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EP0:振返るは昨夜


 地球に向かう7つの光。


 青白く燃え、落下する流星はあまりの美しさに舌を巻いてしまうほど。


 7つの光は、誰にも気づかれることなく、地球に降りるはずだった。


 しかし、数奇な事象が重なり、例外が生じる。


 目撃されるはずのなかった光が、ある少年によって視認された。


 それは、全ての始まり。


  終焉あるいは未来へと導く道が開かれたのだ……。







「本当に落ちたんだって!」

 2000年1月1日。やや雲がかかる朝旦。

 葉を落とした木々に囲まれる神社。

 境内の隅に位置する石倉で荷を運び込むジャージ姿の4人の少年達。

 その内の1人、 白い髪の少年【空木 彩人】は狼少年の如き扱いを受け、憤っている。

 彼は決して狼少年のように嘘を重ねてきたわけではない。誠実で思いやりのある少年が、昨夜の出来事を信じてもらおうと必死に訴えている。


 「神社の裏に確かに落ちた! 嘘なんてついてないよ!」

 彩人は、信じてもらえないもどかしさに耐えられず、全身で地団駄を踏む。石倉が軋むほどに。


 「アヤト。別に俺は、お前が嘘ついてるなんて思ってないぜ」

 彩人よりやや背の低い茶髪の少年【宮沢 琢磨】は、宥めるように彩人の肩に手をのせる。


 「お前が、打ち上げ花火と隕石を見間違えたんじゃねえかって言ってんだよ」

 「馬鹿にしてんじゃん!!」


 琢磨の小馬鹿にした表情が憎たらしいあまり、彩人は琢磨の頬に平手を打ち込んだ。


 「あれぇ~おこちゃったぁ~?」

 平手を食らっても動じず、挑発する幹彦。彼にとって人をおちょくるのは、生き甲斐なのだろう。憤る彩人を見る琢磨の顔は嬉々としていて充実した生、性を謳歌する表情を浮かべている。


 「お前ら、働け!」

 戯れ合いのような喧嘩をする2人を叱りつけたのは、彩人達と同じ年とは思えないほど屈強な肉体、黒い鶏冠のようなソフトモヒカンの少年【熊谷 修羅】。


 ジャージの袖を肩まで捲り、荷物をせっせと運んでいた修羅はある程度の雑談は気にかけていなかったが、突然仕事の効率が落ちた原因が彩人と琢磨にあるとわかり、修羅は彩人と琢磨の首根っこを掴んで引き離し、山積みとなった荷に向かせる。


 そして、3人を尻目に一人黙々と作業を続ける【鳴瀬 幹彦】。


 今頃多くの日本人がコタツに入って正月を満喫している中、4人は昨夜行われた【鬼祭り】の後片付けを紆余曲折しながらも精を出している。


 鬼祭りは【鬼神神社】の毎年の恒例行事。コオカ町の【自警団】員は招集され、祭りの運営にあたる。手伝うと神主からお年玉が貰えるということで、金欠の未成年の自警団員のほとんどが参加する。勿論、善意がないわけではない。神社の神主は、4人が日頃お世話になっている恩人である。お年玉:恩義=6:4の割合で彼らは作業をこなしている。


 「ふう。やっと終わったな」

 最後の荷を片付け終わった琢磨が、疲れと達成感を実感しながら、額に溜まった汗を腕の裾で拭き取る。

 12月31日、1月1日に行われた神事。最後、石倉へ神事で使われた道具を収納する作業を、終えた今、2日間、準備期間を加えれば、3日間の神事の全行程が終わった。

 

 「殆ど、片付けは俺と鳴瀬がやったんだけどな」

 労働を実感する琢磨の顔が憎たらしく映った修羅は、嫌味を吐いた。

 「あー、あー、聞こえない」

 耳を塞ぎながら修羅から逃げるように石倉から退出した琢磨の後を追うように、他の3人も石倉を後にする。


 石倉から出た4人を陽の光が照らす。

 現在、正午。早朝から空にかかっていた雲は消え、天高く登った陽が冷たい空気を暖め、爽やか風が4人の汗を乾かすように吹き抜けた。


 「昨夜、何かあったのか?」

 石倉の扉に鍵をかける彩人の不意をついて、幹彦が口を開いた。

 作業に集中していた幹彦は、作業中に話していた彩人の話をほとんど聞いておらず、改めて彩人に昨夜何があったか問うた。


 「夜、アヤトが騒いでたのは打ち上げ花火を隕石と見間違えたからなんだってさ」

 「違うって言ってるだでしょ! あれは、隕石だった!!」


 あざ笑う琢磨に再び跳び掛かる彩人。

 

 「腰を抜かしてたのは、それか」

 彩人と琢磨の間に入った修羅は、見間違いで彩人があんな取り乱すのか疑問を抱く。

 「思ったんだが、空木だって打ち上げ花火で腰を抜かすほど驚かないだろ。それ相応に驚くような出来事があったんだろ。きっと」

 「おぉ、修羅くん…」

 まともに話を聞いてくれそうな反応をした修羅に感極まる彩人。


 「彩人、その隕石が落ちる瞬間のことを教えてくれ。気になる」

 「もちろん。信じてくれるまで話つもりだよ。あれは、すごかったんだから…」

 幹彦の疑問に明確に答えられるように、昨夜の目に焼き付いた光景を思いおこすため、目を閉じる…。


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