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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
④はじめてのダンジョン 編

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幕間(説明回) テラ様オンリー信者

今話はこの世界についての『説明回』です。特に前半部分は説明が多いので、面倒な方は、どうぞ読み飛ばして下さい

 俺は今、ミミーとともに、宿屋を目指してジョーキューシャーの街を少し涙目で歩いているところだ。


 先ほどホラ吹き神官バインのせいで心に深い傷を負った俺であったが、こうしてミミーと話をしながら歩いていると、不思議と心が癒される。


 俺はミミーに、教会の連中の噂話やイカガワシイ話などを面白おかしく話していた。ちょっとした腹いせだ。そんな中、ふとミミーがつぶやいた。


「オニーサン、オレっち小さい時、よく『教会』には行ったのに、『聖堂会』には行ったことがないゾ。獣人族の人たちも絶対『聖堂会』には行かなかったゾ。オレっち、なんか不思議だったんだゾ?」


「ああ、それはだな…… ちょっと話が長くなるけど、ちゃんと俺の話を聞けるか?」

「オウっ! オレっちは『聞き上手のミミーさん』だゾ!」


 確か前にも、そんなことを言ってたな。じゃあ、前回同様、今回も出来るだけ簡単に説明するよう、俺も心がけてみるか。



「まず、『教会』と『聖堂会』は成立した時期が違うんだ。えっと…… 教会はかなり前、聖堂会はちょっと前にできたんだ」


「オウっ! オニーサンの話し方の中に、オレっちにわかりやすく伝えようとする、創意工夫が感じられるゾ!」


「……それはどうも。えっと…… なんだっけ? そうそう、『教会』は、白魔法と黒魔法を作った第2世代女神ナントー様にお祈りするために作られたんだ。そんでもって、『聖堂会』は、火・水・風の3魔法を考えた第3世代女神マエノー様にお祈りするためにできたんだよ」


「『教会』は2番目の女神様の時にできて、『聖堂会』は3番目の女神様の時にできたのカ」

「おっ、その通りだ。なんだよ、流石『聞き上手のミミーさん』だな」


「ムッフン! 」

 この調子なら、ちゃんとミミーに伝えることが出来そうだな。よし、話を続けよう。



「これは前にも話したと思うんだけど、この世界には最初に女神様が4人いて、次は2人になって、その次からは1人になったんだ。どうだ、覚えてるか?」


「オウっ! 女神様の『人員削減』だゾ!」

「お前、時々難しいこと言うよな……」


「フフッ、オレっちは元嘱託公務員だゾ」

「お固いんだか自由人なんだか微妙な役職だな…… まあいいや。『教会』を作った2番目の女神様は、獣人族と人間族、二つの種族の女神様だったんだ。だから今でも獣人族の人たちには人気があるんだよ」

 ちなみに、魔人族と森林族の女神様はホクセー様って人だったんだけど、まあ、今その話はしなくてもいいな。


「ところが聖堂会を作った3番目の女神様は、4つの種族全ての女神様になったのに、人間族中心主義…… えっと…… 人間族をこの世界の支配者にしようと考えたんだ。だから、未だに獣人族のからの評判は悪いんだ。この話は前にもしたよな?」


「オウっ! オレっちたち獣人族は、3番目の女神のマエノー様が嫌いな人が多いゾ!」


「そうだよな。で、その次に女神様になったのが、我らがテラ様ってわけだ。さて第4世代女神にして、現在唯一の女神であるテラ様は、全ての種族を公平に愛すると宣言された。だから『聖堂会』も、テラ様が女神になった時、テラ様の教えを受け入れると決めて、人間族中心主義の考え方は放棄したんだ」


「『聖堂会』は人間族だけをヒイキするのをやめたのカ?」

「そうだ。でも、これはタテマエと言うか…… 中には今でも人間族が優れていると考えている聖堂士も…… 残念ながらまだいると思う」


 うーむ…… こんな話をミミーにするべきなのか悩む。でもやっぱりちゃんと真実を伝えるべきだな。


「でもな、ほらアイシューみたいに、テラ様の教えをきちんと理解している人は、全ての種族は平等だと考えてるんだ。アイシューはミミーにエラそうなこと言ったりしないだろ?」


