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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑤女神テラ様降臨 編

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覚悟はあるのか

 娘さんたち3人は、『女神様の部屋』から退出した。ここに残っているのは、俺とパイセンの2人だけだ。


「おいパイセン、いい加減にしろよ。ホニーに何を教えてるんだよ」

「え? 自分の地域の『指切り』はさっきの歌詞で…… って、冗談っスよ。ほら、ホニー氏はカワイイから、ついイジワルしたくなるんスよ。これでも自分はホニー氏のこと、妹のように思ってるんスよ? 本当っスからね?」

 ニヤニヤしながら語るパイセン。


 確かに、ホニーをイジるとちょっと楽しいのだ。まあ、パイセンの気持ちもわからなくないが……


「でも、ほどほどにしてくれよ。尻拭いするのは、ホニーの師匠の中二ネタだけで十分だからな」


「なんだかカイセイ氏は、本当にお父さんみたいっスね」

「セバスーさんやホノーノさんはじめ、ヒトスジー家のみなさんに、『ホニーのことは任せて下さい』って、大見得おおみえ切っちまったんだ。だからまあ…… 保護者みたいな気持ちではいるよ」


「そんな保護者なカイセイ氏に質問があるんス…… あー、もう、この喋り方、メンドくせえや! 今は女神様がイネエから、これでいいか」

 なんだかパイセンから、ヤサグレ感が滲み出てきた。


「お前、実はガラが悪かったのか?」

「失礼なこと言う人だな。アタシは元体育会系女子なんだよ。高校の頃はソフトボール部だったんだ。天界では丁寧な言葉遣いをする決まりになってるから、仕方なく従ってるだけだよ」


「……あれが丁寧な言葉遣いなのか?」

「まあ、減給の対象にならないギリギリのラインで妥協してるのさ。女神様の前でこんな喋り方をしたら、勤務評価を下げられるんだよ」


「……天界にも労務規則みたいなものがあるんだな」

「ああ。法令遵守な毎日だよ、クッソッタレ!」


 お前のせいで、日本中のソフトボール部の人たちが誤解を受けるぞ? なんてことは置いといて。


 うーむ…… やっぱりパイセンはよく物事を考えるタイプの人間、じゃなくて使徒のようだな。俺だったら、きっと嫌々ながらも一般的な敬語を使う以外の選択肢なんて思いつかないだろうから。こういう頭のキレるヤツって羨ましく思うよ。


「俺にはきっと、天界生活は向かないだろうな…… なんてことより、お前、俺に何か聞きたいことがあったんじゃないのか?」



「ああ、そうだよ。なあ、アンタはあの娘さんたちのことどう思ってんだ?」

「…………おい。言っておくが、俺はロリコンじゃネエからな」


「…………アンタ、相当辛い目にあってるようだな。心からご同情申し上げるよ。いや、アタシが言いたいのはそういうことじゃなくて。アンタ、あの娘さんたち3人を、本当に対魔人族戦の『戦力』として考えてないのか?」

 なに言ってやがるんだ、コイツ。とてもイラッとしてきたぞ。


「そんなわけネエだろ? フザケたこと言ってるとあの世に送るぞ?」

「アタシは半分あの世にいるようなもんなんだけど…… 普段は天界にいるからね。そんなことはどうでもいいよ。……まったく、ガラの悪いのはどっちなんだか」


「俺も元体育会系なだけだ。なあ、お前、何が言いたいんだよ?」

「アンタはなんで、あの3人のレベル上げを手伝ってるんだ?」


「あの3人が、強くなることを望んでいるからだ。それだけのことだ。アイツらに魔人族と戦わせるつもりはない。絶対だ!」


「………………ふーん。じゃあもし、今、魔人族が人間属領に攻めてきたら、アンタどうするつもりなんだ?」

「俺が戦うさ」


 まったくまどろっこしい。いったいコイツは、何が聞きたいんだろう?


「女神様は話し合いでの平和を目指されているのに?」

「お前、何が言いたいんだよ? 俺だってもちろん戦いなんてしたくはないさ。でも、魔人族が『敵』になって攻めて来たら、戦う以外の選択肢なんてネエだろ?」


 ひょっとして…… パイセンは俺が女神様の願いを100パーセント受け入れ、戦闘行為を完全に否定しているとでも思っているのだろうか? 俺自身は戦わずに、周囲の人間を戦争の駒にするとか思ってるのか? うーむ…… ならば、もう少し説明を加えるべきか。


