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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
④はじめてのダンジョン 編

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武具屋のオヤジはボロモーケ

 俺達は武具屋のドアを開け店内へと進む。


 この武具屋、こじんまりとしているが、ジョーキューシャーの街でも有名な最上級冒険者御用達のお店だったりする。良いモノが多い反面、お手頃価格の商品など置いてないことで有名だ。


 俺は前回のターンで、確かレベル40代になりやっと中級魔法が使えるようになった頃、この店を訪れたことがある。あの時は商品の値段に驚き、スゴスゴと店から出て行ったっけ……


 カウンターにいるオヤジさんが、無愛想な目で俺達を見つめている。

 この人の名前、確か『ボロモーケ』さんだったと思う。結構上手い商売してるみたいだ。


「ちょっと武具を探してるんだけど……」

 ボロモーケのオヤジさんに向かって、俺がそう言うや否や——


「おい。テメーら…… 俺をナメてんのか? ここはハナッタレのクソガキどもを連れた父チャンが、ピクニック気分で来るようなトコじゃネエんだよ」

 スゴみの効いた渋い声を放つボロモーケ氏。この人、元冒険者だったそうだ。そりゃまあ、このメンツを見れば、そう言いたくなる気持ちもわからなくはないんだけど……


 あっ、ホニーが詠唱を始めた。


 どうやらまた、『天井サウナ』を使うようだ。

 うーむ…… さっきの話の流れ的に、こちらの実力を見せつけるのは悪いことではないんだけど…… でも武器屋のオヤジさんは、俺達の命を狙ったりしないぞ?


 ただ、ホニーのヤツ、『どうよ、アタシってば空気読めるでしょ!』みたいな顔して、なにやら得意げだし。まあ、ここはホニーに任せてみるか。そんなことを考えていたところ——


「お、おい待て! その詠唱、ひょっとして中級魔法の詠唱じゃネエか?!」

 おっ、流石元冒険者のボロモーケさん。よく知ってるな。


「ホニー、詠唱は中止だ。お前の実力は十分伝わったみたいだぞ」

 と俺が言ってるのに、まだ詠唱をやめないホニー。


 仕方ない。俺は風魔法をホニーの口元に当て、詠唱を中止させる。すると——


「おいアンタ…… 今のはひょっとして…… 無詠唱ってヤツなのか?!」

 目を見開き、ボロモーケさんが驚愕の表情を浮かべている。


「チョット、カイセイ! なんでアンタばっかりいつも目立つのヨ! アタシの中級魔法のインパクトがどっかに行っちゃったじゃないの! ほら、もうそこのオッサン、アンタの方しか見てないし!」

「……お前が詠唱をやめないからだろ」


「アタシを口汚くののしったソコの小汚いハゲオヤジに、アタシの清楚な一撃をお見舞いしてやるんだから!」


「お前も相当口汚いじゃないか…… それに、その人ハゲてないだろ?」

「心がハゲ散らかってるのヨ!」


「意味わかんねえよ…… なあ、お前、本当に伯爵家の令嬢なのかよ。そんなガラの悪い言葉遣い、いったい誰の真似して覚えたんだか」


「セバスーよ!!!」

「あ、そうなんだ…… 今の話は聞かなかったことにしてくれ」


「お、おい、アンタらちょっと待ってくれよ。俺を置いてけぼりにすんなよ」

 ボロモーケさんが声をあげる。なんだよ、この人ちょっと寂しがり屋さんなのか?


 続けてボロモーケさんがビビりながら口を開く。

「伯爵令嬢とかセバスーとか言ってるけど…… ひょっとして、そこの嬢ちゃん、いや、お嬢さんはヒトスジー家の人なのか?」


 ここはキタノ国最北の地。ヒガシノ国では有名人のホニーだが、ここではそれほどホニーの知名度は高くないようだ。


「ふーん。オッサンってば見た目はアレだけど、なかなか人を見る目はあるようね。そうよ! アタシの名前はホホニナ=ミダ・ヒトスジー。偉大なる大魔導士、マホウノ=ミチ・ヒトスジーの娘よ!!!」


「やっぱりそうだったか。お嬢さんの詠唱、俺がまだ駆け出し冒険者だった頃、アンタの父親が唱えてたのを聞いたことがあるんだよ」


 昨年他界したホニーの父親マホウノ=ミチ・ヒトスジー元伯爵。若かりし頃は冒険者だったと聞いている。その後魔法の実力が認められ、ヒガシノ国の王から貴族の位を与えられたらしい。更にそれ以降も着々と手柄を立て続け、最終的には伯爵位まで上り詰めたそうだ。冒険者のサクセスストーリーを絵に描いたような人物だ。


「お嬢さんの父親は、俺の、いや、全ての冒険者の憧れだったよ。あの人の娘さんなら、その若さで中級魔法が使えるのも納得だな」


「フン。アンタ、アタシの父さまのこと知ってるのね。なら、父さまに免じて、今日のところは許してあげることにするワ」

 なんだよホニーのヤツ。やっぱり父親が褒められると嬉しいんだな。ちょっと可愛げがあるじゃないか。


「その代わり、これからアタシ達が買ってあげる武具の値段、ちょっと安くしなさいよネ!」

 ……前言撤回だ。まったく可愛げのカケラすらねえな。


「おいホニー。いくらなんでも、そりゃあ、ガメツすぎるだろ?」

 俺がそう言うと——


「うっさいわネ! 我が家の家訓は『質素倹約、賞味期限は気持ち次第、3秒過ぎてもまだ食える』なのヨ!」


「ヒトスジーさんはケチで有名だったからな…… まあ、冒険者の生活は不安定だから仕方ないか……」

 遠くを見つめながらつぶやくボロモーケのオヤジさん。



 途中までは良い話だったのに、なんだか最後は世知辛い話に落ち着いてしまったようだ……

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