「オウっ! アイシューはとっても優しいゾ! どっちかと言うと、ホニーの方がエラそうだゾ。ムムっ!? もしやホニーは隠れマエノー様オンリー信者なのカ?」


「なんだその『オンリー信者』って? テラ様を信仰せず、マエノー様だけを信仰してるってことか? いや、アイツは誰にでもエラそうなだけだよ…… なんなら俺に対してもエラそうだし」

 とは言ったものの、ホニーはマエノー様のこと、いったいどんな風に考えてるんだろう? 機会があれば一度聞いてみたいな。



「ホニーの話は置いといて…… 『聖堂会』は現在でも、第3世代女神のマエノー様と現世代女神のテラ様、この2柱の女神様を信仰の対象としているんだ。でも地域によっては、マエノー様にばっかりお祈りして、テラ様はオマケみたいな扱いをしてるとこもあるんだよ。なんだかテラ様ってちょっと影が薄いんだよな……」


 俺がこう言った瞬間——


 空は晴れているのに、雷の音が天空に鳴り響いた。


 ヤバい…… テラ様をちょっと怒らせてしまったようだ。気をつけよう。


「一方の『教会』は、第2世代女神のナントー様と現世代女神のテラ様、この2柱の女神様を信仰の対象としているんだ。『教会』でもやっぱりナントー様を重要視する人の方が…… いや、なんでもない! 俺は何も言ってませんよ!」


「オニーサン、誰かと喋ってるのカ?」


「いや、なんでもないさ。そうそう、だから『教会』でも『聖堂会』でも、どっちでもテラ様にお祈りすることが出来るんだ。でも、やっぱり獣人族の人にしたら、カンジの悪い『聖堂会』より、獣人族に偏見を持たない『教会』でテラ様にお祈りしようと思うよな」


 あと、それに加えて——


「それから繰り返しになるが、教会で信仰している第2世代女神様ナントー様は、獣人族と人間族、2種族の女神様だったんだ。だから教会の人たちは、獣人族と人間族は仲間だと思ってるんだよ。ミミーも教会の『学校』へ行ってたし、さっきの教会にも獣人族の子がいただろ?」


「オウっ! 教会の人たちはいい人たちだゾ!」

「確かに…… 獣人族への偏見が無いってことに関してはそう言えるかも知れないな。あの嘘つきで金遣いが荒くてハレンチで厚顔無恥でそれからそれから…… ああもう、この世の罪悪全てを身にまとっていると言っていい、あのバインバイーンでさえ、獣人族への偏見はなかったからな」


「オニーサン…… 心中お察ししますだゾ……」

「……そう言ってくれるのはミミーだけだよ」


 ミミーに同情されてどうすんだよ。まったく俺はなに言ってんだか。まあいい、話を続けよう。


「ただ、『教会』は、白魔法の使用権を独占してるんだ。『教会』に所属している者以外は白魔法を使うなって言うんだよ。もしも勝手に使ってるのがバレたら、高額の使用料を請求しやがるんだ」


 実際、俺も前回のターンでは、バレないようコッソリと白魔法を使っていた。ただ、流石に魔人族との戦争が始まったら、そんなこと言ってられなくなったんだけどな。まあ、今はその話はいいや。


「まあでも、『聖堂会』も『教会』ほどガメツくないけど、似たようなとこはあるかな」

 火・水・風の新魔法について、初級までの魔法の使用なら、『聖堂会』もウルサイこと言わないんだ。でも中級魔法を使えるようになると、ヤレ年会費を払って『聖堂会』の会員になれだの、ヤレ寄付金を払ってミサに参加しろだの、ヤイノヤイノと言われたもんだよ。



「まあ、だから俺は、『教会』も『聖堂会』も、どっちもあんまり好きじゃないかな」

「ムムっ? じゃあ、オニーサンは、テラ様にお祈りしないのカ?」


「そんなことはないぞ。『教会』や『聖堂会』の中には、ごくまれに、ほんの少しだけ、そりゃあもう数える程度だけど、テラ様をちゃんと崇拝しているところもあるんだよ。俺はそこに行ってお祈りしてたぞ」


 と言っても、それは前回のターンでの話なんだけど。最近は旅の道中にあることが多いので、ちゃんとお祈りに行ってないな。あれ? でも最近頻繁にメール? でやり取りしてるから、別にお祈りに行かなくてもいいのかな?


