性癖破壊系ジョブチェンジ
「何でお前はいつもそう他の男や女を誑かすんだ!」
「誑かしてねーよ、勝手に寄ってくるんだよ!」
魔導師のオレ、ノエルは同じギルドパーティの剣士、ナギと絶賛喧嘩中だった。
「お前はオレの恋人だろ!なのに酒場で他の奴と肩組んだり腰に手を回したり…!オレの目の前でそういう事するなんて最低だ!」
「酔って盛り上がっただけだろ!お前は気にしすぎなんだ!」
お互い譲らず、議論は平行線だった。オレは、オレの中で何かが冷めていくのを感じた。
「もういい。別れる。」
「あっそ、勝手にすれば。どうせすぐヨリを戻してくれって来るんだろ。」
「その代わり、一つお願いがある。」
「あ?何だ?最後に一回抱いてくれってやつか?」
ナギは終始からかうような口調を崩さない。オレは怒りを抑えながら淡々と話す。
「お願い、なんて殊勝な言い方じゃぬるかったな。これは命令だ。」
そう言ってオレは杖を構える。ナギはようやく事態の深刻さを察したのか、急に焦り始める。
「な、何だよ…!魔法で戦おうってか!?」
「いや違う。『抗う意思よ、静寂に溶け給え…"ドミナ・エクリプス"』」
「は…?服従の呪文…?」
「命令だ。"おすわり"」
オレが命じると、ナギはガクンと跪く。
「は、ざまあないな。ほら、"お手"」
「………………。」
ナギは服従の呪文には逆らえず、恐る恐るオレの差し出す手に自分の手を重ねる。
「じゃあ最後。"三回回ってワンと鳴け"」
「……………………ワン。」
ナギは言われた通り、その場で四つん這いになり三回回った。
「はは、上手じゃん。」
「…………………………。」
オレは嘲笑を浮かべながら、ナギの頭を撫でる。ナギは呆けた表情でこちらを見つめる。
「じゃあな、ナギ。ギルド脱退の手続きは自分でしとくから。お前は精々残りのメンバーと頑張ってくれ。」
そう言ってオレは宿を去った。
その数日後――――
「おい、ノエル。」
新たに別のギルドパーティに入ったにも関わらず、ナギがクエスト受付所で話しかけてくる。
「何だよ、オレ達もう恋人でもギルドメンバーでもなんでもな」
「今日は魔獣討伐クエストを3件こなした。あと、薬草採取クエストもついでに5件。」
「は、はあ…?それが…?」
「っ!あ、あと!この後、要人護衛のクエストもするつもりだ!」
「うん…?随分、頑張るんだな…?」
「そうなんだ!こ、これからもっと頑張るつもりなんだけどっ…!」
先程からナギが何をしたいか分からず、オレは適当に相槌を打つ。
「おーい、ナギ!さっさとクエスト行くぞ!」
「あ!ま、待って!まだノエルに褒めてもらってない!」
ナギは他のギルドメンバーに引っ張られてクエストへ行ってしまった。
「あいつ、褒めて欲しかったのか…?キャラ変わったな。」
クエストを終えると、ナギは再びオレの元を訪れた。
「要人護衛クエスト、上手くいった!」
「おう…?お疲れ様、頑張ったね…?(これでいいのか?)」
「………………。」
「あの…まだ何か…?」
ナギは褒められても去ろうとはせず、じっとこちらを見つめてきた。そして、期待した眼差しで口を開く。
「頭、撫でてくれないのか…?」
「頭…?」
とりあえず頭を撫でてみると、ナギは満足そうな表情で去っていった。
以降も、自分のこなしたクエストを報告しては、オレに頭を撫でさせていた。
「なあ、ノエル。俺、優しくするから、今夜抱きたい…!」
「ええ…?」
「優しく出来たら褒めて欲しい…!」
「……………………。」
オレはどうやら、ナギの何かを破壊してしまったようだ……。
"俺様攻め"から"ワンコ攻め"にジョブチェンジ




