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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
②水の聖女アイシュー 編

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幕間 学習者アイシュー

今話はこの世界の魔法についての『説明回』です。面倒な方は、どうぞ読み飛ばして下さい。

本日もう一話、「炎の令嬢編 ホニー登場①」を投稿します。


 アイシューが口をきいてくれない……


 俺たちは北を目指して街道を進んでいるのだが、道中アイシューが何やらおかんむりのご様子だ。


 水の街ミズーノで悪徳代官達を懲らしめたとき、俺は火魔法やら何やらいっぱい使って、怒れるアイシューを効果的に演出してやったはずなのに…… まあ、ちょっとやり過ぎて、アイシューが熱がったり煙たがったり野太い声を出したりしたけど……


 うーむ…… 年頃の娘さんの扱い方がわからない。


「なあ、アイシュー。俺が悪かったよ。そろそろ機嫌直してくれよ」

「フン、知らない」


 うーむ…… これがミミーならすぐ仲直り出来ると思うんだが。年頃の娘さんをもつお父さん達って、皆さんこんな苦労をされているのだろうか? ご心労が偲ばれる。世のお父さん達に幸あれ!


 いやー、それにしても俺には無理だわ、こんな苦労。俺には子育てなんて絶対に無理だな。心のメモ帳に書いておこう。『俺、結婚しても子どもは作らないぞ』っと。


「ムムム…… 二人とも、もっと仲良くして欲しいゾ……」

 おっ、ナイスフォローだミミー!


「もう! 別にケンカしてるわけじゃないんだから…… ミミーちゃん、そんな顔しないでよ……」

「でも、オレっち全然楽しくないゾ?」


「……わかったわよ、もう。カイセイさん、本当に反省してるの!?」

「ああ、もちろんだ。海よりも深く、山よりも高く反省してるぞ」


「じゃあ、これからは絶対私に変な魔法使わないでよ」

 変な魔法ってなんだよ…… 結構高度な魔法だったんだけど。


「何よ…… 約束出来ないの?」

「いや、そんなことないぞ! 是非とも約束させていただきたい!」


「じゃあ、それでいいわ。ミミーちゃん、これで良い?」

「オウっ! オレっち、それが良いゾ!」


 そうしてミミーとアイシューは、二人仲良く食料を探しに出かけましたとさ、めでたしめでたし…… って、世のお父さん達は、日々こういった戦いの場に身を置いているのか? ダンジョンで戦うよりハードだろ?


 それにしても、ミミーがいなかったら大変なことになってたな。世間一般では、親子喧嘩が発生したとき、子どもが複数いるとどちらかが止めに入ってくれるものなんだろうか?


 とにかく、俺は心のメモ帳を訂正することにした。『俺、結婚したら子どもは二人作る』っと。まあ、今のところ、これで良いだろ。


♢♢♢♢♢♢♢


「それじゃあカイセイさん。ミズーノの街ではあまり時間がなくて詳しく聞けなかったけど、改めて、あなたのことや、あなたが使う魔法について教えてもらえるかしら?」


「ああ、お安い御用だ、と言いたいところだが…… 実は女神様から色々と制約を受けていて……」

 うーむ…… やっぱりこの世界の時間が巻き戻ったことは言わない方がいいんだろうな。だから前回のターンの話も出来ないってことか……


「制約? そ、それを破ると、天界の禁忌にふれるってこと?!」


「……たぶん、そんなたいそうなモノじゃないと思う。なんて言うか、俺自身も女神様の言ってることがよくわかってないんだ。だから、それを確認するために、女神様がいるっていうホコーラの街まで行こと思ってるんだよ」


「ふーん、そういうことだったのね。いずれにせよ、カイセイさんは女神テラ様とまたお話しできるのね。なんだか羨ましいわ」


「一度会えば、もうお腹いっぱいになると思うぞ…… 魔法についての一般的な話なら問題ないと思うんで、まずそこから話そうか。アイシューは『レベル』っていう概念について理解しているか?」


