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第3話 二度目の遭遇


 「つまり、お前も獣に追われて街道からここまで逃げてきたと? だけど食べ物とかの持ち物は全部逃げる最中にどっかにいっちまって、食べるものがない中三日間森の中をさまよった挙句、ここで行き倒れてしまった、と?」

 「はいはい。その通りで間違いないですね。いやー、危なかったですよー。もう少しで死ぬところでした。本当に助かりましたよー! あれ? 私死んじゃったんでしたっけ? あははははー! うっかりうっかり。へっ……? お前も?」

 

 まるで死んだことが笑い話かのように話す少女。

 そんな少女に、人生で一番ため息をついた日なんじゃないかと思うほど、また、はぁ、とため息をつきながら、どこか疲れた表情で曜は少女に自分の経緯を話す。

 

 「と、言いますと、あなたも獣に追われてここに?」

 

 確認してくる少女に、

 

 「だな。お前と似たような感じだ。街道で襲われて、ここまで逃げてきたって感じだ。本当に死ぬかと思った」

 「あなたも災難でしたね」

 「ああ、ほんとにな」

 

 何か似た境遇に面白くなった二人は同時に、

 

 「「ぷっ。あーはっはっはっはっはっはっはー――」」

 

 唐突に笑い出した。

 が。

 その瞬間――

 

 『ピタッ』


 大笑いするために頭上に向けていた顔に冷たくてヌメリ、とした極大のしずくが垂れてきた。

 

 『ムワァ』

 

 香ってきたのは、鼻を割くような腐臭と、顔をしかめたくなるような獣臭。

 笑い出した時と同様に二人は同時に笑うために細めていた目を開けると、

 

 「ガアアアアアァァァァァアアッ‼」

 

 その先には自分たちを食い殺さんとする凶悪な獣の形相がそこにはあった。


 先に逃げ出したのは曜だった。

 それはもう、思い切りよく、少女をこの場に残すことに対してなんのためらいも感じさせることなく、猛ダッシュを決めていた。

 

 「まっ⁉」

 

 ――てと曜に言おうとした少女は、そんなこと言っている場合ではないことを思い出し、自分も同じように、曜のあとに続いて逃げ出した。

 

 はあはあはあはあ。

 森の中に曜と少女の二人の息が流れていく。

 ふっふっふっふ。

 とその後を、二人を追う影の鼻息が混じる。

 

 どれくらい走っただろうか。

 気が付けば、前方に光が見えてきて、そこに向かって走り抜けると――

 

 「よっしゃあああああああああっ!」

 

 ――元いた街道に出ていた。

 

 追ってくる獣の姿は、いつのまにか消えていた。

 曜は再び生き延びることができた喜びを共有しようと後ろに続いていた少女に振り向くと――

 

 「……あれっ?」

 

 振り向いたところに少女の姿は無く、曜の喜色にとんだ視線だけが空を切るだけだった。

 

 「ちっ」

 

 一度命を助けておいて、このまま見過ごすのも本当に寝覚めが悪いと思った曜は、舌打ちをしながらも、


 「ちょっと、少しだけ、戻っていなかったらその時はあきらめよう」

 

 と、少女がどこかで倒れていないか、だけでも確認しようと森へとその身を翻すのだった。



 ♢

 


 「蘇生ッ!」

 

 ユニークスキル蘇生を得てから二度目の使用を行うと、さきほど少女にかけた時と同様に眩い光が一瞬またたいて――

 

 「はあっ! 死ぬかと思いましたよっ‼」

 「だから、お前は死んでたよっ! なんで覚えてないんだよっ⁉」

 

 ――少女が生き返った。

 

 そう。

 彼女は死んでいた。

 少し引き返したその先に彼女はいた。

 確かにいたのだ。その場に。

 ただ。骨のみの姿となって。綺麗にしゃぶりつくされていた。なんか、もう、申し訳なくなるくらい。肉片ひとつ残らず、美味しく平らげられてしまっていた。

 おそらく、ではなく、間違いなく追ってきていた獣の仕業だろう。

 

 「へっ? マジですか?」

 「マジで」

 

 死んだ直前の記憶って無くなるんだろうか?

 自分もこのスキルについてまだ、知らないところが多すぎて謎であった。

 で、あってもだ。

 とりあえず、少女が生き返ったのだからよしとしよう。

 ヒイエエエエエエエエェェェェェェッ叫ぶ少女を促し、

 

 「一旦、街道に戻るか」と曜は呟いた。



 ♢

 


 街道に戻った曜は、知りたいことを一つ少女に問いかける。

 

 「お前って町がどっちにあるか分かったりする?」

 

 日は大分傾いてきており、夜の気配が近くなってきているため、現在の最優先事項を少女に問いただす。

 そんな曜の問いかけに、はて、と首を傾げた少女は、

 

 「たぶん、こっちですね?」

 

 要領は得ないながらも、明確に方向を指し示してくれた。

 

 「……そうか、助かる。それでお前はこれからどうするんだ?」

 

 問いかける中で、もう一つ浮かんだ疑問を投げかけると、

 

 「はっ⁉ 私にはやらなければならないことがあったんでしたっ! こうしちゃいられませんっ! さっそく町に行かないと! 助けてくれてありがとうございましたっ! それではっ!」

 

 何か重要なことを思い出したのか、焦ったような表情になった少女は、自分が指し示した方向とは逆の(・・)道へと慌ただしく走り去っていった。

 

 ――結局どっちいけばいいんだよっ⁉

 

 と、思い悩む曜であったが、とりあえず少女の走り去っていった方向へと歩みを進めることに決めたのだった。


お読み下さりありがとうございます。

ヒロインがうざくなりすぎないように調整してますがうざかったからすいません。

だけど、毒を吐くヒロインってなんか好きです。



次回の更新は明日です。

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