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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
④はじめてのダンジョン 編

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あの女神様のことだから

 俺と娘さんたち3人は48階層に到着した。さて、今から『黒魔石』探しを始めるのだが……


 俺のユニークスキル『広域索敵』の探索対象は、対人・対獣に限られている。従って、魔石探しは地道にチート能力無しで頑張るしかない。

 この世界の魔石は、岩と岩の間に挟まっていたり、地面の浅いところに埋まっていたりと、とにかく探し難いのだ。うっすら光を放っているので、それを目印にして探し当てるしかない。ちなみに黒魔石は、うっすら黒い光を放っている。


「ここからは4人でひとかたまりになって行動しよう。3人は頑張って魔石があるっぽいところを目を使って探して欲しい。その間、俺が3人を守るから安心してくれ。でも俺のそばから離れるなよ」


 俺、5年若返ったんだけど、それでも若干老眼は進んでいるみたいで……

 目を使う仕事は、若い3人に任せよう。

 ミミーは聴覚と嗅覚はとても優れているが、視覚はそれほどでもないらしい。でも若いんだから、俺が探すよりはよほどマシだろう。


「え? カイセイさんは武具屋で、魔石がどこにあるのか知ってるって言ってなかった?」

 驚き顔のアイシューがつぶやく。


「ああ、それは下層に行けば行くほど、珍しい魔石が多いってことを知ってるっていう程度の意味で言ったんだ。具体的にどの石がどこにあるかってことは、流石にわからないよ」


「カイセイさんでも知らないことがあるのね」

 うーむ…… 時々思うのだが、どうもアイシューは俺のことを過大評価しているところがある。


「カイセイは、イヤラシイことならなんでも知ってるのにネ」

 うーむ…… いつも思うのだが、どうもホニーは俺のことをエロいヤツだと思い込んでいるところがある。ほら、またアイシューがゴミを見るような目で、俺を見つめてきたじゃないか。


「おいホニー。くだらないこと言ってんじゃネエよ。トウタスーは俺がちゃんと仕留めてやるから、お前はちゃんと魔石探しに集中しろよ」



 さて、魔石の探索を始めた俺たちだったが…… いくつか魔石を見つけたけど、黒魔石を見つけることは出来なかった。


「仕方ない。じゃあ、下の階層に行ってみるか」


 俺はユニークスキル『広域索敵』を使って下の階層を確認する。

「次の階層にはウシっぽい魔獣とニワトリっぽい魔獣がいるようだ」


 俺はコイツらとも前回のターンで戦ったことがある。俺が一緒にいるんだから、娘さんたちのレベルでも決してヤツらに遅れをとることはないだろう。


 俺は娘さんたちに、これらの魔獣の特徴と攻略法を説明する。ちなみに、コイツらの名前は『シャブシャブー』と『ヤキトリー』と言う。『ヤキトリー』の上級種は『テリヤキトリー』だ。名前を聞いた途端、今度はミミーの口からヨダレが溢れ出したことは言うまでもない。


「ミミーのご期待通り、コイツらのお味は絶品なんだよ。たぶん、人間族領でコイツらが生息するのはこのダンジョンだけなんだろうな。だから人間族でコイツらを美味しくいただいた人はあんまりいないと思う…… って、おいミミー。そんな目で見るなよ。ちゃんと何体かは持って帰ってやるから」


「オウっ! オニーサン、早速、美食を追求する旅に出発するゾ!」


「……黒魔石はどうすんだよ。美食は俺が追求してやるから、お前はちゃんと魔石を探すんだぞ」



 ♢♢♢♢♢♢



 ここは49階層の見晴らしのよいエリア。俺たちは今、休憩のためこのエリアで腰を下ろしている。俺には『広域索敵』のスキルがあるので、別にどこで休憩しても安全性は変わらないのだが、ホニーやアイシューには休憩場所の選定基準なんかも学んで欲しいと思っている。


 この階層でも魔石はいくつか見つかったが、やはり黒魔石はまだ見つけることが出来ずにいた。では更に下層へ進もうか、そんなことを考えていたところ——


 ——ビ……コー…… 、ピコー…… 、……ーン、


 なんだ? 女神様からの通信だと思うんだけど? ひょっとして、ここ地下だから電波が届きにくいのか? というか、天界からの通信って電波を使ってたのか?


 今やすっかり女神様とのコミュニケーションツールと化したステータス画面を開いてみたところ……


 ——タイトル『抱腹絶倒』


 タイトルまでつけてるのかよ…… もはや、どこからどう見てもメールだよ。


『50階層の魔獣『トカゲモドキー』はダンジョンボスです。もちろん強いですが、今のカイセイさんなら、容易に倒すことが出来るでしょう。でも——』

 メッセージが途中で途切れている。やっぱり電波の関係か?


 俺は女神様からのメッセージを、娘さんたちに読んで聞かせた。


「ムムっ? 『ホーフクゼットー』?」


「お腹を抱えて笑うほど面白いって言うことだよ」

「オウっ! じゃあ、『でも——』の後には、壮絶にオモシロイことが書いてあるってことカ?」


「まあ、そういうことになるんだけど…… なにせあの女神様の言うことだからなあ……」

「もう! カイセイさんったら、また女神様の悪口言って!」


「なんだよ。じゃあ、アイシューは女神様がスッゲー面白いことを言うと思ってるんだな? それなら、この後にどんな言葉が続くと思う?」

「そんなの、私にわかるわけないじゃない!」


「お前、女神様の教えを広める聖堂士だったんだろ? 女神様のお考えがちっともわからなくてどうすんだよ」


「ううっ…… そう言われると返す言葉が…… そうね、あの女神様が言いそうなことと言えば…… 『カイセイさんなら容易に倒せると思うけど、でも——』 実はダンジョンボスの正体は私でした。だから倒しちゃダメだよ、てへ、とかじゃないかしら」


「……流石アイシューだ。女神様のことがよくわかってきたじゃないか。笑いの要素は少し足りないような気もするが、俺もそういうバカバカしい感じの方向性で間違ってないような気がするぞ」


「オレっちは、『でも、トカゲもどきは1万匹いるので倒せません、てへ』だと思うゾ!」

 なんと! ミミーがちょっとボケたではないか! ややヒネリが弱いが、初めてにしては上出来だ。いやはや、子どもの成長とは目覚しいものだな。


「……………………あれ? どうしたんだホニー?」


「な、なによカイセイ! それからアイシューとミミーまで、なんでそんなに期待した目でアタシを見るのヨ!?」


「いや、オチをつけてくれるんだろうなって思って」

「アタシはお笑い芸人じゃないのヨ! そんなにポンポン面白いこと言えるわけないでショ!」


「なんだ、つまらないの」

「チェッ、だゾ。期待はずれだゾ」

「そんなことじゃ、お笑い芸人だった師匠に合わせる顔がないぞ?」


「アタシの師匠は地方公務員だって言ってるでショ!」

 どうやらホニーはお題に基づいて面白いことを考る大喜利のようなことは苦手なようだな。これからホニーを黙らせたい時には、何かお題を出してやることにしよう。よし、これは黒魔石以上の大発見だ。


 まあ、女神様のことは置いておいて。とりあえず50層に行ってみて、危険ならすぐに撤退することにしようか。それに、どんな面白いことが待っているのか気になるからな。

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