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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
②水の聖女アイシュー 編

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水の聖女アイシュー覚醒

「代官ハラノ=ナカ・マックローよ。お前も罪を認めるのだな?」

 ダマシー将軍が問いかけるが返事はない。只々泣き崩れているだけだ。


「否定をしないのなら肯定と受け取る」

 こうしてダマシー将軍の尋問は終了した。将軍曰く、この3人を王都へ連行し、改めて正式な裁判を受けさせたいとのこと。


「なにぶん、これ程、街の権力者達が絡んだ事件など初めてなもので…… 隣国の領主も関係しているようなので私も上の判断を仰ぎたい。魔導士殿、ご了承いただけるだろうか?」


 何ソレ? 俺がこの場で3人を処刑するとでも思ったの? まさか女神様やアイシューに続いて、アンタまで俺のことをキレやすい今時の若者みたいに思ってないだろうな? まあ、若者ってところは…… もういいや。


「俺に異存はないですよ。というより、そうしてもらった方が俺も嬉しいですから」

 俺の返事を聞いた将軍は、ホッと安堵の息を漏らした。しかしだ…… なんで俺にだけ聞いて、アイシューには聞かないんだ? 一番迷惑を被ったのはアイシューだろ? 思い出したぞ! そう言えばこのおっさんもアイシューのことを『人間最強兵器』とか呼んでたな。


「おい、アイシュー! お前はこれでいいのか? 文句の一つぐらい言ってやれよ! まだ、腹の中、おさまってないだろ?」


「そうだ、聖女様! 水魔法をぶっ放してやれ!」

「聖女様をバカにしやがって! 制裁を受けろ!」

「聖女様! ぜひ激しめでお願いします!」

 俺の発言に反応した市民達が騒ぎ出した。


「うーむ…… 市民の皆さんは、悪人どもを王都にしょっ引くんじゃなくて、ここで罰を与えたいんだろうな。よしそれなら、今後のことを考えて、軽いお仕置きぐらいならやってもいいか。その方が、民衆の鬱憤も晴れて、後腐れが無くなるだろうからな。そういうわけだ、アイシュー。後よろしく」


「ちょ、ちょっとカイセイさん! 何言ってんのよ?!」


「そうだなぁ…… アイツら高いところにいてエラそうだよな。アイシューも、俺が風魔法で高いとこまで上げてやるよ」


 アイシューを悪党3人組よりちょっとだけ高いとこまで浮かせてやった。やっぱり説教は上から見下ろさないとカッコつかないからな。


「もう、何やってんのよ! あなたがこの3人を下に降ろせばいいだけじゃないの!」


「まあそう言うな。高いところの方が、市民の皆さんにもよく見えるだろ」

「オウっ! アイシューがこれから悪い人達にオシオキするゾ!」


「もう、ミミーちゃんまで…… 本当にどうなっても知らないからね!」


 こうしてアイシューのお説教タイム——ひょっとしたらお仕置きタイムがあるかも——が始まった。市民の皆さんったら大喜びじゃないか!


♢♢♢


 民衆の期待を一身に背負い、アイシューのお説教タイムが始まったのだが……


「あなた達! えっと…… 自分がしたことがどんなことかわかってるんです…… いえ、わかってるの?」

 うーん…… さっきまでの勢いはどこへ行ったのやら……


「もし争いが起こっていたら大勢の人が傷ついて、とても大変なことになってたのよ?」

 うーむ…… なんて遠回しな表現なんだ……


 うむむむ…… アイシューは一生懸命怒ってるようだが、どうにも迫力が足りない。悪党3人組も、ちゃんと話を聞いているのか怪しいものだ。仕方ない、ここはひとつ手助けしてやるか。


 さっきコッキョーノ山脈でアイシューの背後に発現した白い光はなかなか迫力があったけど、残念ながら、あれって俺にしか見えないんだよな。よしっ! 俺の力であれっぽいものを作って、周りの連中をビビらしてやろう。


 怒ってるぞっ、て感じの演出にしたいんだから、神々しい光を出すんじゃなく、もっとこう、猛々しい炎を身にまとった方がカッコイイだろう。そう、イメージはやっぱり不動明王だ。


 じゃあ火魔法でアイシューの背後に炎を出して、っと。あっ、アイシューのヤツ驚いてる。気にするな。次は、もうちょっと炎を大きくしようか。うんうん、いい感じだ。更に炎の先っちょを鋭くして……


 あっ、風向きが変わった…………


 あっ、背後の炎が風に流されて、アイシューの体の方へ…………


「わかってるんですか? あなた達…… 熱ッ…… あなた達は自分の利益ばかり…… 熱ッッッ…… コホン、利益ばかりを…… 利益ばかり…… 利益…………


!!! あ゛ッッッつゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!


