表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
④はじめてのダンジョン 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/219

いざ、ダンジョンへ

 武具屋を訪れた次の日の朝。


「あのさあ、アタシ、思うのよ。魔法の力だけで人の価値を判断するのって、なんか間違ってるんじゃないのかなって」

 ……ホニーのヤツ、もう魔法の特訓に飽きたようだ。


「おいホニー。俺は昨日の夜、たった数時間上級火魔法の講義をしただけだぞ? もう嫌になったのか?」


「嫌とかそういうことじゃないのよ。なんて言うの、人間の価値観はもっと多様であるべきじゃないかしら?」

 コイツ…… こんなことで、よく中級魔法の呪文を覚えることができたな。


「わかった。じゃあ、多様性を尊重して、お前の装備は茶色だ。お前は赤色がいいという価値観に毒されているようだ」


「チョ、チョット、待ちなさいよ! アタシが言いたいのはそういうことじゃなくて——」

「今日中に上級火魔法の呪文を半分覚えないと、昨日予約した装備は全てキャンセルしてやるからな! 俺はこう見えて思い切りがいいと評判の男だ! バンジージャンプだって、飛び出すまで、たったの30分しかかからなかったんだからな!」


「それ、後ろの人に迷惑な客じゃないのヨ!」

 ホニーのヤツ、バンジージャンプまで知ってるんだな。その飽くなき知識欲を呪文の習得に向けて欲しいものだ。


「オニ、アクマ、ビリビリ!」


 ホニーのヤツ、感電でもしたのか? それを言うならビビリだろ? まったく…… 文句ばっかり言いやがって。それなら——


「じゃあ、俺達は3人でダンジョンの下見にでも行くとするか。第1階層の入口付近は出店みたいなのがいっぱい並んでて、結構面白いんだよ。なんか、ちょっとしたお祭り気分が楽しめるぞ」


「チョ、チョット待ちなさいヨ! アタシも連れて行きなさいよネ!」

「じゃあ、待っててやるから早く覚えやがれ」


「わ、わかったわヨ! このロクデナシ!」


 俺達の会話を聞いていたアイシューが、しみじみとした口調で口をはさむ。

「セバスーさんじゃ、きっとここまでのひどい仕打ちは出来ないでしょうね。やっぱりホニーの教育係りには、カイセイさんが適任なのかも知れないわね」


「うるさい! 黙りなさいよ、この腹黒!」

「……カイセイさん、ミミーちゃん。さあ、もう出かけちゃいましょうか」


「わ、悪かったわよ。謝るからチョットだけ待っててよネ!」


 俺もアイシューに向かって、しみじみと語り返す。

「いやいや。他人が最も嫌がる一言を的確に放つアイシューだって、ホニーの友人として最適だと思うぞ」


「……とんでもない。カイセイさんの意地の悪さに比べたら、私なんてまだまだよ」

「……なに言ってんだ。氷のように冷たい一言を放つアイシューさんと比べれば、俺なんてまだひよっ子みたいなもんだよ」


「「 フフフフフ…… 」」」


「オオウっ…… オニーサンとアイシューが、悪い顔して笑ってるゾ……」


「キイイイーーーー! アンタ達、アタシをネタにして、盛り上がってんじゃないわヨ!」



♢♢♢♢♢♢



 翌日。


 俺たちは朝一番で依頼していた装備を受け取り、アイシューに、『絶対コッチを見ないでよ!』と言われながら着替えをしませた後、ジョーキューシャーの街郊外にあるダンジョンへと向かった。とりあえず、ひとことだけ言わせて欲しい。まったく心外しんがいだ。俺はロリコンじゃねえってんだ。


 さて、俺達の新しい装備はと言うと…… 目立っている。そう、とても目立っているのだ。はっきり言って場違いだ。日本で言うところのコスプレ集団みたいだ。

 ホニーとミミーは喜んでいるようだが、アイシューは顔を赤らめている。


「おい、アイシュー。大丈夫か?」

「うう…… 装備を選んでる時は、なんだかステキだと思ったんだけど…… 実際、着てみると恥ずかしいものね」

 まあ、これも人生経験だと思って諦めてもらおう。


「やっぱりTPOは大事だからな」

 俺がそう言うと——


「そうね!」

 ホニーが横から口をはさんできた。


「やっぱり農産物は国産がいいわよネ!」

「……それはTPPだな」


「ええ、そうよ! 海外と自衛隊と平和は繋がってるのヨ!」

「……えっと、それはPKOのことかな? なあ、ホニー。お前が真剣に誤解してるのか、それともボケてるのか、俺、今だにわかんないんだよ。いずれにせよ、会話が成立しないから、今日の日本ネタ披露はここまでな」


 ふくれっ面のホニーは放っておいて、と。


 俺達が今いるのはダンジョンの第1階層。ここへは下見、というより観光? のため、昨日の午後に訪れていた。ホニーが意外にも…… 失礼、よく頑張って午前中に上級火魔法の呪文を半分覚えたのだ。


 第1階層にはほとんど魔獣がいないため、食べ物やお土産物を売る屋台がたくさんのきを連ねている。

 ミミーが屋台から漂ってくる、食欲をそそる匂いに気を引かれているようだが——


「ミミーは昨日、屋台でいっぱい買い食いしたよな? それで今日は我慢するって約束だったよな?」

 俺がそう言うと——


「オ、オウっ! オレっち、ぜんぜん…… 食べたいなんて思ってない…… と思うゾ?」

「なんで最後の方、自信なさげなんだよ……」

 うーむ…… 少しぐらいなら買ってやってもいいかな? そんなことを考えていた俺の頭の中をまるで覗き見たように、アイシューが厳しい目つきで俺を睨んできた。


 はっ! 危ない。また娘を溺愛するダメな父親みたいになるところだった。


「そ、そうだな。約束は大事だな。ミミーよ、ここは我慢するところだ。そうだ、帰りに買ってやろう! あっ…… えっと、アイシューさん。帰りに買ってやってもいいでしょうか?」


「もう、なんで私に確認するのよ。ミミーちゃんも、もうお姉さんなんだから、ちゃんと約束守れるわよね?」


「オウっ! オレっち、オネーサンだから、約束を守るのなんてお手の物だゾ! でも、帰りにまた買い食いしたいのも事実だと宣言するゾ!」


「ふふ。じゃあ、カイセイさんにお願いしてみたら」


 こうして、今日一日ダンジョン攻略を頑張ったら、帰りにみんなでまた屋台の食べ物を買って食べることにした。うーむ…… いやはや、アイシューは本当にお母さんみたいだな。実は隠し子がいたりして、とか言うとまた怒るんで本人の前では絶対言わないけど。


「じゃあ、アタシもまた帰りにお土産買おうかしら」

「おいホニー! テメー、いい加減にしろよ!」


「チョット、なによアンタ! アタシとミミーとで、全然態度が違うじゃないのヨ!」

「なに言ってやがる! 昨日、俺がちょっと目を離した隙に、訳のわかんねえ木刀いっぱい買いやがって。俺が渡した小遣い、返しやがれってんだ!」


「ハア? アンタ、ホントに日本人なの? 修学旅行のお土産は木刀が定番でしょ?」

「…………宿に帰ったら、まずは修学旅行の定義からきっちり教えてやるよ」


「もう! 二人とも、早く行かないと日が暮れちゃうわよ!」

「アイシュー…… 今のは俺、悪くないだろ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