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~プロローグ~

初の長編小説に挑戦!ラブコメを頑張って書こうと思っています。

どんな作品になるかは未知数ですが、頑張って書いて行こうと思っていますので、よろしくお願いします!

『君とパシャリっ!』


春――

ここは学校の中央にある桜の木の下。

 ずっと恋焦がれていたあの子と二人きり。

 僕はドキドキして何を言ったら良いかわからず、ずっともじもじとしていると、

「どうしたの、亮くん?こんなとこに呼び出して」

 女の子が笑顔で振り返る。流れるような髪。ひらりとひるがえるスカート。舞い散る桜の花びら。その全てが彼女をいっそう綺麗に魅せ、僕はその姿にうっとりしてしまう。彼女はそんな僕の姿を見て、手を後ろに組み、キョトンとした顔でこっちをうかがうような仕草を見せ、

「顔、赤いよ?」

 僕はふと我に帰り、ついに決心した。

「あのね」

「うん」

「君のことがずっと好きでした、僕と付き合ってください」

 彼女は笑顔になった。そして――


~プロローグ~

 小学生の頃、僕は一人ぼっちだった。

 周りに友達は一人もいない。

 僕は気弱で、いつもいじめられて帰ってきては、一人で公園の端っこにたたずんでいた。そこではいつも楽しそうに遊んでいる男の子たちがいた。僕はその子たちを羨ましそうに見ていたのである。僕は楽しそうだなあと思いつつも、どうやって輪の中に入り込んだらいいか分からず、また輪に入る勇気もなくただただじっと見ているだけの毎日を送っていたのだった。


 代わり映えのない毎日。


 そんな辛い日々に終止符を打つように、僕に転機が訪れる。ある日、いつものように僕は公園の端っこでたたずんでいた。そんな僕にそっと手を差し出してくれた、一人の女の子。その子はショートカットでオレンジのパーカーに灰色の短パンを履いた快活そうな女の子だった。

「ねえ君、いつも楽しそうに遊んでる男の子たちのこと見てたでしょ」

「え……」

「だったら、私と一緒に遊ばない? 私の名前は咲。松浦咲」

 その時の太陽の光と共に映った彼女の笑顔が今でも忘れられない。


 それから、僕と咲はいつも一緒に遊ぶようになった。いつも引っ込み事案だった僕の手を引っ張って山の上に登り、山の上にある1本杉の下で二人で色んな話をしたのだった。

 ある時はいじめられて帰ってきた僕を慰めてくれたり、またある時は喧嘩もして、いつも気弱だった僕をうちのめしていた。何度やっても彼女にはかなわなかった。

 彼女はいつでも明るかった。そんな彼女につられて自分も次第に明るくなっていき、またそんな彼女にいつの間にか惹かれていった。

 楽しかった日々。

 しかし、そんな日々もいつかは終わりを迎えることになる。

 小学校の卒業の日が訪れた。咲は別の街に引っ越すことになり、それぞれ別の中学に通うことになる。

 当時公園の端でたたずんでいた僕を救ってくれた彼女。いつでも太陽のような明るい笑顔を振りまいている彼女。離れたくない。いつまでも一緒に過ごしたい。

 そんな思いから、僕は思い切って告白することにした。


 最後の別れの日。

 僕は山の上の1本杉の下で彼女と待ち合わせをし、彼女が来るのをじっと待っていた。


 彼女がやってくる。彼女は最初に会った時とは全然違ってずっと大人っぽくなっていた。この日は、赤いコートに赤いマフラーをつけている。

僕と彼女は一本杉の手前でその一本杉がちょうど真ん中になるような位置で向かい合った。

 僕は彼女に勇気を振り絞って、言葉を放つ。

「ねえ、サキ、話があるんだ」

「ん? 何?」

「僕はサキがいなかったらずっと一人ぼっちのままだったかもしれない。君にはいくら感謝しても足りないくらいだよ」

「どうしたの、急に」

 咲は不思議そうな顔をして疑問を投げかけた。

「僕はサキの明るい性格が大好き。これまで一緒に過ごしてきて、すごく楽しかったよ。僕は咲と離れ離れになりたくない。だから僕と付き合って欲しいんだ」

 僕の勇気を振り絞った言葉に、彼女は笑顔を作った。

 僕はその笑顔にどんな返事が来るか確信した。

 だが、その答えは僕が望んでいるものとは異なるものだった。

「リョウ、強くなったね。昔の君だと、とてもじゃないけどそんな言葉は言えなかったはずだよ」

「うん、それも君のおかげだよ。だから、僕と……」

 その言葉を遮るように、咲は返事をした。

「ごめんなさい、私たちにはまだ早すぎると思うの。まだ小学生だし」

「でも、もう会えないかもしれない」

 僕は涙を浮かべながら答えた。

 咲は僕の頭を撫で、次のように言った。

「大丈夫、いつかきっとまた会える日が来るよ。その時まで少しだけお別れ」

 咲は僕に十字架のキーホルダーを渡し、伝えた。

「これを私だと思って。何かあったら、このキーホルダーを見て、私との日々を思い出してほしいな」

 僕は泣きながらそのキーホルダーを手に取った。

 それから、彼女は思い出したように茶色のショルダーバッグからカメラを取り出し、

「ね、記念に写真を撮らない?この思い出の一本杉の下で。」

「うん」

「私のお爺ちゃんが写真撮るの好きなんだ。このカメラはね、お爺ちゃんに買ってもらったの」

 僕はその話を聞いて少し驚いた。

「そうなんだ。知らなかった」

 彼女は続けた。

「だから私もお爺ちゃんみたいに写真を撮って撮って撮りまくって、たくさんの思い出を残したいの。今日はその記念すべき1枚目」

「なんだか、嬉しいな」

 僕は本当に嬉しくてはにかみながらつぶやいた。

 彼女は笑顔を浮かべながら、僕に言った。

「だからいつまでもぐずぐず泣かないの。せっかくの写真が台無しじゃない。ほら笑顔笑顔」

「分かった」

 僕は彼女から渡されたティッシュで涙と鼻水を拭き取り、精一杯の笑顔を作った。

 彼女は僕に、

「思い出の1枚だね」

「僕、大事にとっておくよ」

「私もそうする」

 

 僕をふったのに、まるでそうでないかのように場は楽しい空間に変わっていた。

 なぜだか分からないけど、また彼女に会える、そんな確信が僕の中にあった。

 彼女はカメラの準備をして、一本杉をバックに僕の横に並び、正面に向かってピースをした。僕も同じポーズをとった。。

 彼女は合図をした。

「それじゃあ、いっくよー!」

「はい、チーズ!」


パシャリっ!



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