「それから、テラ様だけをお祀りしてる『祈祷所』っていうものあるんだけど…… そこはこの世界に1ヶ所しかないんだ」


「キトージョ?」


「やっぱり聞いたことないよな…… ほら、俺たちが行こうとしてるホコーラの街。あそこにその『祈祷所』ってのがあるんだよ」


「なんで1ヶ所しかないのか、オレっちにはわからないゾ?」


「ほら、テラ様ってあんまり人気ないから…… イマイチ『祈祷所』も普及しないんだよ…… もう、ぶっちゃけ言うと、『教会』とか『聖堂会』とか、もともとあった組織にテラ様がなんか便乗して、気づいたら『あれ? テラ様も信仰の対象になってるけど、まあいいか』みたいな感じだったそうで…… あっ、しまった!」


 気づけば空一面がドス黒い雲で覆われていた。


「ちょ、ちょっと待って下さい! 話は最後まで聞いて下さいよ!」

 ヤバイ…… 俺、今ロックオンされてると思う。


「いいかミミー、ここからが大切だ。これまでの女神様は、自分の影響力を下界に広めようとして、自分だけを崇拝の対象とする『教会』やら『聖堂会』やらを下界の人に作らせたそうだ。でも、我らの愛するテラ様は、他の女神様も自分と一緒に信仰しても良いと言われたのだ! なんと寛容な方であろうか!」


 ここまで一気にまくし立てた。でも…… ハァ…… なんか疲れた。なんだか自分で言ってて、バカらしくなってきた。


「ハァ、もういいや。要するに、テラ様は自分だけを信仰する『テラ信者』を作りたくなかったのさ。実際、過去には『マエノー信者』の『聖堂会』が、『ナントー信者』の『教会』を殲滅するための聖戦を起こしたそうだからな」


「ムムっ! 戦争しちゃ、ダメだゾ!」


「そうだよな。だから、テラ様は自分がエラくなるより、みんなが平和に暮らしてくれる方が嬉しいんだよ。な? テラ様ってカッコいいだろ?」

「オウっ! オレっちは、テラ様のファンだゾ!」


「そうだな。尊敬を向けられるより、親しみを向けられる方が、ひょっとするとテラ様も嬉しいのかも知れないな。『教会』や『聖堂会』のような信仰の場じゃなくて、ライブハウスとか演芸場みたいな施設を作って、テラ様を盛り上げた方がいいんじゃないかな? 『祈祷所』なんて堅苦しい呼び方もやめて、『テラスペース』とか『テラ座』とかにすればいいのに」


 ドス黒い黒い雲が晴れ、俺の頭上には再び青空が広がった。どうやらテラ様もお気に召したようだ。


 青い空のキャンバスに、白い雲でなにやら文字が書かれている。どうやら日本の文字のようだ。なになに——



『イ・イ・ネ・!』


 はいはい、ありがとうございます。どうでもいいけど、テラ様って本当に日本のこと詳しいよな?


♢♢♢♢♢♢


さて、俺の話を聞き終わったミミーなんだが……


「ムム? でもオニーサンの話だと、なんだかアリガタミがなくなると思うゾ?」

 意外にも、ちょっと不満な表情を見せている。


「何言ってんだよ。もともとテラ様にありがたみなんてないだろ? なあ、ミミー覚えてるか? ハジマーリの街の教会で『学校』が終わる時間になると、どこからともなく現れてた移動式の怪しい駄菓子屋さんのこと」


