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結婚経験ナシのおっさんが、いきなり聖女と令嬢と獣耳娘の保護者になったら  作者: 大橋 仰
第2章 国王になったカイセイ  ①インチキ国王誕生 編

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アイアツマ=リシ・アイシュー

「パイセンさ…… ん。話を元に戻すようで申し訳ないのですが、私に公爵なんて、とても務まるとは思えないんですけど……」

 恐縮した様子でアイシューが口を開いた。


「別に公爵だからって、何か特別なことをするわけじゃないんスよ。いいっスか、アイシュー氏? 確かにカイセイ氏の戦闘力は桁違いっスけど、この男に人望なんて、これっぽっちもないじゃないっスか」

「それはそうですけど……」

 そこは否定していただきたい……


「それに、カイセイ氏のことを知ってる人なんて、ほとんどいないじゃないっスか。その点、アイシュー氏のことを知っている人は大勢いるっスよね。だからアイシュー氏が公爵として…… まあ、身内みたいな感じでカイセイ氏を支えますよと、市民のみなさんに宣言すると、きっと市民のみなさんも安心すると思うっス」


「本当に私でいいのでしょうか?」


「アイシューは優しいから、アイシューがコーシャクになったら、みんなは嬉しいと思うゾ!」

「もう、ミミーちゃんったら……」


「僭越ながら、私もアイシュー様には、是非とも公爵としてこれまで以上、国王陛下をお支えいただきたいと思います——」

 おっ、知恵者クローニン侯爵も乗り気のようだ。


「——前回お会いした際にも感じたのですが、アイシュー様だけでなく、ヒトスジー嬢、ミミー殿のお三方のお力添えがあればこそ、陛下は強くあることが出来るものと思います。ヒトスジー嬢とミミー殿は、公爵の地位を得られるのは難しいようですので、ここはアイシュー様がお三方の代表ということで、公爵になっていただけないでしょうか? 公爵として公的に、もちろん今まで通り私的にも、国王陛下をお側近くでお支えしていただきたいのです」

 流石はクローニン侯爵。とてもよく俺たちのことをおわかりじゃないですか!



「そうネ。カイセイはすぐ調子にのるから、アタシたちが近くにいて助けてやらないと、絶対なんかやらかすと思うワ」

「オレっちも、アイシューと一緒に、オニーサンをオササエするゾ!」


「…………ちょっとカイセイ氏。なんで泣いてるんスか?」


「俺、お前たちのような娘を持って、本当に嬉しいよ……」

「アンタ、赤の他人じゃないっスか…… まったく、なに言ってんだか」


「ウッセエな! 俺の気持ち的には娘なんだよ!」

「ハイハイ、わかったっスよ…… まったく、どこかの女神様と一緒で、本当に喜怒哀楽が激しいんスから」


「あの…… そういうことでしたら——」

 アイシューが恥ずかしそうに言葉を述べる。

「——私でそのような大役が務まるか不安なのですが、精一杯頑張らせていただきます。皆様、どうぞよろしくお願いします」

 アイシューがそう言うと、彼女の周りは拍手の音で包まれた。


 ここまで放ったらかしにしていた、クローニン侯爵の家族や従者約30人からも、温かい笑顔とともに拍手が贈られている。

 なんだか申し訳ない。でも心からありがとう。



「ねえ、それならアイシューの新しい名前を考えましょうヨ!」

 ホニーが目を輝かせて声をあげた。そして——


「あのね。平民が貴族になる時はね、多くの場合、自分の名前を姓にするのヨ。えーっと、日本風に言うと、『アイシュー』が『苗字』になるってことネ。それでファーストネームの方を新しく考えるってワケ」

 流石はお貴族様。こういうことには詳しいんだな。


「それから、新しい名前の命名はあくまで形式的なもだから、呼び方はそのままって人が多いわヨ」


「じゃあ、これまで通り、アイシューを呼ぶときにはアイシューでいいんだな?」

 俺の質問に続き、アイシューも、


「私もその方が嬉しいわ。急に名前が変わるなんて、変な感じだから。じゃあ、名前は自分で考えなきゃいけないの?」

と、ホニーに質問した。


「いいえ。名前は国王からもらうことが多いわネ」

「じゃあ、カイセイさんが名前を考えてよ」


「それは別に構わないんだけど…… なあホニー。自動翻訳機能さんのおかげで、俺にはアイシューの名前が『あ・い・しゅ・う』という音で聞こえているんだけど、当然、この世界の人には違う音で聞こえてるんだよな」


