイセイさんと一緒にレベル上げの修行の旅を続けることに決めたから。反論は認めないからね」


「そうか。わかったよ。じゃあ、これからもよろしくな、アイシュー」

 アイシューたちがそう決めたんだ。それなら俺は3人の気持ちを尊重することにしよう。俺のレベルは99だ。危なくなったら守ってやるさ。


「ええ! こちらこそよろしく!」

 アイシューが、力強く元気いっぱい答えた。


 さて、アイシューの元気も戻ったようだし、俺たちもホニーたちを追いかけようかと思っていたところ……


「そうだ、カイセイさん。女神…… いえ、コテラさんが書き置きを残されているの。カイセイさんに渡して欲しいって」


 アイシューから渡された紙を見ると——


『カイセイさんがなかなか戻って来ないので、先にホコーラの街観光に行って来ます。今、この街で人気のお店があるんですよ。お店の会員になって、お友だちをそのお店に連れて行くと、とってもお得な割引があるの。お友だちも会員になると、なんと私までお金をもらえちゃって——』


「アイシュー、早く女神様を止めに行くぞ!」

 女神様…… あなたはとても純粋な人ですね。良い意味でも悪い意味でも……

次回から、新章『意外とユカイな悪魔教徒 編』が始まります。

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