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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪役令嬢のささやかな抵抗

悪役令嬢のささやかな抵抗のバッドエンド



 この世界は小さな小さな乙女ゲームの舞台だと思っていた。

 私は、乙女ゲームの世界に転生をした。


 何も分からない子供頃には、異世界転生という自分の身に起こった出来事を素直に喜んでいた。


 私は乙女ゲームでいうところの悪役令嬢。

 ゲームの中では、なぜ私が第1王子の婚約者に選ばれたのか、語られる事がなかったその意味を理解した時には、既に手遅れだと気付かされた。


 

 この国は乙女ゲームの世界。

 これは間違いない。私がどんなに態度を横柄な態度にならないようにしても、噂で、そのような人物であると広げられてしまう。

 

 そして、私の婚約者も、その噂を信じて気持ちが離れていくのが分かる。

 どんなに真摯に語りかけても、どんなに頭を下げてお願いしても、彼は私を信じてくれなかった。


 そんな状況になって、すぐに父や陛下、それに私の王妃教育をして下さっている王妃様にも相談したが、婚約者を辞退する事は出来なかった。



 この国は確かに乙女ゲームの世界だった。

 ただ、乙女ゲームの世界がこの国の中だけであっただけだ。



 この世界には、私が暮らす国以外にもいくつも国がある。

 私が第1王子の婚約者になったのは、国同士の関係。国内での貴族間の勢力図。国を守る為にありとあらゆる事を考慮した結果の婚約であっただけだ。


 そこに私の意志も、第1王子の意思も関係ない。

 王族、貴族は国の為に生きなければいけないのだ。



 私はその事を理解していたが、第1王子は理解していなかった。

 乙女ゲームのさらに小さな舞台である学園に通う王子の世界は、この小さな学園の、しかも小さな1人の少女の隣にしかなかった。


 陛下と王妃様から直に注意を受けても、世界が広がる事はなかった。


 だからこそ、この国は乙女ゲームの世界だと確信した。



 この国には第2王子も、第3王子も存在したが、その2人は王妃様の実子ではなかった。

 また、その2人をお生みになった側妃様の実家も権力が乏しい為、第1王子を廃してまで、他の2人の王子が王太子になる事はなかった。


 私もただ黙ってみていた訳ではないが、政治という強制力の前には、全て無駄な抵抗に終わった。

 無駄な抵抗をしている間に、乙女ゲームの舞台が始まり、そして、今終わろうとしている。この国の運命と共に………。





「フレシア=スウォンディ! 私は次期国王となるものとして、そなたの行いを見過ごす事は出来ぬ!!」


 たった今、その終わりの時が始まってしまった。

 私の婚約者である彼から、転生前にやっていた乙女ゲームの台詞を直接聞く事になるのは、何とも不思議な感覚であった。


「シーセリス=ファン=ヘイジングはここに宣言をする!」


 優秀と名高い、私の元婚約者。

 その優秀については、あくまで学園内の成績。ゲームで指定された範囲でのステータスの中の話ですのよ? 殿下。


「私はフレシア=スウォンディと婚約を破棄し、アルエル=ラッザニアと新たに婚約を結ぶ!!」


 学園内の勉強だけではなく、国の王太子としての勉強も優秀でしたら、こんな事は決して出来ませんでしたのに………。

 そして、アルエルさん。あなたが殿下と寄り添う為には、どれほどの障害があるのかお分かりになっておられるのでしょうか?


 お2人は所詮、乙女ゲームの中のいちキャラクターでしかないご様子。

 学園を卒業したら、乙女ゲームの世界で上げたステータスなんて役に立たないのですよ?


「殿下。(わたくし)との婚約を破棄されるのでしたら、正式に陛下よりの書状が必要となります。お持ち頂いているのですか?」


 もう運命は変わらないのだから、少しくらい意地悪をしても良いわよね?


「父上からは事後承諾を取れば十分だ! これだけ証人がいるのだからな!!」


 えぇ、その証人は、全て王家の敵になる事になるのですよ? 本当に分かっておられないのですね。


「前みたいに泣いて縋れば可愛げがあったものを! 何も分かっていないお前には、私たちの真の愛が正しい事を知らせる必要があるな!!」


 私が泣いて縋った時に、お心を入れ替えて頂ければ、生涯をあなたの為に使うつもりでしたのよ?

