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あとで冷静になってから色々と調べたところ、ようやく事実関係が明白になってきた。
まず、ぼくには事実として七歳の妹・みよちゃんがいる。
そしてあのハンバーガーショップで働いていた店員は、偶然にも同じ名前を持った、つまり同姓同名の高校生のみよちゃんだった。
その高校生とよく似た顔立ちの新婚のみよちゃんにも出会うことになった。裏のお宅に引っ越してきたのである。まだ若いその夫妻のご主人の名はトビオ。どういう字を書くのかは知らないが、夢の内容とは一致している。
これらのことを夢野博士に報告すると、
「面白い事例だね。さしずめ、その夢に登場したみよちゃんたちは夢を織り成す横糸だったというわけか。すると縦糸は……」
「何です」
「君だよ、タツマ喜六くん。考えてもみたまえ。おかしな夢を時間の経過とともに経験したのは他ならぬ君だったんだよ。夢主であるところの君がいなければ、その夢に登場する数人のみよちゃんの謎は解けなかった」
「するとぼくは探偵役だったわけですか。夢の謎を解く……」
「案外、夢などそうしたものかもしれないな。夢主に己の謎を解いてもらうために、色々と不思議な出来事を体験させるんだ」
ぼくは今度こそ、これが夢ではないことを祈りながら、大学のそばにあるハンバーガーショップに向かった。するといつものレジに彼女の姿はなく、その代わりに背後から聞き覚えのある声が、
「今日の午前中が仕事納め、最後のバイトだったんです」
「そうか。そう言えば明日で八月も終わりだね」
もうじき夏が終わる。蝉の声はまだ騒がしいが初夏のころとは違う鳴き声だ。ぼくは新しい季節を迎えてどんな夢を見ることになるのかと思いながら、ふと、彼女を見つめて、夢で出会ったときから彼女に、幼い妹の将来の姿と勘違いしたその美貌に恋していたのだと、今ごろ気づいたのだった。




