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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
⑤女神テラ様降臨 編

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パイセン登場

「どうぞ、入って下さい」


 女神様が入室を促すと、天界側のドアから一人の女性が部屋に入って来た。


「あのー、このままだと話がまったく進まないと思うんっスけど……」

と、面倒くさそうにつぶやくその女性。


「ああ、皆さんに紹介しますね。彼女は女神の使徒をしている『パイセン』です」


 あの、女神様? 『パイセン』って人名じゃないですよ? それって、ちょっとお茶目な敬称ですよ? それに『この人はパイセンです』って言われて、『ああそうですか』って納得するヤツなんているわけないでしょ?


「あっ、パイセンだ!」

 ホニーがつぶやいた。


 …………なんだよ、いるのかよ、納得するヤツ。


「アタシ、ホニーよ。覚えてる!?」

 しかも顔なじみかよ。


「もちろん覚えてるっスよ。自分のこと覚えててくれたみたいで嬉しいっス。ホント久し振りっスね、ホニー氏」

 えっと…… なんだろうこの人。ひと昔前のオタクな人みたいな喋り方なんですけど。


 それにしてもこの人、キャラは強烈だけど、見た目はスっごく美人だな。キレイというよりカッコいい美人って感じだ。どこかの歌劇団の男役のようだ。切れ長の目元が涼やかですこと。それにスポーツ選手のような短い髪が、一層ボーイッシュ感を出してるじゃありませんか。


「えっと…… そこのカイセイ氏? なんか自分、今、スっごく性的な目で見られてるような気がするんスけど?」


「ハァ………… まったく、天界にはまともなヤツはいないのかよ。しかし残念だったな、そこのパイセンさんよ。アンタがいくつか知らないが、俺にはアンタがまだ高校生ぐらいの年齢に見えるんだよ。俺の目は、18歳以下の女はみんな子どもに見える仕様になってんだよ!」


「なんスか、その仕様って?」

「教育実習仕様だ! 高校へ教育実習に行って以来、俺の目は女生徒を性的な目で見られない仕様になったのだ!」


「へぇ…… 意外っスね。カイセイ氏、教員免許持ってたんスね」

「お、おう…… って、あれ? アンタ、教員免許って知ってんの?」


「はあ、まあ。自分の兄貴、教育学部に行ってたもんで」

「えっ? お前、ひょっとして元日本人なの!?」


「そうっスよ」

「……淡白な答えだな。同じ日本から来た転生者と出会ったんだから、もっと感動しろよ」


「自分、女神の使徒なんで、日本から来た転生者って結構な数、知ってるんスよね」

「……ああ、そうですか」


「チョット、カイセイ! いつまでパイセンを独り占めしてるのヨ! アタシにも話をさせなさいよネ!」


 そうだった。なんかホニーはパイセンと顔なじみみたいなことを言ってたからな。


「チョット、パイセン? 今更だけど、アタシがパイセンと知り合いだってこととか、アレをもらったこととか、みんなに喋ってもいいの?」

「この面子めんつならかまわないっスよ」


「そうなのね! じゃあ、いいこと、カイセイ。よく聞きなさいよ! アタシは子どもの頃、このパイセンからスっごいスキルをもらったのヨ!」


「え? ユニークスキルって、転生者にしか与えられないんじゃないのか?」

 俺は疑問の声を上げた。それに対し、パイセンが答える。


「あー、それはっスね。ホニー氏に授けたのは、ユニークスキルとはちょっと違う、この世界の人用のスキルって言うか……」


「へぇ、そんなのがあるんだな。初耳だよ。でも、俺のユニークスキル『人物鑑定』でホニーを見たときには、そんなスキル表示されなかったぞ?」


「ああ、この世界の人用のスキルには攻撃系のものはないんで、別に表示しなくてもいいかなって思って。ユニークスキルを作ったりイジったりするのって、結構メンドいんっスよ」


「あの…… ひょっとしてパイセンさんが、すべてのユニークスキルをお作りになられたとか?」

「そうっスよ」


「……淡白な答えだな。ここはひとつ、面白解答でもかましてやろうとか思わないのか?」


「……ひょっとして、自分のことも女神様みたいにポンコツだと思ってるんスか?」

「思ってないよ…… ちょっと期待しただけだよ……」


「チョット! なんでカイセイばっかり喋ってんのヨ! アタシにもスキルの話をさせなさいよネ!」

「そうよそうよ! 私だって喋りたいんですからね!」

 お腹立ちのご様子のホニーと女神様。


 そう、俺はこう言う反応を求めていたんだよ。俺、いつの間にか、女神様のポンコツリアクション中毒になってたのかな?


「わかったよ、わかりましたから! じゃあ、まずはホニーの話を聞くから…… おいミミー、お前、しばらくの間、女神様と遊んでさしあげなさい」


「ムムムムっ……」


「おい、どうしたんだよミミー? なにモジモジしてんだ?」

「…………オレっち、ちょっと恥ずかしいゾ……」


 おい…… ここにきて、まさかの人見知りかよ。


「ふっふっふ、大丈夫ですよミミーさん。こんなこともあろうとコレを用意してたんです」


 そう言って女神様がちゃぶ台の下から取り出したのは——


「じゃじゃーん! かき氷機!」

 変な効果音についてはツッコまないことにして…… 女神様が取り出したのは、上の方に付いてる突起物をゴリゴリ回してかき氷を作る機械だった。


「ミミーさん、以前宇治金時が食べたいって言ってたでしょ? だから私、用意してたんです」


 そう言って、今度は何もなかったはずの空間から、シロップやら缶詰に入ったアンコやらを取り出した。


 おい、なんだよコレ? これって空間魔法みたいなものなのか? こんなスゴイ魔法、この世界にもあったのか? このスゴい魔法、わざわざ宇治金時を作るために使ってるのか? そんな収納スペースがあるのに、なんでかき氷機はちゃぶ台の下にしまってたんだ? ああもう、ツッコミどころ満載だよ、女神様!


「じゃあ、私とミミーさんで、一緒に宇治金時を作りましょう!」

「オウっ! オレっち、テラ様と一緒に作るゾ! そして食べるゾ!」


「なんだよ! 俺も食べたいぞ! 俺もそっちに混ぜてくれよ!」

 俺が二人に向かってお願いしていると——


「チョット、カイセイ!!! アンタにとって、アタシの話はかき氷以下なの!? アタシの話は宇治金時より甘くて切ないんだからネ!」


 甘くて切ないスキルなんて、あるわけないだろ……

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