燃えよ!!ロボゴン
※あらすじに引き続き、再度警告です。カンフーアクション作品ではありません!
『チック=ニ=チアサ』と言うローファンタジーな世界が舞台です。
微妙な戦闘描写が作中に存在しますので、苦手な方はご注意をお願いします。
20XX年、5月。
日本は驚愕に包まれた。
毎年毎年悩まされてきた、国や世界の危機。
その兆候である不可解な事件。それが5月になっても起きなかったのだ。
4月になると、謎の組織からの宣戦布告をはじめとして、大なり小なり発生する異変が。なに一つも。1度とて。
既に季節の変化並みに受け入れられていた、年中行事みたいに感じてしまっていた事が、全く起きないのだ。
……と国内的にはそうだが、実は極一部の地域で異変が起きていた。
それを国は隠している。
なぜなら……。
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「ロボゴン、0点!!」
「ホアタ~……」
とある田舎町。
ここで長期の教育実習が行われていた。
細かい経緯は省くが、この地は1年間キカンズと言う名称を付けられた、人間とほぼ同サイズな機械生命体達の実習地として使われている。
有機生命体との共存の前段階として、これを計画し国から認可を受けた。
今回の目標としては、各機の社会生活における有用性を示すこと。
それと人間の社会へ与える影響力の調査。
もちろん極秘。
だが国主導であるのが問題となり、情報を掴んだ国のとある組織が戦力強化するべく、サンプルを求めキカンズ誘拐と言う暴挙が画策されていると言う。
ちなみにキカンズと言う名称へと決まる前には、紆余曲折がある。
外観がロボットで戦闘兵器であるため、ロボコ○と呼ばれかけたり。
むしろロボットの略称はボットで、兵器も搭載しているならボト○ズだろうと、むせそうになったり。
友好的なロボット群なら、キカイのフレンズ。よってカイ○ズにしよう!などと、地方のホームセンターへ入店しそうになったり。
ふざけるのも大概にしろ。権利団体からお世話になりたいのか?
それで結局一番穏当な、キカイのフレンズを略してキカンズ。機関ズとも読めるし、良いじゃあないかとなった。
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「いいよなぁ、みんなは。ウエポンラックを利用して、町の為になる重機を積んだり配達屋とかやって、評判が良いんだから。オイラなんて近接戦闘機だから、ウエポンラックが無いんだよなぁ」
ひとり寂しく、町の空き地で黄昏れているロボゴン。
その姿は一見黄色くて歪なドラム缶じみたシルエットを持っていて、それにまん丸の目やブリキ製にも見える手足がついていて、とても愛嬌のある見た目をしている。
ちなみに側面には赤い線。決して黒ではない。
自嘲通りの強襲用近接戦闘機体で、武装は両腕部レーザーブレードのみ。
レーザーブレード発振器は近距離レーザーガンにもなるが、今は完全に武装を解除されているので全く関係ない。
補足として、ロボゴンの開発コンセプトは鉄砲玉。
敵陣へ強襲をかけて引っ掻き回す。強襲を成功させるために装甲は前部集中、アサルトブースターと脚部ローラーによる高速機動、飛んで跳ねて攻撃を躱しながらの曲芸戦闘。
つまりロボゴンのマシンスペックでは、力仕事や物を多く持つのに向かない。
「オイラが人の役に立つには、どんなことをすれば良いのかなぁ?」
機械生命体の演算能力は高い。高いが、日常生活でそこまで求められることはない。
町の人から買い物を頼まれても、他のキカンズより積載量が不足している。
戦闘兵器のスペックで家事の手伝いなどをしたら、皿を割るわ家具を壊すわ見るだけで不快になる害虫をヤれば床を壊す。
ならば土木工事の手伝いだ!となれば、機材を次々壊し地面なんて大穴ばかり空けて、全く作業が進まない。
アレもコレもと人の為になりそうな事をやって来たが、全部裏目に出たり他のキカンズより駄目駄目だったりで、実習の評価担当から毎回0点を食らってばかり。
ずっとウンウン唸るロボゴンを、先程まで物陰から見守っていた介護ロボに似た女性型ロボが近寄り、手を握る。
「大丈夫よ、ロボゴン。貴方に向いた仕事がきっとあるはずよ、焦らないでゆっくり見つければ良いのよ?」
「キカイナちゃん……」
良いことを言っている風だが、よく聞くとただの当たり障りがない慰めである。
「オメーに向いた仕事なんて知らねーよ。テメーで探せや」をマイルドにしただけである。
「ありがとう、チカラが出たよ!よーし、明日もガンバルぞー!!」
……あんな言葉で元気を出せる、単純なロボゴンであった。
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全く役に立てないロボゴンが、0点を出し続けるある日の田舎町。
「ロボゴン!事件よ!!」
ご老人方の介護で早々に社会的地位を得て町の皆様からチヤホヤされているキカイナちゃんが、ロボゴンへと慌てて報告に来た。
現在訳あって、ロボゴンの通信機は故障中。
「キカンズのロボガンが、日本の機工警察から襲撃を受けたの!!」
「なんだってーー!?」
説明しよう!