「オウっ! よく覚えてるゾ! 『女神様印の御利益堂』だゾ!」

「ああ。アイツら実は教会の外郭がいかく団体の職員なんだ。勉強に来た子どもから小銭を巻き上げるふてぇ野郎どもさ」


 前回のターンでは、俺はハジマーリの街に半年ほど滞在していた。この世界のことをよく知ろうと思い、街の中をいろいろ散策して回ったもんだ。だから、その駄菓子屋もよく利用していたのだ。


「それで、お菓子を買ったら駄菓子屋のおっさんが1枚シールをくれただろ?」


「オウっ! 『ナントー様シール』が出たら、もう一つお菓子をくれるんだゾ! でも、オレっちはいっつもハズレシールばっかりだったゾ」


「そうそう。で、『なんだよ、ハズレばっかりじゃないか』って言ったら、御利益堂のおっさんは、『いいえ、それはハズレではありません。『テラ様シール』です』って言うんだよな」


「オウっ! 『ナントー様シール』なら1枚でお菓子と交換してくれるのに、『テラ様シール』は100枚貯めないと交換してくれないんだゾ!」


「アハハハ! そうそう、そんなの、事実上のハズレじゃねえか。でも御利益堂のおっさんは、かたくなにハズレだって認めないんだよな」


「オウっ! オレっちが『テラ様シール』を捨てたら、おじさんが怒るんだゾ。『この不心得者ふこころえもの』って」


「アハハハ!どっちが不心得者だよ。ハズレシールの名前にテラ様の名前を付ける方がよっぽど不心得者じゃないか。それでさ、100枚も貯めるの無理だから、俺、こっそりおっさんの服に『テラ様シール』を貼ってやったんだよ。しばらくしてそれに気づいたおっさんが、『なんだこれ!』って言いながら、シールを剥がして、その辺にペッて捨てやがったんだ。なんだよ、お前だって捨ててるじゃねえかよって大笑いで——」


 ——ガラガラガラガラ!!! ズドーーーーーン!!!



 ……………………目の前が真っ白になった。周りの音がよく聞こえない…… 前回のターンで魔人族四天王にぶん殴られた時みたいに、体が物凄く痛い……


「オ、オニーサンの頭の上に、カミナリが落ちたゾ…………」


 め、女神様ってば、相当ご立腹だったんですね…… でも、やり過ぎですよ。これ、レベル99の俺じゃなかったら、即死ですよ。それに、悪いのは俺じゃなくって、御利益堂のおっさんじゃないですか……


「オニーサン、大丈夫カ?」

「だ、大丈夫だ」

 俺は自分に向けて白魔法(治癒魔法)を使った。まったく…… 女神様の喜怒哀楽の激しさには困ったものだ。



 よほど大きな音がしたのだろう。俺を心配する人達が周囲に集まって来た。


「おい、アンタ大丈夫か?」

「ちょっと、しっかりしなさいよ!」

「医者を呼んでやろうか?」


 そんな心優しい人たちの声に混じって、おそらく教会の関係者であろうと思われる者の声が聞こえてきた。


「あなた、今、治癒魔法を使ってますね? 使用料をお支払い願えますか?」


 クソっ、人が困ってる時になんてこと言いやがるんだ。これだから教会の人間は嫌いなんだ。


 俺はあまりにも腹が立ったんで、ソイツに言い返してやった。


「じゃあ、使用料は『テラ様シール』100枚ということで」



「…………はあ? そんなハズレシール、本当に100枚も集めている人がいるわけないじゃないですか? あれ? もしかして! あなた本当にあのハズレシールを100枚も集めたんですか? あのハズレシールをですよ? あなたひょっとして、あの物珍しい『テラ様オンリー信者』なのですか? いやはや、それって、もうあなたの人生じたいがハズレでしょう、アハハハ——」


 ——ガラガラ! ドーーン!


 先ほどよりかなり弱めだが、俺の目の前にいた『不心得者』にもカミナリが直撃したようだ。


「…………オレっち、今度から『テラ様シール』、大切にするゾ」

 ああ、頑張って100枚集めてくれ……

次話から、新章が始まります。女神様らしき人物が、カイセイたちの前に姿をあらわしますが……

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