 結果は、突き飛ばされて、言葉でも突き放されました。 今なら、もうあの時の事を許さなくっても構いませんよね?


「フレシア! お前は私の愛するアルエルを排除しようとした!!」


 殿下。それは当然の事でしてよ? まあ、私は何もしていないのだけど。私が陛下や王妃様に告げた事で手を回された事ですから、まったく無関係と言う訳ではないのかしら?


「夜会でもお前は私の傍におらず、恥をかかせようとしたな! そんな時に支えてくれたのはアルエルだ!!」


 いえ、殿下が婚約者である私以外の女性をエスコートしているからですよ。私は嫌がらせをしたという濡れ衣を着せられないように、他の国から使者様をもてなして居ただけですわ。

 それも殿下と2人でするように、王命が下っていたはずですのにね。


「極めつけは学園内での事だ! 毎日のようにアルエルに嫌がらせをしていたな! いつも傍に居た私にはお前の仕業であるとすぐに分かったぞ!!」


 えぇ。その発言で、学園内の出来事をよく知らない方々は、殿下の不貞であるとすぐにお分かりになられたと思いますわ。


「この半年間で私に協力してくれる者と交流をして社交を磨いていたが、お前はろくに学園にも顔を出さない!!」


 今、我が国以外の状況がどうなっているのかも、本当にご理解いただけていないのですね。

 同盟国である隣国は、他の国との開戦間際なのですよ? そんな時期に、学園の授業より優先する事など沢山ございましてよ?


 それに協力してくれる者って、私を断罪する為の協力者って事ですよね?


「今から、お前が学園でどのような悪事を働いていたのか、この場にいる者たちにも知らせよう!」


 その殿下の発言をきっかけに、集まってくる学園の生徒の方々が大勢。

 学園の半数の生徒は、家へ戻って外交努力や自領を守る為に奔走していたのに、この集まった方々は、ずっと学園にいらしたようですわね。


 私の断罪劇は、乙女ゲームをやっている時は感じなかったが、直接断罪される身となって思うことが沢山あった。


 例えば、「アルエル様の靴をお隠しになっているのを見ました!」という証言。

 学園には侍女を連れて来る事が出来る。政務をこなしている私は文官も借りて、学園に執務室を設けられている。

 

 そんな私が靴を自分で隠しにいくと本当に思っているのだろうか?


 また、「アルエル様が具合が悪くなる前に、食堂で何かをしているのを見ました!」の証言についても。

 私は王妃となるべく立場の者で、不特定多数の居る場で食事を取る事はない。全ての食事は個室で取っている。それは殿下も同じで、殿下が傍に常に居るアルエルさんも同じだ。

 

 食堂のデザートに惹かれる事はあったので、侍女に頼んで買ってきて貰った事はあるが、侍女たちと共にみんなで美味しく頂いた程度だ。私は買い物なんて自分でいかない。だから食堂に行った事もない。ちょっと空しい。


「これだけの証人がいる! 己の罪を認めて、アルエルへ謝罪せよ!!」


 一通りお馬鹿の自己紹介のような目撃証言を無事終えた殿下は、満足そうに呟いた。

 私は逆に疲れた………。全てがどうでも良いと思える程度には。乙女ゲームのステータスの知識は、知性に反映されないのですね。





「殿下。その方々を連れて陛下にもそのように証言して頂く予定でございますか?」


 そんな人数を謁見の間に連れて行けないと思うけどね。


「当然だ! いまさらお前の罪を見逃しはしない!!」


「………陛下は罪を見逃される事はないと存じ上げます。皆様もきっと陛下へ嘘、偽りなく真実を申して下さるでしょう」


「なんだ? ようやく認める気になったか?」


 あの証言のどこをどうやったら逆に認められるのか聞きたい。けれど個人的な感情は一旦置いておこう。


「王族に嘘を申し上げる事は、それだけで重罪でございますから。例えば、後からその証言が誤りであったという事がないように、謁見の際はお言葉をお選びになるように、皆様にご忠告致しますわ」


 私の今までの少し弱気に見える態度を改めて、次期王妃となるべく、学園の外で磨いた自分を前面に出す。その私の態度だけで、証言をしていた者たちが怯む。


「仮に誰か1人でも嘘の証言をしているのが分かれば、そこからさらに追及の手が他の方々にも及ぶでしょう」


 この言葉の意味はお分かりになりまして?


