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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
②水の聖女アイシュー 編

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グン=ジン・ダマシー将軍

「な、なぜ私まで! 私は被害者ではありませんか、降ろして下さい!」

 風魔法ウインドロープでぐるぐる巻きにされたマックロー代官が空の上から叫ぶ。そんな代官の叫びに対し俺は答える。


「うっせーな! お前、公務員なんだろう? 市民の税金で食ってんだろ? 今大勢の納税者の頭上にいるんだから、せめて発言の前には、『高いところから失礼します』とかなんとか言ったらどうだ? エラソーなんだよ、お前ら!」


「そ、そんな公務員一般に対する不満を私にぶつけられても困ります! それに高いところって、そういう意味じゃないでしょう! そ、そんなことより、早く降ろして下さいよぉー!」


「降ろして欲しけりゃ、隣国のクローニン侯爵にでも頼んでみたらどうだ?」


「ななななな、何を言ってるんですかあなたは?」


「何を言ってるかだって? お前がクローニン侯爵とつるんで、聖女サマを隣国に売ろうとしたことを言ってんだよ! 証拠は上がってるんだ。今更とぼけても無駄だからな!」


「そうだ! もっと言ってやれ! そいつの悪巧みは周知の事実だからな! おい、俺は関係無だろ? 早くここから降ろせ!」

 今度はマミーレ商会長の方が、風魔法のロープから抜け出そうともがきながら叫んでいる。


「おい、商会長のおっさん。モゾモゾしながら偉そうなこと言ってんじゃねえよ! 初めての告白を前にした乙女かよ。気持ち悪いぞ! 言っとくが、お前の体に巻きついてるそのロープみたいなのは風魔法で出来てるから、どうやっても抜け出せないんだからな!」


「気持ち悪いとは何事だ、この青二才め! こんなことをしてただで済むと思ってるのか!?」


「なんだよ? ただで済まないならどうするつもりだよ? ヒトスジー伯爵家に頼んで、兵を出してもらうのかよ? それで、占領地の代官になるんだっけか?」


「ななななな、何を言っているんだ、お前は?」


「なあ…… お前と代官って、実はとても気が合うんじゃないのか?」


「おい、それはどういうことだ?」

 これまで沈黙を守ってきたダマシー将軍がここで口を開いた。


「ん? だって代官と商会長のリアクション、似てるじゃないか」

「その話ではない! ヒトスジー家やクローニン家のことだ!」


「わかってるよ。冗談の通じないカタブツだな、まったく」

 俺の一言を聞くや否や、顔を真っ赤にした将軍は俺との距離を縮めようとするかのように、自分の右足を一歩前に踏み出した。その瞬間!


 ミミーが戦闘態勢に入った! 将軍の動きが止まった! 短剣を握りしめ、腰を低く屈めたミミーが将軍を睨みつけている。


「おおっ! やるな、ミミー。初動がとても速かったぞ!」

「オウっ! オニーサンには指一本ふれさせないゾ!」


「くぅー、なんて男前な台詞なんだ。俺も言ってみたいぞ」

「ムムっ! でもオニーサン、気をつけた方がいいゾ。このオジサン、たぶん強いゾ」


 その通りだ。ミミーのレベルは44。一方、将軍のレベルは46だ。『人物鑑定』スキル持ちの俺が言うんだから間違いない。将軍は人間族トップクラスの強者の一人であると言えるだろう。だが獣人族は高い身体能力を有しているため、魔法を使わない単純な近接戦闘ならミミーの方に軍配が上がると思われる。


「獣人族の娘よ。お前もなかなかの腕前のようだ。こんなに殺気を感じるのは何年振りだろうか」


 なんだよ、この達人同士のやり取りみたいな感じ。俺も混ざりたいぞ!


「ミミー、心配してくれてありがとな。でも大丈夫だ。一般的に魔法による攻撃中は、他の魔法を使えないと思われてるが——」


 俺は風魔法で悪党3人を上空に吊り上げたまま、ダマシー将軍の前に水魔法で作った壁を出現させた。


「俺は魔法の同時攻撃が出来るんだよ」


「オウっ! 流石オニーサンだゾ!」


「バカな! そんなデタラメな攻撃があってたまるか! しかも今の魔法…… 無詠唱などあり得るわけがない!」


 そう言ってダマシー将軍は、目の前にある水の壁に向かって剣を振り下ろすが…… 当然、水でできた壁を切り裂くことは出来ず、むしろ返り血ならぬ返り水を浴びている。


「ムムっ! 将軍のオジサン、ベチョベチョだゾ! ハシャギ過ぎて服を着てるの忘れたまま、海に飛び込む海水浴客みたいだゾ!」


「この世界にはそんなにそそっかしい人がいるのか…… まあ、少なくとも今日はお風呂に入らなくても良さそうだな」


「キ、キサマら! いい加減にしろ!!!」


「まあまあ、落ち着けよ将軍。俺達がアンタに対して敵意が無いのはわかっただろ? それより、見て欲しいものがあるんだ。その前に、っと」


 俺は水の壁を消滅させた後、今度は風と火の混合魔法『ドライヤー』をダマシー将軍に向かって吹きかけた。この魔法、前回のターンでは特に女性陣から大人気だった。髪の毛の乾きが異常に早いそうだ。ただ、髪が痛まねばいいのだが。