ロボガンとは、遠距離からの砲撃を得意とする機体である。
ウエポンラックの容量は絶大で、戦車1輌分の装備を搭載して使用できる。
現在は宅配便の手伝いとして、とても重宝されている。
重ねて説明!
機工警察とは、国の秘密組織であるスーパーヒーロー達の技術を、警察特殊部隊クラスの警官でも扱えるように一般化させた技術で造られた、装甲付きパワードスーツを着込んだ警察隊を指す。
武装は赤熱化する警棒『ヒートケイン』と、撃ち込んだ対象の人体組成以外を溶解する対怪人用の拳銃弾を装填した特殊銃のみ。
この隊は怪人が現れた際に、スーパーヒーローが到着するまでの壁となったり、最前線で民間人の避難を行うために設立された。
あえて言うが、メタルなジャックさんほどの戦力はない!
あんな過剰な戦力を警察が持っていたら大問題だ!
「機工警察の装備じゃ活躍できなくて、税金泥棒と言われる事に耐えられなくて、私達の体に使われている技術が欲しいんだ!……って」
キカイナちゃんはとても悲しい声色で、頭と肩を落としながら言う。
警察に同情しているようだ。
なにせその気持ちがとても良く分かる。キカンズだって人に役立つために今頑張っているのだ。その気持ちを否定されれば、そりゃあ悲しい。
頑張りが認められないなら、更なる力を求めるのも当たり前だ。
でも駄目だ。警察はあくまでも治安維持の為の組織。
戦闘を目的とした組織では、決してない。
「分かった!ロボガンを助けにいく!!待ってろよ、ロボガン!!」
気合いを入れたロボゴンは、脚部のローラーと背面のブースターに力を込めて、たちまちの内に彼方へとカッ飛んで行く。
それを見ていたキカイナちゃんは、とても焦る。
「待って、そっちじゃない!襲撃された現場は向こうなの!!」
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聞く耳持たず明後日の方向へカッ飛んだ先。
潰れた町工場の入り口付近。
「いた、ロボガンと機工警察だ!!」
なんと、運良く対象を発見してしまったロボゴン。
敵はまだその奪還せんとする存在に気付いておらず、のんきに捕縛したキカンズを建物内へ運び込もうとしている。
そこへ全力で襲撃をかけた。
「ロボガンを返せ~~っ!!」
……叫びながら。
こんな大きい物音をたてたら、奇襲にはならない。
そこまで強襲用機らしくする必要は無い。奇襲が出来るなら、強襲より効果的なのだから。
その叫び声に反応し、すぐさま迎撃態勢を整えてしまった機工警察達は、さすが警察の特殊部隊員である。
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ここからはロボゴンの独壇場。制圧しようと組みつくべく寄ってくる機工警察達を、殴り蹴倒し張り倒し、並み居る輩を千切っては投げ千切っては投げ。
いくら訓練を重ねて精鋭と呼ばれるまでに至った隊員達も、元々戦闘兵器として造られ本気になったキカンズには敵わない。
その調子の良さから、いつしか怪鳥と聞き違える様な音声さえ響く。
救出対象であるロボガンはその辺に捨て置かれ、機能停止したまま動かない。
だがいくら強かろうが、所詮は単機。
機工警察にとっては性能差による不利なぞ、いつもの事。
何度それで悔し泣きしたか、数えるのが馬鹿馬鹿しいほど経験している。
パワードスーツを着ていない普通の警官だって、そんなの慣れっこだ。
今まで経験した数々の苦い思いが積み重なり、1を多数で囲んで効率的に無力化する方法を心得ている、数が揃っている警察相手には多勢に無勢。
まるで大きな蝶を捕らえんとする蜘蛛が如く。
連携を駆使し、強敵の制圧まであとわずか。
何名かのスーツから煙が噴いているが、まだ大丈夫。イケる!