「もし、全てが真実であった場合でも、皆様の中で、後日、偽りを申し上げない方がいらっしゃらないように注意しないといけませんよ?」


 そう、例えば、他の方の家が没落しそうになった時に、脅しのネタにされる可能性も考えていらっしゃらないのかしら?

 まったく、裏切る側の人は裏切られる可能性を考えないものなのかしら?


「殿下を支援して下さる方ですので、きっとその後は要職に付かれると思われますので、弱みなど持っていると大変な事になりますわ」


 今は他国の動向に目を配っているけど、いつ、王宮内での権力争いが始まるか分かりませんのよ?


 私のこの言葉を聞いて、慌てたのは真実を知らない、証言をした者たちの家族だ。

 証言をしていた者の一部も、その家族からの強い視線に気付いて視線を落とす。彼らはこの後、どうするのでしょうか? とても興味がありますが、私にはそんな余裕は残されておりません。何せ私は当事者の1人ですから。


「アーニャ様と仰ったかしら? あなたの証言した日にちは、(わたくし)は国の式典に王妃様の代理として参加しておりましたのよ? これがどういう意味かはご説明の必要はないでしょう?」


 私の発した言葉の意味を理解した私の冤罪をでっちあげる証言をした1人の令嬢が、その場で崩れ落ちる。

 彼女の家族と思わしき夫人も、その場に崩れ落ちたようだ。


「殿下。ご安心下さって、(わたくし)は貴方様の周りに居る方の結束を高めて差し上げたいだけですわ」


 そう、あなたたちは、誰1人として逃げられない。この場に立った時点で、もう全てが遅いのだと、理解なさってね?






(わたくし)は、この国を支えてきたスウォンディ家の者として、この身の潔白を宣言する!!」


 先ほどの発言によって、場が混乱をしているからだろう。

 私がこれからする事を予想する者がいたとしても、すぐに動ける者はいなかった。


(わたくし)、フレシア=スウォンディは、シーセリス=ファン=ヘイジング王太子殿下の婚約者として恥る行動をとった事はない! その証として、この宣言と共にこの身を捧げる!!」


 この場に立った時から覚悟はしていた。

 いえ、きっとこの国が乙女ゲームの世界だと知った時から、亡国の王家に関わる方々の末路を想像した時からの覚悟かもしれない。


 その覚悟が、ドレスのスカートの下に隠していた自害用のナイフを手に取り、自分でも驚くほど躊躇わずに、自分の胸の間へと突き立てる。


 この国は終わる。次代の………シーセリス殿下の時代は来ない。

 他国に滅ぼされる未来しか見えない。そんな未来に、元婚約者の立場である私は良い最後は迎えられない事は分かっていた。


 だから、自分で一番納得できる死を選んだ。後悔はないと思う。私も所詮、乙女ゲームの世界に生きるしか出来なかったキャラクターなのだから。





「誰か医師を! 早く手当てを!!」


 そう誰かが叫んでいる声が聞こえる。

 自殺なんて初めてしたから、苦しまずに死ねなかったようですわ………。


 私に近寄る事もなく、一歩も動かれない殿下の姿がうっすりと瞳の端に見える。もう、私は自分の顔を動かす事も出来ないようね。



 シーセリス殿下。あなたの小さな世界は、卒業と共に終わりました。


 これからは、私の死と共に本当の世界に目を向けて下さい。

 もう既に遅いのですけど、頑張って真実の愛の為に国を守って下さいね。



 私は遠くからその絶望的な未来をみまも………て………………おります………わ。



-後書き-


世間一般でいう方のストレスが溜まって書いた。


小説を書いていると、書いているその時の精神状態が物語に作用するのが良く分かりました。

それが表現であったり、結末であったりと………。


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