もう! カイセイさん!!! 何やってんのよ! 余計なことしないでよ!!!」


 怒られた……


「おお、聖女様が野太い声で怒ってらっしゃる……」

「このような野太い声、ワシは初めて聞いたぞ……」

「なんという野太い声…… 恐ろしや恐ろしや……」


 住民の皆さん、なんかとてつもなく驚いている…… まあ、あれだ。アイシューが怒っていることが伝わったんだから、これで良しとしよう。


「もう! カイセイさんったら! 野太い声だなんて言われたじゃないの!!!」

 どうやらアイシューさんにはご納得いただけていないようだ。


「いや、まあ…… 怒ってることは伝わったんだから、結果オーライということで……」

「私が喋ってるんだから、邪魔しないでよ!!!」


 ヒドイ…… 一生懸命やったのに……


 ただ、これをきっかけにアイシューも調子が出てきたようで、悪人達へのお説教がヒートアップしていった。するとどうだろう、なんとついには悪人3人組から謝罪の言葉も聞かれたではないか! ほら、やっぱり俺のサポートのおかげだ! 本人に言うとまた怒られそうだから絶対言わないけど……


 さて、弁舌快調アイシューさんのその後の様子だが——

 どうやら悪党3人組から反省の言葉が聞けたので、これで終わりにするみたいだ。


 聴衆はお仕置きを期待していたようだが、アイシューの勢いに押されて、なんとなく納得させられていた。すごいなアイシューのヤツ。俺もあんまりアイシューを怒らせないようにしよう。あれ、もう手遅れなのか?


 俺はアイシューと3人組を地上に降ろし、ウインドロープを解除した。悪党3人組の身柄はダマシー将軍の配下達が拘束して、どこかへ連行して行くようだ。めでたしめでたしだな。


「それじゃあ、カイセイさん、ミミーちゃん、行きましょうか」

「えっ? ああ、もう出発するってことか? そうだな、もう心残りが無いんなら、この街を出るとするか」

 

 アイシューのヤツ、えらく俺に対してご立腹だったから、『やっぱり一緒には行きません』とか言うんじゃないかって、実はちょっとヒヤヒヤしてたんだ。いやー、良かった良かった。


「ちょっと待ってくれ! この街を出るとは、一体どういうことだ?」

 俺の幸せな気分を台無しにするかの如き一言を発したのは、やはりこの人。アイシューを軍事力としてカウントしていたダマシー将軍だ。


「言葉通りの意味だけど? そう言えば、アンタはアイシューのことを『人間最強兵器』みたいな呼び方をしてたよな?」


「いや…… 確かにそのような表現はしたかもしれないが…… もし不快であったのなら謝罪する。申し訳なかった。しかし今、聖女がこの街を出るとか言わなかったか?」


「聖女じゃない、アイシューだ。アイシューは——」

「カイセイさん待って! 私が自分で言うわ!」


 アイシューのヤツ、立派になって…… 世間のお父さん達なら、こういう時きっと人知れず涙を流すんだろうな。俺も師匠として嬉しいよ。あっ、アイシューは弟子じゃなくて、パーティメンバーだっけ…… とにかく、なんでもいいから嬉しいぞ。


 アイシューは自分の言葉で将軍に、いや将軍だけにではなく、ここに集まったすべての市民に向けて自分の思いを語って行く。自分が未熟であること、自分にはもっと経験が必要であること、自分はもっと人間的に成長したいということ、だからこの街を出るということ、成長した暁にはまたこの街に帰って来たいということ……


 なんだか卒業生代表の答辞を聞いているようだ。とても清々しい。『巣立ちの歌』でも歌いたい気分だよ。ん? 最近の若者は歌わないのか? おれも若者だけどまあいいや。聴衆もアイシューの気持ちを理解してくれているようで、中には泣いている人もいるじゃないか。しかし——


「何を言っている! そんなこと許されるわけないだろう!」

 ダマシー将軍が大声を上げ、俺達の前に立ちはだかる。おい、俺の卒業式気分返せよ。空気読めないのかよ。市民の皆さんだって納得してるじゃないか!

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