気が付けばまとわりついてくる警察相手に四苦八苦するようになり、周囲への警戒が薄れてしまったロボゴン。
少し離れた場所からその機会を、今か今かと舌舐めずりして待っていた機工警察のひとり。
それはヒートケインを構え、意表を突いて攻撃してやろうとしていた。
タイミングを計り、ロボゴンの両腕を何人もの警察で飛びついて押さえ込み、視線がヒートケイン持ちへと飛ぶ。
意味を理解した当人は、無言のまま疾駆する。
ロボガンも同じ戦法で捕縛したのだ。今回も成功させてやる!
そう意気込み、ヒートケインを握る手が汗をかいたその時。
『……ヒートケイン、丸めた新聞紙へ、変換』
どこからか、幼く可愛らしい呟き声が聴こえてきた。
その直後にロボゴンへ“ぺこんっ”と言う音がする。
そう、機工警察のひとりが握っていた元ヒートケインを叩きつけた音だ。
その出来事を信じられない警察。手に持った物を確認すると、ヒートケインだった物は丸めた新聞紙になっていたのだ。
他の者の装備はどうか。
……ヒートケインは全て丸めた新聞紙へ。
ならば特殊銃だ。有機物ではないから溶けないが、銃弾としての威力はそのままだ。
訓練によって得た素早い身のこなしで、全員銃をラックから引き抜くが、またもやどこからか声がする。
『……銃、クラッカーへ変換』
駄目だ!ピストルクラッカーになってしまった!!
これ一丁でいくらすると思っているんだ!
無くしたと報告なんてしたら、大目玉では済まない大惨事だ!!
なんて外道だ!俺達の明るい未来を奪うとかじゃない!目の前の道すら簡単に閉ざしやがった!!
絶望にまみれる機工警察達。
ロボゴンはと言うと2度もした可愛らしい声の主を探し、周囲を警戒しているが、何も見当たらない。
そこへ、新たな絶望がやって来た。
「ロボゴン無事!?壊されてないよね?みんなを連れてきたよ!!」
ロボガン救出隊第2陣。田舎町の各地へと散っていたキカンズ達が、キカイナちゃんに連れられてわんさか登場。
その威容たるや、歴代ロボットアニメ主役機のオールキャスト大集合!
ただし武装は解除されている。ステゴロでやる気だ。
機工警察達は直接的な命の危機を強く感じた。
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「本日の採点を行う!!仲間を助けるため、いち早く現場に駆けつけた事は評価する」
「やった!!ガッツン先生に褒められた!!」
「しかし!下手をしたらお前も捕まって連れ去られていたかもしれない、その無鉄砲さは頂けない!」
「えー!?頑張ったのに、駄目なの~?」
「馬鹿者!!助けに行ったのに助けられず、逆にやられていたなんて冗談にもならない!!」
「む~~!」
「よって、そこを踏まえて戒めとしなさい。ロボゴン、0点!!」
「ホアタ~……」
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場面は変わり、夕暮れの空き地。
今回もまたガッツン先生から0点をもらい、ガッカリしているロボゴン。
そこへまるでお約束みたいに、キカイナちゃんが現れた。
「今回も頑張っていたのに、0点なんて残念だったね……」
かく言うキカイナちゃんだが、本人は100点を余裕でとっている。
今回のトラブル対応で高く評価された結果だ。
同情されたロボゴンだが「んーん」と体を横に揺する。
……首が無い機体であるため、否定は機体全体で行う。
「今回で分かった事があるんだ」
ガッカリはしていたが、なにかを掴めてもいたようだ。
思ったほど落ち込んでいない様子に、ほっとするキカイナちゃん。
ロボゴンは機体を反らせ、片腕を思いっきり掲げるて叫んだ。
「オイラはやっぱり戦闘兵器なんだ!戦いで人の役に立てば良いんだよ!守るためなら、いくら暴れても怒られないよね!!」
「……あ、うん。そうだね」
「よーし!オイラ、明日もガンバルぞーーーっ!!」
キカンズ達は何を目的とした長期実習なのだろうか?