「『レベル』?魔法の腕前が上がるとか…… そういう話じゃないのよね?」


「オウ! オレっちはこの前オニーサンに教えてもらったから知ってるゾ! 『ざっくり言ってレベル20を超えたヤツはチョット注意』だゾ!」


「偉いぞミミー。よく覚えてるな。人にはそれぞれレベルがあるんだ。俺はユニークスキル『人物鑑定』があるから、他人のレベルを知ることが出来るんだ」


「じゃあ、私のレベルはどのくらいなの?」


「アイシューのレベルは57だ。ミミーは44だな」


「ムムム…… オレっち、そんなに低いのか……」


「大丈夫だミミー。獣人族は元から身体能力が高いんで、魔法を使わない剣とか槍とかの勝負なら…… そうだな、人間族のだいたい5割り増しぐらいの力量があると思っていいぞ」


「ごわりまし?」


「ミミーが得意な短剣で戦うとしたら、だいたいレベル66ぐらいの力が出せるということだ」


「オウウウっ! オレっち、アイシューより強いのか?!」


「魔法なしで戦えばそうなるな」


「良かったわね、ミミーちゃん」


 大喜びしているミミーは、そっとしておくとして。


「ここから本題に入るぞ。火、水、風の新魔法には、それぞれ初級から超級まであるのは知ってるよな?」


「ええ。水魔法は呪文だけなら上級まで覚えてるんだけど…… 私、中級までしか使えないのよね……」


「えっ? 上級魔法の詠唱、もう出来るの? おい、アイシュー、お前スゴイじゃないか!」


「呪文を覚えただけで、使えなければ意味ないじゃない?」


「実はな、これにはさっき言ったレベルが関係するんだよ。レベル20で初級魔法が使えるようになり、中級魔法はレベル40、上級は60で超級は80だ」


「なにそれ? 私のレベルは…… 57だって言ったわよね? じゃあ、今の私ではレベル的に上級魔法は使えないってことなの?」


「そういうことだな。上級魔法の詠唱が完璧なら、あとはレベルを上げるだけだ。レベル60になれば、晴れて上級魔導士の仲間入りって訳だ」


「仲間入りって…… 私、カイセイさん以外に上級魔法を使える人、見たことないんだけど? 上級魔導士って、そんなにゴロゴロいるものなの?」


 うーん…… どうだろう。前回のターンでは、俺が初めて上級魔導士に出会ったのは、確か俺がこの世界に来て2年目ぐらいの頃だったから…… まだ今の段階では、そんなにいないのかな?


「それはよくわからないが…… 俺みたいな異邦人なら、上級魔導士がいてもおかしくないと思うぞ」


「じゃあ、ひょっとして、もし私が上級魔法を使えるようになったら、異邦人以外の人間では私が最強ってことになるの!?」


 あれ、アイシューのヤツ、エラく食いついてきたぞ?


「さ、さあ…… ひょっとしてそうなるのかな?」


「ねえ、カイセイさん! そのレベルはどうやったら上がるの!?」


「ま、まあ、訓練でも多少は上がるけど、やっぱり一番上げ幅が大きいのは、魔獣や野獣の討伐だろうな」


 ダンジョンに住むケモノを魔獣と言い、山や森に生息するケモノを野獣と呼ぶ。ちなみに、魔獣は魔法を使った攻撃をしてくる。


「魔獣や野獣は人に害を及ぼす生き物だから、人間が生活するためにはどうしても討伐する必要がある。だから、ヤツらを討伐するのは人のためにもなるし、自分のレベル上げにもなるんだ」


「魔獣や野獣の討伐を主な仕事としている冒険者が強いのは、そういった理由があるからなのね」


「でも、冒険者はナマケモノが多いんだ。アイシューは既に上級魔法の呪文を覚えてるみたいだからわかるだろ? 魔法の呪文って、覚えるのスッゲー大変だよな。だから冒険者を生業としてる魔導士達は、初級魔法が使えればそれで満足してしまうヤツが多いんだよ」


「でも、カイセイさんは水魔法だけじゃなくって、火や風の魔法も使えるんでしょ? それってものすごいことじゃないの?」


 さあ、ここは大いに俺を尊敬するところだぞ、ミミー! と思ってミミーを見てみると。なんだか大はしゃぎで、一人で短剣を振り回してるよ…… アイシューより強いって言われたのがよっぽど嬉しかったようだ。


「まあ、確かにスゴイことなのかも知れないけど…… でも俺や、俺の国から来た異邦人にとってはそうでもないって言うか……」


「どう言うこと?」


「俺達は大なり小なり、みんな試験ってモンを経験してきたんだよ。中間試験とか期末試験とか。それから入学試験や昇級試験なんてヤツもあってだな……」


「あなたの国から来た人達は、みんな勉強が好きってこと?」


「いや、好きじゃないよ。むしろ大っ嫌いだったよ。思い出したくもないぐらい嫌いだよ。でも、この世界の魔導士達と比べると、こんな俺でも意外と勤勉な部類に入るのかも知れないな」


 あれ? だから、女神様はやたら日本人をこの世界に転生させてるのか?