「魔王の復活は4年後。これは確定事項なんだろ? なら、今のところ、可能性として俺が相手にする最強の敵は、魔人族四天王ってことだよな? おれはジョーキューシャーのダンジョンで、レベル85のダンジョンボスを1分もかけずに倒したんだ。レベル85って言えば、魔人族四天王クラスじゃネエか。今の俺はレベルは99なんだから、俺一人が戦えば済むことだよ」


「……戦う覚悟はあるんだね。ならアンタ、いや、岸さん。もしも魔人族が前回のターンよりも早く行動を起こした場合、アタシと手を組んで欲しいんだ。女神様はお優しいから…… きっと判断が遅れると思うんだ」


 確かに。女神様が俺に戦闘の指示を出すことなど、おそらくないだろう。


「アタシと一緒に戦って欲しいんだよ! アタシだってアンタと同じで、もう見てるだけはイヤなんだよ!」

 ああ、そうか。パイセンも天界から見てたんだな、前回のターンを。

 前回のターンの対魔人戦では、俺はいつも安全な本陣に身を置いて、同胞たちが前線に向かうのをただ見ていることしか出来なかった。そんな俺の気持ちもわかってくれてるんだな。

 なんだか…… ちょっと嬉しいよ。でも——



「なあパイセン。それはお前も戦争に加わるってことなのか?」

「違う。武力を用いて強制的に戦争を止めるんだ」


「女神の使徒が武力を用いてもいいのかよ?」

「ダメに決まってるだろ。でも、他のヤツらが死ぬよりよっぽどマシだ。だからアタシはやるんだ」


「それって、お前が罰せられたり——」

「ウッセエな! アタシのことをアンタが考える必要なんてないんだよ! アンタはどうするかって聞いてんだよ!」


「わかったよ。だからちょっと落ち着けよ。戦闘になった場合は俺もパイセンに協力するよ。でもいいか? あくまで戦うのは俺だ。お前は知恵を出せ。お前、頭が良いんだから。それで、俺が危なくなった時だけお前の武力を貸して欲しい」


「なんだよ、それ…… アンタから見たら、アタシもあの娘さんたちと同じで、守るべき自分の娘みたいなモンだって言いたいのかよ?」


「フフフ…… アハハハ!!! 違うぞパイセン! さっき言っただろ? 俺の名前は岸快晴、高等学校教諭一種免許状を持つものだ!!! 俺は日本政府から、18歳以下の者を守る義務を課せられているのだ!」


「……………………」


「……悪かったよ。ちょっとフザケただけだよ。さっきのお返しだよ。まあでも、まずは俺が戦うからお前の武力はここ一番って時に取っとけよ。いいか? 俺も女神様も感情が爆発してしまうタイプだと思うんだ。だからパイセンには理性的であって欲しいんだ。みんながアツくなったら、収拾がつかないだろ?」


「……わかったよ」


「俺は女神様が掲げられた理想のもと、戦争を回避するため全力を尽くす。ただ、もし俺の力及ばず、魔人族との戦闘が不可避となった場合はパイセンの戦術に基づいて戦う。これでどうだ?」


「了解だ。いや、了解っス。自分も女神の使徒として女神様のご意向に従い、話し合いでこの世界を平和に導く戦略を考えるっス。ただ、もし自分の戦略ミスにより、魔人族との戦闘が不可避となった場合は、アタシが岸さんに対魔人族戦の戦術を伝える。そして、岸さんが窮地に陥った場合は、アタシが武力を用いて戦闘に介入する」


「ああ、それでいい。でも戦闘を行うのは『俺の力が及ばなかった』場合だ」

「いいや、アタシ…… いや、自分の『戦略ミス』の場合っス」


「……お前、意外と頑固だな」

「……カイセイ氏こそ、融通が利かないっスね。そんなことだからモテないんスよ」


「…………おい、なんだかそれって、まるでなんでもお見通しみたいな言い方だな?」

「…………はい、前回のターンからずっとお見通しっス」


「………………ちなみに、それはいつ頃からでしょうか?」

「最初からっス」


「……………………パイセンさん、これからも仲良くしましょうね?」


「心配しなくても大丈夫っスよ。カイセイ氏の恥ずかしい過去をバラしたりしないっスから。カイセイ氏が前回のターンが始まったばかりの頃、バインバイーン氏に好意を持たれていると勘違いして舞い上がってたこととか、夜、一人ベッドの中でバイン氏が来るんじゃないかとドキドキしてたこととか——」


「パイセンさん!!! 俺、あなたと親友になれて、とても嬉しいです! これからもどうぞよろしく!!!」

 あー!!! 思い出すだけで恥ずかしい。あー!!! あの時の俺をブン殴ってやりたい。あー!!! 今すぐ消え去りたい。あー!!!

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