後日談 〜ジョーキューシャーの街① 宿屋にて〜
〈 これは冒険者ギルドで宴会があった翌日の朝、コッソリとミミーから聞き出した話だ。今回も適度にツッコミを入れながら、この話を振り返ってみることにしよう 〉
「いよう! おジョーちゃまたちじゃねえか、ヒック。おらあ、冒険者のイノチシラズーってもんだ、ヒック。あんたらのリーダが酔いつぶれたんで、ここまで運んで来てやったぞおおお!!!」
……お前も相当酔ってるじゃねえか。
俺が運び込まれたのは、俺と娘さんたちが宿泊している宿屋の一室。
どうやら飲み過ぎて寝てしまった俺は、イノチシラズーや他の冒険者達に、ここまで運んで来てもらったようだ。
俺はベッドの上に放り投げられたそうなのだが…… まったく記憶にない。
今の時間はすでに午前0時を回っている。
イノチシラズーたちは、俺を投げ捨てるとさっさと帰って行った。
「ウワッ、コイツ酒クサ……」
「なによ、このだらしない格好……」
ホニーとアイシューがあきれている。
「オウっ! オニーサン、ゴゼンサマだゾ!」
ミミーは荒くれ冒険者を見慣れているためか、それほど驚いてはいないようだ。
「チョット! ここアタシとアイシューの部屋なのヨ! さっさと起きなさいヨ!」
ホニーが俺の体を揺すっているが、まったく起きる気配がなかったとのこと。なんだか申し訳ない……
「もう…… 仕方ないから、私たちは違う部屋に行きましょう。ミミーちゃんも一緒に来るわよね?」
ミミーを気遣い、アイシューが尋ねる。
俺がなかなか宿に帰って来なかったので、俺と相部屋だったミミーも、二人と同じ部屋で寝ていたそうだ。
「ン? オレっちはこの部屋でいいゾ?」
「チョット、ミミー! コイツとおんなじ部屋で大丈夫なの? ほら、もうすでにサケくさい臭いが部屋に充満してるじゃないのヨ!」
……本当に申し訳ない。
「ン? オレっち慣れてるから平気だゾ? 荒くれ冒険者は、大抵サケくさいものだゾ?」
いや、そんなことないと思うが…… お前は一体これまでどんなヤツと一緒に行動してたんだよ?
「うわっ、嫌だ、なにこれ! 服に口紅がついてるじゃない! 不潔よ!」
アイシューがうす汚ないゴミを見るような目をして叫ぶ。
いや、別にイヤラシイことをしてたわけじゃないんだ。たぶん、酔った勢いで女性冒険者が抱きついて来たような記憶があるんで、その時についただけなんだよ。まあ、ちょっとだけ、ラッキー! とか思ったけど……
「ネエ…… ホントにコイツ、人間族最強魔導士なのかしら……」
「本当ね…… もし今敵に襲われたら、ひとたまりもないじゃない……」
……おっしゃる通りです。
でも…… でも言い訳させて欲しい!
俺は前回のターンの後半約2年間、ずっと戦場にいたんだ。そりゃあもう、戦場生活は辛くてさあ……
そうさ…… 今夜は楽しかったんだ。スッゲー楽しかったんだよ……
今回のターンでもこれまで約1ヶ月、なんだか娘さんたちの保護者みたいになっちまって、まったく飲みに行ってないんだよ!
たまにはいいじゃないか、俺だってハメを外して!
ハァ…… 以上、言い訳終わり。
「ホント、コイツこんなことで、この先やって行けるのかしら?」
「いつか命を落とすと思うわ……」
エライ言われようだな……
「さっきはチョット、カッコいいかなって思ったけど……」
「ええ、今日のカイセイさんはいつもと違うって思ったのに……」
うわぁ、幻滅されてるよ、俺……
「コイツの姿みてよ…… なんて頼りない……」
「これがこの人の本当の姿なのかも知れないわね……」
「なら、オレっちたち3人で、オニーサンを守ってやればいいと思うゾ!」
笑顔を爆発させたミミーが叫ぶと——
「「 え? 」」
驚きの声を上げる二人。
「パーティメンバーは助け合うものだゾ! だから、頼りないオニーサンを、オレっちたちで助ければいいんだゾ!」
「そうね…… アタシったら、今まで、カイセイに助けてもらうのが当たり前だって思ってたみたい……」
「私も…… 自分がカイセイさんにやってあげられることなんて、何もないって思ってたけど……」
「仕方ないわネ! このだらしない男を、アタシたちで守ってやることにするわヨ!」
「ええ! このいい加減な人を支えられるのは、私たちしかいないんだから!」
「オウっ! オレっちも、たぶん、いろいろ、それとなく、オニーサンを支えるゾ!」
こうして俺たちのパーティは、より一層、固い絆で結ばれることになったのでした。めでたしめでたし、かな。
やっぱりパーティって、誰か一人に依存するものじゃなくて、メンバー全員が仲間のために全力を尽くすものだよな。
たまには俺が呑んだくれた方が、メンバーの結束力が強まるんじゃないか?
……なんてことは思わず、今後は身を引き締めますとも。
「じゃあ、もし今強盗に襲われたらいけないから、カイセイなしで野営してるつもりになって、一人ずつ寝ずに見張りをしましょうヨ!」
俺は寝ていても、危険が近づくと殺気で目が覚めるのだ。今は酔い潰れているので無理だけど……
「いい考えね。じゃあ、順番はどうする?」
アイシューも賛同してくれるようだ。
「じゃあアイシュー、アンタからお願いネ」
「は? なんで私からなのよ? 言い出しっぺのホニーからやりなさいよ」
「チョット、アンタ今、『いい考えね』って言ったじゃないのヨ!」
「それとこれとは別の話でしょ!」
こうしてホニーとアイシューは、見張りの順番を巡って朝まで喧嘩を続けたそうだ。その横で、ミミーはスヤスヤと眠りについていたとのことであった。




