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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
④はじめてのダンジョン 編

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アイシューのサイン

「いや、まあ、お嬢さんの父親に憧れたのは事実なんだけど、コッチも商売なんで……」

 ホニーの値切り交渉に対して、困った表情を見せるボロモーケさん。


「ぐぬぬぬ……」

 当てが外れて、ふくれっ面のホニー。


「いいよ。値引きなんてしなくて」

 俺がそう言うと——


「ちょっとカイセイ! 取引の基本は値引き交渉から始まるって父さまも言って——」

「まあ待てホニー。俺にも考えがあるんだ」

 とりあえず、俺はホニーを黙らせる。


「なあ、オヤジさん。俺はアンタを困らせるつもりはないんだ。お互いに得をする交渉をしたいんだよ。俺達の実力はわかっただろ? 単刀直入に言おう。金は後払いにして欲しい。その代わり金額は言い値の2割り増しってことでどうだ?」


「おい、アンタ自分の言ってることわかってんのか?」

 明日の命の知れない冒険者の決済方法に、後払いやローンなどあるはずがない。常識中の常識だ。もちろん知ってるとも。


「ムム? オニーサンは大金持ちじゃなかったのカ?」

「もちろん金は持ってるが、流石にここにある一流武具を自由に選べるほどには持ってないんだよ」


 ここに置いてある武器やら武具やらって、ホントにお高いんだよ。


「言い忘れてたが、俺は超級魔法も使える。もちろん無詠唱でだ。ああ、それから、俺は以前、このダンジョンに潜ったことがあるんだ。だから決してこのダンジョンをナメてる訳じゃないぞ? 金になる魔獣がどこにいるか、高値で売れる魔石がどこに落ちてるか、ちゃんと頭に入ってるんだよ」


「えっ、カイセイさん、ここに来たことあるの? そんなこと一言も言わなかったじゃない!」

 アイシューが驚きと不満の混じった声を上げる。


「悪いな。天界の禁忌にふれるんで、この件についてはあんまり詳しいこと言えないんだ」

 ここに来たのは前回のターンでのことだからな。


「それって、確かあなたの世界でいうところの『みえ』って言うものに関係が——」

「いやアイシュー、それは関係ない」


「えっと、三重は近畿でもあり中部でもあり——」

「おいホニー、お前は黙れ」


「ムムム…………」

「なあミミー、なんで悩む?」


「ムム…… オレっちもツッコまれたいゾ……」

「……宿に帰ったら、一緒にお笑いの勉強しような? それから、アイシュー。頼むから三重県のことは忘れてくれないだろうか」

 あれはホニーのバカにつき合って話しただけだ。三重県の人達のためにも、ぜひ忘れて欲しい。


「お、おい。アンタ、今、アイシューって言ったのか?」

 驚いた様子で、俺に向け言葉を投げるボロモーケのオヤジさん。


「ああ、そうだけど?」


「噂で聞いたんだ。ミズーノの街の聖女様が凄腕の魔導士と一緒に旅に出たって」

「…………俺はロリコンじゃないからな」


「『ろり……』なんだって? ああ、そう言えばその凄腕魔導士が変態だとかなんとか言う噂もあったな。でも、あんなもんは、ただのヤッカミに決まってんだろ。聖女様と一緒に旅が出来るんだ。みんな羨ましいんだろうよ」


「……オヤジさん。よければこの後、一杯奢らせてもらえないだろうか?」


「何言ってんだアンタ? そんなことより…… 」

 ボロモーケのオヤジさんがアイシューの頭の上から爪先まで、全身をめるように眺めている。はたから見てると、なんか気持ち悪いんだけど…… アイシューも、ちょっとヒイてるし。


「あああっっっ! やっぱり本物だ! 俺、以前商用でミズーノの街に行った時、アンタ、いや、あなたを見かけたことがあるんです! 俺、あの時以来、ずっと水の聖女サマのファンなんです!」


 ……実はこのオヤジがロリコンだったりして?


「あの…… サ、ササ、サインをもらえませんか!!!」

 ナニ言ってんだ、このオヤジ? 大丈夫か?


「ちょっと、オヤジさん。アイシューが不気味がってるから——」

「サインしてくれるんなら、代金は後払いでいいし、なんなら値引きだってしてやるよ!」


「…………アイシュー。サインして差し上げなさい」

「もう、カイセイさん! まったく調子がいいんだから!」


「チ…… チ…… チ……」

 ん? どうしたんだ? なにやらホニーが固まっている。


「チィヨッッットオオオーーーー!!! なによ、この小汚いオッサン! アタシが値引きしろって言ってもダメだって言ったくせに!!!」


「俺、水魔法使いの魔導士なんだ。火魔法のこと、あんまり興味ないんで」

 淡々と語るボロモーケのオヤジさん。


「おいミミー。ホニーを黙らせるんだ」

 ミミーはホニーの背中に無理矢理おぶさり、両手を回してホニーの口を覆った。うん、ミミーは何をやっても、やっぱり笑顔だ。流石に、風魔法で作った猿ぐつわをホニーに噛ませるわけにはいかないから、これがベストな方法なのだ。


「いやはや、騒がしくして申し訳ありません。じゃあ、正式契約といきましょうか」


 ホニーよ…… お前んの家訓、質素倹約…… あとなんだっけ? まあ、家訓的に見ても良い取引なんだし、ここは一つ静かにしておいてもらおうか。

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