「そうね。えっと…… アタシがこの世界の音で『アイシュー』と発音しても、カイセイには『あ・い・しゅ・う』という音に変換されるだろうから、元々の音を説明することは出来ないでしょうね」


「そうか…… じゃあ、俺が日本語で考えた名前をつけても、アイシューには違う音として聞こえるのかも知れないな…… それなら、俺が名前をつけるとおかしなことになるんじゃ——」


「チョット! アンタ、なにグズグズ言ってんのヨ! 物は試しで、とりあえず言ってみなさいヨ!」


「そういうことなら…… 実は自動翻訳機能さんが割り振った『アイシュー』って言葉は、ちょっと哀しい意味があるんだよ」

 たぶん、『哀愁』という意味なんだと思う。


「でも、愛を集めると書いて、『愛集』と書けなくもないんだよ。だから、俺はアイシューに愛が集まってくればいいなって思いながら、アイシューの名前を呼んでたんだ」


「チョット! なんでカイセイはアイシューにばっかり優しいのヨ!」

「……なんでそうなるんだよ。ホニーの名前もちゃんと優しさを込めて呼んでるから、今はアイシューの話をしような」


「ねえホニー氏。後で自分も一緒に話を聞くんで、今はアイシュー氏の名前を一緒に考えて欲しいっス」

 パイセンが助け舟を出してくれた。


「約束だからネ!」

 本当にホニーはパイセンの言うことは素直に従うな。まあ、いいけど。



「だから『愛を集めると書いてアイシュー』。もうちょっとヒネって、そうだな…… 『愛集まりし・アイシュー(アイアツマ=リシ・アイシュー)』なんていいかなって思ったんだけど。なあアイシュー、俺の考えてること、ちゃんと伝わってるかな?」


「カイセイさんの言葉に込めた思いは伝わったわ、ありがとう! それから、今の言葉は翻訳されないみたい。だからカイセイさん、もう一度言って!」


「あ・い・あ・つ・ま・り・し」

「それなら発音出来そうよ! ちゃんと覚えて見せるから!」


「気に入ってもらえたんなら嬉しいよ。でも、どうして翻訳されないんだろう? 『集まる』とか『愛』とかなら、翻訳されてもいいはずだけどな」


「…………そんな文語調っぽい表現まで、翻訳出来るようには作ってないっス」

 あっ、そうだった。自動翻訳機能を作ったのは、パイセンだって言ってたな。


「なんスか、その『し』って? 完了の助動詞っスか? そんなものまで翻訳する機能を作れと言うんスか? 自分を過労死させたいんスか? それとも俳句の真似ごとっスか? 単にカッコつけたいんスか?」

 ……どうやらパイセンを怒らせてしまったようだ


「別に自動翻訳機能にケチをつけたわけじゃないよ。これまでどれだけ自動翻訳機能さんに助けられたことか。ありがとうな、パイセン」


「……あれ? ボケないんスか? 自分、結構いいパス出したつもりだったんスけど?」

「……おいパイセン。お前、実は素直に感謝されて、ちょっと恥ずかしいんだろ?」


「チッ!」

 舌打ちしてんじゃねえよ、この照れ屋さんめ。


「赤面したパイセンは放っておいて…… なあホニー。アイシューの名前、お前から見てどう思う?」


「うーん…… 日本人の感覚で言うと、『鈴木クロエ』とか『田中ステファニー』みたいな印象かな。でも、おかしな感じはしないワ。なんだか新鮮な感じで、むしろカッコいい感じネ」

 お前、日本人の感覚なんてものまでわかるんだな……

 なんてことは置いといて。


 ミミーはというと、一生懸命『あ・い・あ・つ・ま・り・し——』と、アイシューの名前を覚えようとしている。

 みんな、俺が考えた名前を気に入ってくれたようだ。

 それなら、これにてアイシュー叙爵の件は、一件落着ってことでいいよな。


 しっかり者のアイシューと、知恵者のクローニン侯爵が新しい国の要職についてくれたんだ。俺の出番なんてないだろうな。いやぁ、残念だよ。



 …………なんてこと、この時は考えていました。


 実際はパイセンの予想通り、この後、次から次へと旧ナカノ国の領主たちが、俺たちの国への服属を求めてやって来ることになったのだ。

 なんかもう、面接ざんまいの日々なんだよ……

 ちょっと休みたいんだよ……

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