「バ、バカな…… 服がもう乾いている。それにキサマの魔法は…… やはり無詠唱なのか?」


「まあ、そんなことはどうでもいいじゃないか。なあ、将軍。この手紙とかメモとかなんだけど、さっき聖堂長の部屋から盗んで…… 押収してきたものなんだ」


「オニーサン! オレっちも見たいゾ!」


「そうか、ミミーはまだ見てなかったな。そうだ! 将軍、よかったらここで読み上げてくれないか? ここにいる市民の皆さんにも真実を知らせた方が良いだろう?」


 ダマシー将軍は警戒した様子を見せながらも、俺の元へと歩みを進めてきた。

「……とりあえず、内容を確認する」

 そう言うと、俺から手紙やメモを受け取り、ザッとその内容を確認した。


「……なんてことだ。確かに、これは市民にも知らせた方が良いだろう。貴公はこの証拠を聖堂長の部屋で見つけたと言っていたな?」

 俺の呼び方が『キサマ』から『貴公』にランクアップしている。ちょっとは信用してくれたのか?


「ああ、そうだけど」

「なら、代官や商会長の館にも同様の証拠がある可能性が高い」

 ダマシー将軍はそう言うと、自分の周囲を警護していた部下達へ、代官所と商工会議所の捜索に向かうよう指示した。おお! 俺達の目の前にある代官所の建物の中に、ワラワラと将軍の部下達が入って行くではないか。


「おいっ! ダマシー将軍。何やってんだよ! 俺たちゃ仲間だろ? そんな怪しい魔導士に騙されんじゃねえよ!」

 商会長が上空から叫ぶが、ダマシー将軍は全く取り合わない。残りの二人も商会長に同調し騒ぎ出した。


「ウインドロープ、追加」

 俺は新たにウインドロープを作り出し、悪党3人の口を覆った。風魔法バージョン猿ぐつわの完成だ。


「反論があるなら後でちゃんと聞いてやる。しばらく黙ってろ!」

 俺は悪人達に向かって叫んだ後、ミミーに向かって話しかける。


「いいか、ミミー。これは暴力で無理やり言うことを聞かせようというんじゃなくてだな…… なんて言うの? 裁判を妨害しようとするヤツらを制止したというか…… 市民の皆さんの聞く権利を保護したというか…… うーむ……」

 俺は情操教育に心を配る男だ。


「ン? うるさいんなら、一発殴って静かにさせればいいと思うゾ! それからオニーサン、ひょっとしてゴーモンの仕方を知らないなら、オレっちが教えてやるゾ?」


 あー、満面の笑みを浮かべて怖いこと言ってるよ…… よし、この件は時間をかけて話し合うことにして、今はこの笑顔を見なかったことにしておこう。強要された自白は証拠にナリマセン。


「おい。貴公が子どもの教育に対して並々ならぬ関心を持っているのはよくわかったから、そろそろ話を戻してもいいだろうか?」

 ちょっとお待たせしていたダマシー将軍が再び口を開いた。


「あっ、なんかスミマセン。それにしても…… いやー、てっきり将軍は頭ヒャッハーな脳筋ヤローだと思ってたんだけど。なんて言うか犯罪捜査もイケるクチなんですね。なんかいろいろスイマセンでした」

 俺は正直な感想を述べた。将軍は初めて少し笑った。


「ふん。言っていることはよくわからんが、恐らくロクでもないことなんだろう。それにしても貴公は一体何者なんだか。まあ、それは後でじっくり尋ねることにしよう」


 そう言うと、ダマシー将軍は上空にいる悪党3人を見上げ大声で叫んだ。

「おい!!! キサマらもよく聞いておけ!」


 さあ、悪党どもに対する糾弾大会の始まりだ!



 それはそうと…… 俺は久し振りに、アイシューの姿を眺めた。


 アイシューは、まだ真っ赤な顔をしてプルプルしていた…… よっぽどオカンムリのようだ。これはプリンというよりイチゴゼリーだな。

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