「ふーん。『ちゅうかんしけん』とか、どういう意味かわからないけど、あなた達は勉強する態度が身についているってことなのね」


「まあ、大まかに言うとそういうことかな」


「じゃあ、超級魔法の呪文はもっと複雑ってこと?」


「ふふっ、それがそうでもないんだ」


「どういうこと? もう! もったいぶらないで早く教えてよ」


「実はな、レベル60の上級魔法とレベル80の超級魔法の間に秘密があるんだ。レベル70になると、なんと! みんな大好き無詠唱が使えるようになるんだよ」


「じゃあ、超級魔法には詠唱が必要ないってことなの!?」


「ああ、そうだ。なんて言うか超級魔法って、『今まで良く魔法を勉強してきたね』っていう、ご褒美みたいなもんだと俺は思ってるんだ」


「じゃあ…… 水魔法に関しては、私はその『レベル』を上げるだけで、無詠唱や超級魔法まで使えるようになるってことなのね!」


「そういうことだな。ただ、レベルを上げるためには『経験値』が必要になるんだ。レベルが低い時は少しの経験値でレベルアップするんだけど、高レベルになるとちょっとやそっとの経験値じゃ、レベルアップしないんだよな」


「大丈夫よ、私頑張るから! 私もこれから頑張ってレベル上げすれば、カイセイさんを追い越すことも夢じゃないのね! それでカイセイさんのレベルはいくつなの?」


「俺か? 俺のレベルは99だけど」


「…………あっそ」


 おい、なんだよ。なんか俺が悪いこ言ったみたいじゃないか。


「あっ、それから。カイセイさんが使ってた『ドライヤー』って魔法。あれって『混合魔法』って言ってたけど……」


「ああ。混合魔法は等級に関係なく、2種類の魔法が使えれば、誰だって使えるんだ。ただ、異邦人以外で複数の魔法の呪文を覚えようってヤツはあんまりいないかも知れないな」


「へー…… やっぱりカイセイさんって、意外と見かけによらず、あんまり信じられないけど、やや努力家って言えなくもないかも知れないわね」


 なんだよその辛辣コメント。やっぱりアイシューのヤツ、俺に対してはアタリが厳しいな。


「おい、そこはもうちょっと素直に褒めてくれてもいいんじゃないか?」


「ふふ、そうかも知れないわね」


「え?」


「あのね、私今とっても楽しいの。私これまで誰かに甘えてみたり拗ねてみたりしたことないのよ」


「ああ、なんかそんなこと言ってたな」


「なんかこう、自分がどんな振る舞いをしても、変わらず誰かに気に掛けてもらえるって幸せね」


「うーむ…… それって俺がお父さんみたいってことなのかな?」


「ふふ、そうね。そういうことにしておくわ」


 そう言うとアイシューは、まだ一人で短剣を振り回しているミミーの元に駆け寄った。


「じゃあミミーちゃん、食料探しの続きしようか? またキノコの種類教えてくれる?」


「オウっ! オレっちにデデーンと任せておくといいゾ!」


「おいミミー。お前ずっとダンジョンで魔獣と戦ってたんじゃなかったけ? ダンジョン外でのミッションとか受けたことあるのか?」


「ン? ないゾ?」

 そう言うと、ミミーはニコやかに森へ向かって疾走した。


「いいかアイシュー。キノコにせよ果物にせよ、ミミーの言うこと真に受けて、その場で食べたりするんじゃないぞ。食べるのは必ず俺に見せた後にしてくれよな」


 あれ? やっぱり俺、お父さんなのかな?

下記作品に、おまけの短編「ホニーの師匠、田所文蔵氏(56歳)の苦悩」を付け加えました。こちらもご一読いただけると、とても嬉しいです。


ホホニ ナミダ・ヒトスジー伯爵令嬢は日本文化を誤解しているようです〜迷惑するのはいつも転生者〜

        https://ncode.syosetu.com/n1356gt/

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