それを放り投げ、変な決意を示すロボゴンに対し、生返事しか返せないキカイナちゃんだった。
以下はこれを書くにあたって、作った設定のQ&Aとなります。
なので、こういった面倒な細かいのを読むと萎える方は回避をお願いします。
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ちなみに書かれてない事柄は、ノリと勢いで書いた設定なんだ~と、察してください。
Q.田舎町ってどこよ?
A.田舎町はいつも貴方の夢の中に……。
Q.田舎町の住人は?
A.ロボゴンが居候する家の子、タケシ君をはじめとして、ケッタ君、タケミ君、タスケ君、タカシ君、タクミちゃん、タケ兄さん、タミコ奥様、タカおじさん、タナクシ先生、タカダ校長先生等、様々に設定されていますが、恐らく出番はありません。
Q.キカンズはどこからやって来た?
A.分かりません。政府へ協力を取り付けるため、次元の彼方から現れたのは観測されました。
Q.キカンズ。ズで複数形なんだから、達はいらないよね?
A.単体でもキカンズ呼びなので、分かりやすく区別しようと行った結果です。ご理解をお願い致します。
Q.機工警察の暴走?
A.正確には若い隊員の暴走ですね。自分達は頑張っているのに、正当な評価がもらえない!と不満が爆発して“戦果”を出せれば!!となった。
Q.若い機工警察のその後とかは?
A.クビ。破損や紛失した装備の弁償代を請求されました。キカンズにも人権を与えたので、暴行罪と誘拐未遂で逮捕・罰執行。まともな人生を以後、送れないのは確定しています。
Q.あれ?あの謎の声で変換されるのは一時的で、装備は元に戻るはずでは?
A.戻る前に機工警察の先輩方が、怒りに任せて全部滅茶苦茶にしちゃったので、戻っても壊れたままでした。
Q.ロボガンをどこへ移送するつもりだった?
A.機工警察の装備開発科。同調した(ふりの、技術見たい技術馬鹿)研究者達の所へ。持ち込んだ瞬間、誘拐したのが方々へバレると言う、浅はかな計画。
Q.機工警察がしている装備の外観は?
A.Gの3番バイク乗り風。色は統一されており、メタルなジャックさんみたくカラフルではない。
Q.ヒートケインの威力を知りたい!
A.ぶっちゃけ焼きゴテ位です。対ビーム(超高熱)加工をされた盾すら焼き斬る、あの斧程の力はありません。
Q.それでロボゴンを殴ったところで、ダメージとか出せるの?
A.出せます。少しですが衝撃で動きが止まり、その隙に機体のどっかへケインを突っ込み、内側から熱暴走を誘う。それでロボガン捕縛に成功しました。
Q.人体組成以外の有機物を溶かす銃弾すげえ!
A.“効けば”改造人間は普通の人間に戻されるレベルで強力です“効けば”
Q.え……どういう事?
A.怪人達の再生速度の方が……なので“戦果”を得られない若い隊員が……。本来なら溶かして再生される前に、ヒートケインで焼いて再生を止められれば良かったのですが、そこはお察しください。
Q.ロボゴンのピンチを唐突に救った幼い声の正体は?
A.同世界観シリーズの前作をご覧下さい(宣伝)
Q.幼い声関係なんですが、なんかその周りで恐ろしく速いナニカが、動き回っていませんでしたか?
A.しっ!見ちゃいけません!!あんな“弟”のスカートの中身をしつこく追いかけ回す、変態を見るなんて目に毒です!!真似もしちゃ駄目ですよ!