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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
④はじめてのダンジョン 編

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オシャレさん

「やっぱりアタシに似合う色って言えば、赤しかないわよね」

 鼻歌まじりに武器屋の店内で優雅なステップを披露するホニー。とてもご機嫌がよろしいご様子だ。


 さっきアイシューだけチヤホヤされた時には、そりゃあもう怒り心頭の様子だったのに……

 あの後、ボロモーケのオヤジさんから、火魔法使いの元冒険者で、ホニーの父親の熱狂的信奉者であった別の武器屋の主人を紹介してもらった。そこのご主人から、下にも置かないおもてなしを受けたホニー。コロっと機嫌が直ったのだ。


 火魔法使いのご主人が、出張サービスだと言って、ボロモーケさんの店にいろいろな武具を持ってきてくれた。その様子を見ていた他の店主達。我も我もと沢山の商品を持って集まってきた。本当にいいいのか? 料金は後払いだぞ?


 よく見ると、多くの店主達はサイン帳のようなモノを手にしている。どうやらアイシューやホニーのサインが目当てのようだが……


「コイツらまさか、ロリコンじゃねえだろうな?」

 俺のつぶやきを聞いた、ボロモーケのオヤジさんが——


「『ろりこん』ってのがどういう意味なのか、わかんねえんだが…… コイツらは中級魔導士様御用達っていうはくが欲しいんだよ。店の中にサインを飾るんだろうよ。『この人もウチの店の商品を使ってるんだゼ』ってな感じでな」

 ああ、そういうことか。宣伝効果を狙ってるワケね。


「でも、俺は水の聖女様のサインを店内に飾ったりしないからな! ちゃんと防水加工して、家の中で大切に保管しておくんだ!」

 ……このオヤジが一番ヤバイんじゃないか?


 なんだか武具の展示会場みたいになってしまっているが…… 元々俺がここに来た理由は、パーティメンバーの装備を、もう少しマシなものにしようと思っていたのだから、まあ、別に構わないか。


 聖堂着を着用していたアイシューには、旅の途中で随時、冒険者の装備を購入していたのだが、いかんせん不十分だと思っていた。ローブなんかはブカブカで、よくホニーにからかわれてたからな。


 ホニーの場合、一応それなりに戦闘可能な装備を身につけていたのだが、バカ兄貴の元から慌てて逃げ出して来たため、あまり上等そうな身なりではなかったのだ。



「アタシってば、やっぱり赤色が似合うと思うのよネ。アイシューは水魔法を使うんだから、青で統一すべきヨ!」


「私は別になんでもいいんだけど……」

と、口では言うアイシューであったが、実はなんだか嬉しそうな表情をしているように見える。


 ミミーは体が小さすぎて、流石に体格に合う防具は見つからなかった。今身につけている薄手の革鎧も特注品だったそうだ。


「じゃあ、表面に防御力が上がる魔石なんかを埋め込んでもらうことにしようか」

 俺がそう言うと——


「チョット、カイセイ! アンタ、ミミーのこと可愛くないの?」

「なに言ってんだホニー?ミミーなら目に入れても鼻に入れても痛くないし、口に入れたら可愛さのあまり食べてしまいそうだぞ?」


「…………キモチワル」

「おいホニー、テメー………… 調子に乗るんじゃネエぞ……」


「チョ、チョット待ちなさいヨ! アタシが言いたいのは、ミミーにもカワイイかっこさせてあげなさいってことヨ!」


「ん? どういうことだ?」

「アタシが赤で、アイシューが青なんだから、ミミーはそうね…… 黄色…… いいえ、緑がいいと思うワ!」


「あっ、それわかる! ミミーちゃんは草原の少女って感じがするから、私も緑が似合うと思うわ!」

 アイシューがホニーの意見に賛成する。アイシューめ…… なんだかんだ言って、結構楽しそうじゃないか。やっぱりアイシューも年頃の娘さんなんだな。


「ムムっ? オレっちは目立たない色がいいゾ?」

 そうか。ミミーはこれまでダンジョンに潜ることを生業なりわいとしてきたんだ。ダンジョンには茶色の岩場が多いから、自分には茶色の革鎧がピッタリだと言いたいんだな。


「まあ待てミミー。お前はこれまでダンジョンにいることが多かったけど、これからは外で活動することが多くなると思うんだ。実際、ハジマーリの街を出てからここに着くまで、ほとんど森を通ってきただろ? ということで、一番目立たない色を選ぶとしたら?」


「オウっ! オレっち、緑がいいゾ!」

 まあ、別に色なんてなんでもいいと思うけど、ミミーだけ地味なカッコさせるのも可愛そうな気がするからな。


 こうして、ミミーの装備は、今使っているものを緑色に塗装してもらうことにした。もちろん防御力がアップする魔石を埋め込んでもらうことも忘れてないぞ。


「カイセイは黒がいいと思うのよネ! アンタ結構、黒いこと考えてることが多いから」

「おいホニー…… テメー、ホントいい加減に——」


「私もカイセイさんには黒が似合うと思うわ! なんか謎の魔導士って感じで、カッコいいじゃない」

 アイシューのヤツ…… ホニーに感化されて、すっかりオシャレさんになってしまったようだな。


「俺は別にこのままでいいよ」

「でもカイセイさんのその装備って、いかにも初心者って感じじゃない? 冒険者はナメられたらダメなんでしょ?」

 アイシューが反論してくる。


「アンタがカッコワルイと、アタシが恥ずかしいのヨ! 」

 うーむ…… 年頃の娘さん的にはやっぱり、そうなのかな?


「でも俺、外見とか興味ないし。俺のレベルだと、正直言って、装備なんてなんでもいいって感じで——」


「ムムムムムっ!!! オニーサン、ダンジョンをナメてたら死ぬゾ!!!」

「あっ、ハイ。そうですね……」

 確かにミミーの言う通りだ。


「オニーサンも、ちゃんとした装備を買わないとダメだゾ!」

「……おっしゃる通りです」

 まったく反論できません。


 ミミーに正論を言われた俺は、素直にもうちょっとマシな装備を探すことにした……


 こうして、ホニーとアイシューは防御力の高いローブを基調とした、色違いのお揃い魔導士ルックとなり、俺とミミーは魔石を埋め込んだ薄手の革鎧を着用することになった。残念ながら、俺とミミーの革鎧はお揃いではない。まあ、オシャレかどうかは別にして、各々の防御力は大幅にアップすることになったんで、これでいいことにしよう。


 ああ、それからホニーもアイシューも、魔導士の定番武器と思われがちな『杖』は買っていない。中級魔法が使えるようになると、杖は必要なくなるんだ。むしろ、持ってるとかえって邪魔になるぐらいだ。だから、もちろん俺にも必要ない。


 それから金額については、ホニーとアイシューのサインのおかげで、ビックリするほど格安で済ますことができた。と言っても、やっはり支払いは後払いなんだけどね。


 仕上げやら塗装やらに少し時間がかかるそうで、全ての装備が揃うのは明後日になるとのこと。それじゃあ、今日のところは宿屋に引き上げるとするか。ホニーに上級火魔法の呪文を教える約束をしてたからな。帰ったら特訓だ!

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